リバプールはバスを公的な管理下に戻す
case|事例
リバプール・シティ・リージョン合同行政機構は、10月はじめに、バスネットワークの管理を公的な管理下にいれることを決定した。これによってバスの路線、ダイヤ、運行頻度、運賃などのサービスレベルの決定権が民間事業者の手から離れ、合同行政機構の管理下に置かれる。公的にサービスレベルが管理されることによって、運賃上限の設定や非接触決裁システムの導入など、公共交通のサービス統合がより進むことが期待されている。公的な管理下への移行は、いくつかの段階を経て数年かけて行われる。
リバプールのバスの公的管理への移行は、マンチェスターに続いて、英国内で2番目の事例となる。英国では1986年の法律制定以降、バスサービスの民営化が進められてきた。リバプールやマンチェスターの取組みは、約40年間続いてきた規制緩和に逆行する再規制化の取組みともいえる。
リバプールでは、公共交通の移動のうち82%がバスで担われており、バスは地域内の重要な移動手段となっている。公聴会には6,000人もの住民が参加したが、そのうち70%が公的管理下への移行に賛成していた。
insight|知見
日本のバス会社は99%が赤字で、運転士も慢性的に不足しています。これまでは幹線的な路線の収益を民間事業者が再配分して郊外路線を維持してきましたが、都市がスポンジ状に縮小する局面ではなかなか難しいかもしれません。
なので地域のインフラとして公共交通を維持するという合意形成が図れるのであれば、日本でも公的にバス事業を管理するということもひとつの代替案になるように思います。運転士の雇用水準も安定させられるでしょうし、サービスレベルも路線収支によらずに都市計画として大事な路線の運行頻度を高くするようなこともできるかもしれません。またオンデマンドバスや自動運転バスのような新しい技術の導入もやせ細った民間事業だけでは十分に期待はできないので、公的な投資が必要な場合もあると思います。
一方で、移動圏域が単一の基礎自治体内で完結しないという点は、公的管理に移行する際の課題になるように思います。リバプールは、合同行政機構という都市圏単位の行政機構があるので、移動圏域の実態にあわせたサービス設計が可能ですが、日本はそのスケールの行政機構がないので、基礎自治体を連携させる工夫や都道府県のリーダーシップなどを考えないといけないように思います。