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成長する米ワシントン都市圏の成長を支える郊外地域の再生

case|事例

急速に成長しているワシントン都市圏では、その流入人口の多くを郊外部で受け入れている。メリーランド州モンゴメリ郡に位置するロックビル市のパイクアンドローズ地区は、成長の受け皿としてうまく再生された事例として知られている。

パイクアンドローズ地区は、時代遅れの郊外開発をTODの拠点として再生している。十分に活用されていない駐車場や商業施設を住宅に転用することで、ショッピングモールと広大な平面駐車場が拡がる10haの敷地を多様な緑に囲まれた現代的なビル群へと生まれ変わらせた。現在では1,605戸の住宅と延べ3haの商業床、14haのオフィスとホテルが供給されている。また徒歩5分圏内に地下鉄駅があるため自動車に頼らずワシントンD.C.全域に容易にアクセスができる。

パイクアンドローズのTOD開発は、総面積174haの地域再生の一部であり、その一連の開発では特に緑をその中心に据えている。それは、開発が長期にわたる中で、建物やインフラ、交通施設の間をつなぐ公共空間が重要であると認識されているためである。開発後のパイクアンドローズには、公園や植栽から屋上緑化まで多様な緑が確保されており、花粉媒介者を惹きつけるバイオリテンション施設も多数設置されている。並木道は緑陰が形成されるように樹木が配置され、建物のファサードはブドウで覆われている。屋上緑化は自生植物が用いられ、雨水を管理すると共に日射熱を反射させ、建物内の環境を快適に保つ工夫が施されている。

insight|知見

  • 福岡都市圏も10年で15万人も人口が増加し、その中心都市である福岡市の人口増は2040年ごろまで続くと予測されています。一方で、その増加する人口を都市計画的に適切に受け入れているかと問われると、疑問符が浮かびます。

  • 福岡市の地価が上昇しているため、子育て世帯を中心に市外で増加する人口の多くを受け入れざるを得ませんが、計画なき市場原理による住宅開発が行われているというのが現状だと思います。

  • 広域的な都市計画として都市圏を構成する自治体の連携がなかなか制度的にも担保されておらず、実態としても進まないという課題もあると思いますし、TODのような土地利用と交通の連携がなかなかうまくいかないというのも長く指摘されている課題だと思います。

  • 将来的に必ず人口は減少するので、より効果的に都市開発投資を促す都市計画制度や実効性をもった都市圏戦略が必要ではないかと思います。