#4 「LMI」誕生までの葛藤
LMIグループ株式会社、副社長の望田竜太です。
今回は、弊社が事業の根幹に据える「レガシー・マーケット・イノベーション(LMI)」という概念について、これまで以上に詳しく知っていただくことをテーマにお送りします。
ただ、その定義をロジカルに解説するだけではあまり面白くないので、あえて私と永井との歴史や個人的な体験を交えながら、「LMI」ができるまでの葛藤や「LMI」に込めた想いを書き綴っていきたいと思います。
代表取締役社長・永井との歴史
永井との運命的な出会い
話の始まりは、LMIグループの現代表である永井俊輔との出会いまで遡ります。
群馬との県境に近い埼玉県本庄市にある私立高校、早稲田大学本庄高等学院。その入学式で、永井と私は互いを初めて認識しました。
東京の法政一中出身である私は、
恥ずかしながら「自分はイケてる、周りはどうせ田舎者ばかりだろう」と考えていたのですが、そんな私の視界に、明らかに異質な存在が飛び込んできました。それが永井でした。
高校時代に交わした約束
当時から彼はイケていて、その姿を目にした瞬間から、意識せずにはいられない存在になりました。
ただ、選択科目の違いから同じクラスになることがなかったので、長い間、直接的に接点を持つことはありませんでした。
初めて2人だけでじっくりと会話を交わす機会が訪れたのは、高3の文化祭。どんな人生を歩んできたのか、どんな価値観を持っているのか、語り合いました。
驚きの連続でした。あまりに共通点が多かったからです。
私は「自分のように物事を見ている人間はほかにいない」と思っていただけに、同じような価値観を語る永井との出会いに運命を感じずにはいられませんでした。
それは永井も同様だったようです。
「俺たち、めちゃくちゃ相性が良いと思うよ。組もうぜ」
「ああ。でも『組む』ってどういうことだよ」
「まあ『サンクチュアリ』みたいなもんだな」
漫画『サンクチュアリ』とは、
カンボジアでの戦乱により家族を失った2人の少年が、日本に帰国後、
表(政治)と裏(ヤクザ)の世界に分かれて、腐敗した日本の政治体制を変革していく物語。
それになぞらえて永井と私は、進む道が違ったとしても、
「力を合わせて日本を変えていこう」
「将来、何かしらデカいことをやろう」
と誓い合ったのです。
空白の5年間、そして再会
ともに早稲田大学商学部に進学した私たちは、ほとんどの時間を共に過ごしました。
やがて就職の時期を迎え、永井は大手ベンチャーキャピタル「ジャフコグループ」に、私はファンドを運営する投資銀行「リサ・パートナーズ」に入社しました。2009年春のことです。
#2の記事にある通り、入社から半年ほどで、永井は家業に呼び戻されます。
永井からの連絡は一切なくなり、それだけではなく、いつからか「永井が望田のことを悪く言っている」という話が人づてに聞こえてくるようになりました。
音信不通の状態が5年ほども続いたころ、突然、永井から連絡がありました。
「実家の会社をここまで成長させてきたけど、センスだけでやれるのはそろそろ限界かもしれない。望田がコンサルで培ってきた知見や経営スキルを教えてもらえないか」
正直、少し複雑な気持ちはありました。
しかし、永井からそんな相談を受け、私は力を貸すことを決めます。
長いブランクがあったとはいえ、高3のときに交わした約束はまだ生きていると思ったからです。
「レガシー・マーケット・イノベーション」の誕生
それからは、毎週土曜日に集まり、経営体制を整えるための議論を重ねていきました。
その中で最も手こずったのが、
会社のミッションやビジョンを定める作業でした。
目の前の課題に必死に立ち向かうことで会社を成長させてきた永井としては、「ミッションって何?必要か?」という状態。
経営上の重要性を説明して、なんとか言葉を引き出そうとしましたが、全く出てきません。
ミッションを定めるため、内面を掘り起こす作業を何度も繰り返す中で、永井がふとこんなことを言いました。
「俺、恥ずかしかったんだと思う。投資ファンドから看板工事の会社に移ったことが。何よりも、この恥ずかしさを変えたい」
この一言が突破口になりました。
恥ずかしさを変えるということは、古い産業を、誰かに自慢できるような花形の産業に変えることだと言い換えられる。
この概念に、名前を付けることにしました。
「古い産業」は、全否定するのではなく、残すべき部分もあるという意味合いから「レガシー・マーケット」と表現。
「どう変えるか」については、デジタル技術の導入などによる変革というイメージに合う言葉として「イノベーション」を選びました。
こうして「レガシー・マーケット・イノベーション」というコンセプトが誕生したのです。
企業のミッションやビジョンは、器用な人なら、見栄えの良い言葉を並べてうまくつくることもできますが、それだとやはり表面的な感じがしてしまうもの。
でも、「レガシー・マーケット・イノベーション」は永井の生い立ちや実体験が元となり、生みの苦しみを味わいながら紡ぎ出された言葉です。その過程を見ていた私は、「これは噓偽りのないものだ」と確信しています。