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【地方政策図鑑】宮城県岩沼市のAIバス
地方の公共交通を考える上で参考になりそうな宮城県岩沼市のAIバスの事例を紹介します。
実証実験では2台の小型バスを走らせ、アプリで予約が入ると最適な移動経路をAIが提供してくれるという仕組みを試したそうです。
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議会議事録から見るAIバスの概要
AIバスについては岩沼市議会の令和5年第1回定例会(4日目)で質疑が行われていました。議事録からAIバス事業の概要を把握します。
Q1.田村和也議員の質問:導入経緯や検討過程について
AIバスについて。
1)導入の経緯と視察等の検討過程、最終的に現運行案になった理由を伺います。
A1.市民経済部長の回答
市民バスに対する要望といいますか、そういった利便性がよくないですとか、バス停まで遠い、そういった課題を解決するために、AIバスの実証運行を行わせていただきました。運行を行った結果、一定の成果が得られたことから、導入という運びとなったわけです。運行案につきましては、デマンドタクシーの対象外のエリアで、ある程度人口が密集していること、それから狭隘道路が多く、路線バスは運行が困難な市内中心部を運行エリアとして設定させていただいたということでございます。
私の解釈
①市民からバス停が遠く、利便性が低いという要望があった
②デマンドタクシー(乗合型タクシー)や路線バスではカバーしきれないが人
口が密集しているエリアがあり、乗合型のバスとして運行するのに適して
いると判断した。
③他地域や岩沼市内の視察等は行わずに実証実験をした
Q2.田村和也議員の質問:本格運行のシステム関係費、運行委託費と積算根拠
次の2)本格運行のシステム関係費、運行委託費と積算根拠を伺います。
A2.生活環境課長の回答
システム関係費につきましては、システム使用料として年間約250万円を見込んでおります。積算根拠につきましては、実証運行時の使用料や、事業者からの参考見積りにより積算をしてございます。運行委託費につきましては、年間約2,200万円程度を見込んでおります。積算根拠につきましては、デマンドタクシーの委託金額を参考にした上で、人員の業務量等を考慮し、積算をしてございます。
私の解釈
①使い勝手次第ですが、システム使用料250万円は妥当そう。
少なくともぼったくりという金額では無さそう。
②運行委託費2200万円は、稼働時間、稼働人員等を定量的に知らないと判断んがつかない。ただし、路線バスの維持よりは安上がりで済みそうなので移動の需要を満たせるのであれば、従来型の路線バスからスイッチするのは合理的と思われる。
Q3.田村和也議員の質問:本格運行のシステム関係費、運行委託費と積算根拠
現在は、デマンドタクシーにシステムが使われておりませんので、今後システムが入るといったことになれば、それぞれに係るシステム経費と委託費、それで得られる利用料の収入等の比較検討が必要になってくるかと思います。ただ、今ちょっとお伺いすると、使用料の部分についてはデマンドよりも安く上がるのかなというふうな印象なんですが、なお、先日のAIバスの実証運行で使用されたシステムにつきましては、8日に事業者さんにお話を聞くことができました。そうしましたところ、まだまだ改善の余地が多く、本格運行にはとても使えるものではないという声をいただいております。システムの選定と改良については、よく事業者さんと協議していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
次、(1)AIバスについて。3)デマンドタクシーとの違いは何か、どのような優位性があるか、見解を伺います。
A3.市民経済部長の回答
デマンドとの違い、優位性ということでございますが、デマンドタクシーが、その事前に利用登録が必要なのに対しまして、AIバスについては事前の登録が不要で誰でも利用が可能でございます。予約方法につきましても、デマンドタクシーの場合は電話のみ受付でございますが、AIバスにつきましては電話のほかに専用アプリで予約をすることが可能でございます。運行ルートにつきましても、AIが最も効率的なルートを示してくれるということでございます。ただ、その移動範囲につきましては、AIバスがこのバス停からバス停、乗降スポットから乗降スポットに限られるんですけれども、デマンドはドア・ツー・ドア、自宅から病院ですとか、バス停、スーパーとか商業施設、そういったところまで運行すると、そういった利点がございます。でありますので、デマンド、AIそれぞれに特徴がございまして、一概にどちらが有利かとか、そういったところを比較できるものではないというふうに考えております。
私の解釈
①AIバスは登録不要でアプリでの予約ができる点が便利
②AIバスは乗合の上で最適な経路を示してくれるため経済的
③ただしデマンドタクシーと異なりバス停での停車しかできないためドアツ
ードアの移動が必要な人には使い勝手が悪い
考えられる論点
論点①路線バスが不要な移動人数はどのくらいか
AIバスは路線バスよりは安上がりのため路線バスを維持する必要のないくらいの移動ニーズの場所での導入は合理的に思える。路線バスが不要な移動ニーズがどのくらいかについて定義する必要がある。
論点②バス停の設置場所はどこが適当か?
岩沼市の場合、路線バスやデマンドタクシーの使い勝手が悪く、ある程度人口がいるエリアが存在した。
路線バスやデマンドタクシーなどの他の交通手段の経路と移動需要について可視化して決めていく必要がある。
論点③システムの使い勝手はどうか?
AI等の最適化技術によって最短経路を示す試みは「最短経路問題」として昔から研究されている分野のため技術的には可能と思える。
ただし、予約データを基に柔軟に経路の変更が求められるので、どのようにデータを取得し、計算しているかや実際にどのくらいの早さ正確さで経路を表示してくれるかの使用感について確かめる必要がありそう。