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ブタペストは住民投票で住宅の短期レンタル禁止を可決
case|事例
ハンガリーの首都ブタペストで最も人気の高い住宅エリアTerézvárosで観光向けの住宅の短期レンタルの禁止の可否を問う住民投票が行われ、禁止が可決された。投票率は25.2%と低かったものの約6,000人が投票を行い、投票者の54.2%が賛成票を投じた。この決定に基づき、今後市議会で法令を可決し、2026年1月1日から住宅の短期レンタルの禁止が有効となる予定。
今回の決定は、住宅の短期レンタルが不動産市場へ与える影響への懸念を反映している。投機的な海外資本による投資によって地元住民が締め出されるケースが増加しており、実際の住宅価格も2015年から3倍の水準まで上昇している。不動産価格以外にも夜間の騒音など、生活環境の悪化について住民から頻繁に苦情が寄せられていた。
次第にヨーロッパでは、住宅の短期レンタルを禁止する事例が増えている。先月、アテネは都心の3地区で新たなAirbnbのレンタルを禁止し、6月にはバルセロナが深刻化する住宅不足問題を解消するため、2029年から市内全域で短期レンタルの禁止を実施する方針を発表している。マドリッドも4月に観光向けの住宅レンタルの新規ライセンスの発行を禁止しており、2025年まで禁止措置が続くと見込まれている。そのほか、ロンドン、ダブリン、アムステルダム、パリなどでは年間の短期レンタルの日数に制限をかけている。ベルリンは、さらに踏み込んで2016年に住宅の短期レンタルを全面的に禁止したが、取り締まりが難しく、2018年に規制を緩和し高額な罰金を課すことに置き換えた。また、リスボンでは、ブタペスト同様に住民投票を行うための市民運動が始まっている。
オーバーツーリズムの弊害は住宅問題以外にも飛び火をしている。ベルギーのブルージュでは、市内が混雑しすぎているとして、住宅の短期レンタルに加えて、ホテル産業への規制を強化することを8月に発表した。今後、歴史地区内での新規ホテルの建設などが禁止される。
insight|知見
日本では、旅館業法や民泊新法の規制に加えて、自治体が独自の制限を定めているため、オーバーツーリズムによる住宅不足はヨーロッパほどの深刻さはないように感じます。
一方で、大都市を中心にホテルの宿泊費は高騰しており、出張の際の宿泊の妨げになっているようです。インバウンドによる消費も重要な経済活動のひとつだと思いますが、経済の基盤は日ごろのビジネスだとおもうので、住んでいる人の生活や経済活動を疎かにしないための、仕組みや規制、値付けなどを検討するタイミングのように思います。