アルコールと上手に付き合うには~貧血に気を付けて~
アルコール多飲については肝臓や膵臓、脳にも弊害が出てきますが、実は貧血(大球性貧血)、もしくは貧血傾向が起こり得るというのは知る人ぞ知る内容です。
特に男性ですと、いわゆる貧血とは無縁で過ごされている方が多いと思いますが、
貧血は過度な飲酒により体内の栄養状態が不足する場合には十分起こり得ます。
栄養指導において、時々このような患者さんにお会いすることがあります。
取り急ぎ食事内容の確認や改善方法、アルコールとの付き合い方についてのアドバイスが必要になってきます。
★アルコール多飲による貧血症状がある方の特徴
*飲酒習慣あり、アルコール多飲、休肝日はほとんどなし
*お酒を呑み始めると、つまみがなくても呑み進めてしまう
*お酒は好きだが、食事内容にはこだわりがない
*食事内容が極端に偏り気味←本人は一見ヘルシーと思っていることも
*食事量が比較的少量もしくは食欲がない
*タンパク質(特に動物性タンパク質)の摂取などが少ない
*葉物野菜の摂取が少ない
*胃腸の調子がよくない
*つかれやすく、フラフラ、立ちくらみやめまいを感じることがある
*筋肉が痩せてきている(飲酒習慣があっても太っているとは限らない)
*しびれや痛み、力が入りにくいなど末梢神経障害のような症状
(飲酒習慣にて血液検査にてγ-GTPが上昇しますが、まれにこの数値が上がらない方がいらっしゃるので、飲酒の有無は必ず確かめること)
などが挙げられます。
★アルコール多飲による貧血症状がある方の食事指導について
アルコール代謝の関係で赤血球の分化に必要な栄養素であるビタミンB12や葉酸の吸収を妨げる関係で、赤血球がうまく成熟せずに大球性という形をとることで、本来の赤血球の働きができなくなることが原因です。
大前提として
*アルコール摂取は控えてもらう(飲む量を少なくする)必要があります
なので、どうして飲酒をしてしまうのか、飲酒習慣や飲酒理由がストレスからくるものであれば、同時にストレス管理も必要になってきます。
その他には
*日頃の食生活をバランスのよいものにして、特に赤血球の成長に必要なビタミンB12や葉酸を含む食品を積極的に摂ってもらう
*赤血球の材料になるタンパク質の摂取が足りないことが多いので、可能な範囲で摂ってもらうことも忘れないこと
→動物性タンパク質である肉・魚介類・レバー・うなぎなど
他には海藻類、緑黄色野菜なども積極的に
*必要ならば、食事の他にもサプリメントを追加して足りない栄養素の補充を行うことで改善できるかもしれません。
*胃の調子が良くない方はこれらの必要な栄養素を吸収しにくい可能性があるので、一度消化器内科、胃腸内科の医師の診察・治療を受けた方が望ましいでしょう。
また、貧血といえば鉄欠乏性によるものが一番多くみられることもあり、その多くは食生活のみだれが原因でもありますが、まれに胃潰瘍や胃がんなどでも貧血(消化管からの出血による貧血)になることがありますので、念のため精査されたほうがよろしいかもしれません。
*処方された薬の服用はもちろん、指導は守るようにされてください。治療されず病態が進行してしまった場合、具合が急に悪くなって倒れてしまうかもしれません。
お酒は百薬の長ですが、ヘロヘロになるまではどうか呑まずに…
フラフラしているのはお仕事の疲れだけではないのかもしれませんよ。
「根性で治す!」
「男の沽券にかかわる!」
という前に、早めの受診を心がけて
くれぐれもご無理のないようにされてくださいね。