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【隈研吾問題】木造建築は諸悪の根源か?実例から見える本質|wooden architecture


おはようございます。

健康診断の心電図でしっかりと再検査となった中川です。学生の頃からエンデュランス系のスポーツをしているため、平常時心拍が低く健康診断で心配されることは何度かありましたが、今回はセンサー?器具?を付けて1日生活することになりました。

3月のフルマラソンに向けてもう一度スポーツ心臓に強化されていることが分かって安心した半面、そんなことより心臓止まらないか?と不安にもなりました。

普段から確認しているパルスオキシメーター
起床時の安静時心拍は34


私は、2024年7月よりnoteをはじめ、毎週土曜日に記事を投稿しています。家づくりをされている方や、夢を追いかける若造を見守って下さる方は、お気軽にスキ、フォロー、コメントして下さると大変励みになり嬉しいです。

自己紹介はこちらの記事をご覧ください。


近年、日本各地で木造の公共建築が増加しています。その背景には、環境負荷を軽減する「カーボンニュートラル」への取り組みや、地域の伝統を重視した建築の需要があります。

しかし一方で、「木造建築は劣化しやすい」「火災リスクが高い」「修繕費がかさむ」といった批判の声も聞かれます。特に公共建築においては、その維持費や安全性が税金に直結するため、慎重な議論が必要です。

本記事では、木造公共建築に関する批判や課題に正面から向き合い、いくつかの実例を挙げながら、「木造=悪」という単純な構図なのかついて考察します。また、木造建築の特性や可能性、そして未来に向けた解決策についても触れられたらと思っています。






➊ 木造公共建築の実例と課題

1-1. 群馬県・富岡市役所のカビ問題

2018年に完成した群馬県富岡市役所は、木材を多用したモダンなデザインで注目を集めました。

しかし、完成後わずか数年で壁面や天井にカビが発生するという問題が報告されています。この原因は、木材の湿気対策が十分でなかったことや、換気計画が不十分だった点にあるとされています。

カビの発生は建築の美観を損なうだけでなく、健康被害を引き起こすリスクもあり、市民から批判が噴出しました。この事例は、木造建築の設計において、素材の特性に応じた湿気対策の重要性を示しています。


1-2. 栃木県・馬頭広重美術館のカビ発生事例

栃木県にある馬頭広重美術館もまた、木造建築の課題を浮き彫りにする一例です。この美術館は2000年に完成し、その特徴的な木材の外装が高く評価されました。

しかし、長年の湿気や雨風による影響で、館内の一部でカビが発生。美術館という性質上、湿度管理は特に重要ですが、それでも完全には防げない部分があったとされています。

このケースは、木材のメンテナンスを怠ると文化施設としての価値が損なわれる可能性を示唆しています。


1-3. 三重県・笠間保育園の火災

2022年、三重県いなべ市にある笠間保育園で火災が発生しました。この施設は木造で建設されており、火災が全焼につながったため、「木造は危険だ」という声が一部で高まりました。

しかし、調査の結果、火災の原因は設計の不備ではなく、施設管理の問題であることが判明しました。木造であろうと鉄筋コンクリート造であろうと、火災リスクが存在する点は同じであり、この事例は偏見に基づいた議論の問題点を浮き彫りにしています。



➋木造建築の特性とその魅力

2-1. 木造建築がもたらす温かみと地域性

木造建築には、金属やコンクリートでは表現しきれない温かみがあります。これが、木造を採用する一番の理由です。木造の中でも、柱や梁など、構造材が見える状態で仕上げることを『あらわし』といい、より強く木造を感じることができます。

その素材感や肌触りは、建物を利用する人々に安らぎや親近感を与える効果があります。特に公共建築では、地域の文化や伝統を反映したデザインとして木材が選ばれることが多いです。

また、地域の森林資源を活用することで、地元経済の活性化にもつながります。たとえば、地元産の木材を使用することで輸送コストを抑え、カーボンフットプリントを削減する効果が期待できます。

2-2. カーボンニュートラルと木造建築の意義

木材は、製造時に排出するCO2が少ないだけでなく、建材として使用することで炭素を長期間固定化する役割を果たします。これにより、木造建築はカーボンニュートラル社会の実現に貢献できる重要な選択肢となります。

最近よくカーボンニュートラルという言葉を聞くようになってきたのは、経済活動や日々の生活で排出される温室効果ガスを削減し、地球全体の気温上昇を抑制するために不可欠な取り組みとして、世界的に叫ばれているためです。



