未来のゾーニングはテクノロジーと持続可能性の融合によって形づくられる
case|事例
世界の多くの都市が、人口増加や気候変動、経済の不平等さなどの都市課題に取り組んでいる中で、革新的なゾーニングのソリューションのニーズは日に日に高まっている。そして、新たなゾーニングソリューションは、新しい技術の台頭と持続可能性の必須性が駆動させると考えられる。
技術面においては、データ駆動アプローチによる効果的・効率的なゾーニングを可能にすると言える。大量かつ多様なデータへのアクセシビリティが日進月歩で高まり、より多くの情報に基づいて意思決定を行うことが可能になった。またマッピング技術の進歩も著しく、人口密度や交通ネットワーク、環境特性などを地図上で可視化できるようになり、ゾーニングの代替シナリオを複数設定し、その影響の評価が可能になった。
また、技術の進化はゾーニングの意思決定プロセスにおけるより広範な市民参加を可能にするとも考えられる。オンラインプラットフォームは、市民に様々な情報へのアクセスを容易にさせ、オンライン上でのフィードバックや議論も可能にした。
持続可能性については、ゾーニングの概念を再構築することに寄与するだろう。気候変動の影響を実感として感じられるようになる中で、環境への配慮を優先して土地利用を決定する「グリーンゾーニング」をはじめ、ゾーニングによって気候変動の影響を軽減するべきだという認識が高まっている。いくつかの都市では、ウォーカブルで自動車依存を減らすゾーニングを施しているし、新規開発でレインガーデンなどのグリーンインフラ整備を義務付けるようなゾーニングを行っている都市もある。さらに持続可能性は、ミクストユースやアフォーダブルハウジングの確保などを通じて、インクルーシブなコミュニティを形成することも指向し、社会的公平性の確保にも寄与すると考えられる。
ただし、ゾーニングの未来には課題もある。ステークホルダーの利害調整は、これまでと同様に難しい問題であり続けるし、技術進歩のスピードにゾーニング政策が追い付かない可能性もある。また政策当事者のリテラシーや理解の向上も進める必要がある。
insight|知見
日本は、土地の所有と使用に関する私権が強いので、欧米の都市計画と比べると、必ずしも用途規制が厳格とは言い切れませんが、やはり都市計画の根幹のひとつは土地利用政策だと思います。
人口減少下でインフラの整備および維持管理を持続的に行っていくためには、土地利用の抜本的な見直しが必要だと思いますし、半導体工場の市街化調整区域への立地を許可する規制緩和も本来ならば用途規制制度を抜本的に見直すべきなのではないかと思います。
その中で、記事で述べられているような技術適用の視点と持続可能性の視点は不可欠で、様々なデータに基づいてゾーニングシナリオを検証し、持続可能性のような新しい評価指標でも評価するということが教科書的な政策論として必要だと思います。
とはいえ、ステークホルダーの利害調整や為政者のリテラシー向上はデータや持続可能性では解決できません。ここのソリューションはなかなか見えてきません…。