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欧州公共空間賞を受賞したワルシャワの公園が示すトレンド

case | 事例

2000年からバルセロナの現代文化センターが授与している権威ある「欧州都市公共空間賞」の今年の受賞者が発表され、一般カテゴリではポーランド・ワルシャワの「ブルザ(嵐)」アクション・パークが受賞した。この公園は、第二次世界大戦の破壊の名残である丘の瓦礫を利用して構造が作り出されたもので、その物質性によって場所の記憶を際立たせている点が高く評価された。ワルシャワ蜂起の勃発から79年目にオープンしたこの公園は、首都の痛ましい歴史を記念するだけでなく、まったく新しいレクリエーションと教育の場を作り出している。この2つの側面を共存させることができたのは、繊細な介入と魅力的な物語があることが背景にあるが、プロジェクトでは、破壊されたワルシャワの廃墟を露出させ、教育的な小道を導入し、がれきコンクリートでできた渓谷を造成した。

コンセプトの作成にあたり、デザイナーは空間を注意深く観察し、瓦礫と野生の植生との関係を分析した。渓谷の壁が自然に引き継がれるように、コケと砂糖を混ぜたバターミルクを撒いたなど、斬新な取り組みも行われた。公園はポーランドの大統領建築賞グランプリだけでなくランデジン国際景観賞でも評価された。公園の自然が、自然そのままに成長し、低木や雑草が見苦しくなく感じられないようになっているのは、既存の審美感の基準を変え、都市の公共空間の創造に新たな方向性を打ち出しているとも言える。瓦礫となったコンクリートの再利用、自然への最小限の干渉、そしてこの場所で進化することを許された「自然」は、自然なものと変容するものとのバランスが取れている点で、気候変動の時代に必要な考え方なのかもしれない。

insight | 知見

  • 受賞プロジェクト紹介サイトには公園のビフォー・アフターの写真や紹介動画もあって、プロジェクトの全容が分かって面白いです。

  • Park-PFI制度によって、全国で様々な公園のリニューアル整備が、民間の商業活動の収益によってまかなえるようになってきています。一方で、その公園の由緒が薄れてしまっている事例も多いのではないかと思います。記事にあるように複数の目的を達成する公共空間を作るには「繊細な介入」が必要なのだと思います。