➌「木造は燃えるから危ない」というメディアの誘導から生まれる誤解

3-1. 火災リスクと構造別の比較

「木造は燃えるから危ない」という批判は、必ずしも正確ではありません。実際には、木材は燃えることで炭化層を形成し、それが内部を保護するという性質を持っています。この考え方をもとに『燃えしろ設計』と呼ばれる、木材の断面積を増やすことで火災時に耐力を失わないようにする設計手法が今では主流となっています。

一方、鉄骨造は高温で強度が低下しやすく、鉄筋コンクリート造も火災の規模によっては崩壊のリスクがあります。つまり、構造ごとにリスクの特性が異なるだけであり、木造だけを「危険」とするのは偏った見方と言えるでしょう。

3-2. 現代の木造建築の防火技術

現在の木造建築は、防火性能を高めるための技術が発展しています。たとえば、耐火被覆を施した集成材や、火災を抑制する塗料の使用などが挙げられます。これにより、木造建築でも十分に安全性を確保することが可能となっています。



➍木造公共建築と保全の重要性

4-1. 適切な保全が未来をつくる

木造建築の最大の課題は、適切なメンテナンスが必要不可欠であるにも関わらず、それが世間に受け入れられていない点だと考えています。本記事で最も伝えたい点はココに尽きるかもしれません。

カーボンニュートラルなどの背景から、世界的に木造建築へ力を入れていかなければならない状況であるため、メンテナンスがかからない=良い建築であり当たり前 といった考え方を変えていく必要があります。

『修繕費として○億円必要!?』というネットニュースの見出しに振り回されておりますが、これからはそういった時代になっていくこと覚悟する必要があるのです。

世界最古の木造建築とされる法隆寺も、年間5000万円の維持費が必要と言われています。

湿気やカビ、虫害といった問題に対処するためには、定期的な点検と修繕が求められます。これを怠ると、結果的に高額な修繕費が発生し、「木造はコストが高い」という批判につながります。

4-2. 長寿命化のためのコストと価値

適切な保全にコストがかかるのは事実ですが、それによって建築の寿命が延びるため、結果的に長期的なコスト削減が可能となります。

また、地域資源を活用した木造建築は、経済的価値だけでなく、文化的・環境的価値も提供します。



➎木造公共建築の未来

5-1. 持続可能な社会と建築の役割

カーボンニュートラルを目指す現代において、木造建築は欠かせない選択肢の一つです。環境負荷を軽減しながら地域の特性を反映する建築が求められる時代において、木造公共建築はその理想形と言えます。

5-2. 地域に根ざした建築の可能性

地域の特性や文化を反映した木造建築は、地域コミュニティの絆を深める効果があります。また、地元の職人や企業と連携することで、新たな雇用を生む可能性もあります。



➏結論:木造公共建築は「スタンダードな挑戦の形」となる

木造公共建築は、その特性ゆえに多くの課題を抱えています。

しかし、適切な設計・保全を行うことで、これらの課題を克服し、地域社会や環境に貢献する建築を実現することが可能です。「木造=悪」という単純な見方ではなく、その本質を理解し、適切な対応策を講じることが求められます。

…そんな記事の最後にちょっとしたお知らせです。前職の豊橋市役所で少し携わっておりました、木造の公共保育園が、我が町、愛知県豊橋市に誕生します。令和7年4月開園です。

この規模の公共建築のアイデアを、優秀な建築学生から募集するという異例の形で始まった保育園設計ですが、外部内部ともに木材を『あらわし』で使っている箇所が多く、まさにこの時代へ挑戦する建築となっています。

愛される建築になってほしい。是非皆さんで注目してみてください。



いかがでしたでしょうか。

家づくりや建築は、単なる「建物を建てる」という行為にとどまりません。それは、地域や環境、未来の世代にどのような影響を与えるのかを考える行為でもあります。木造建築の特性を正しく理解し、その魅力や可能性を活かした建築を目指しましょう。

私は毎週土曜日に、不動産業界のリアルや家づくりの疑問について更新していますので、お気軽にスキ、フォロー、コメントして下さると大変励みになり嬉しいです。みなさんの理想のお家、読んでみたい記事のテーマについてコメントで教えてください‼

お付き合いいただきありがとうございました。
それではまた来週👋





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