マドリードは違法駐輪と安全性への懸念から電動キックボードのシェアサービスを禁止
case|事例
マドリード市議会は、市内で電動キックボードのシェアサービスを運営する3社が、入札時に定めた駐車管理とデータ共有の要件を満たしていないとし、電動キックボードのシェアサービスを禁止することを決定した。市長は、今回の決定について、「市場に任せたままで安全性を確保することができないと判断した。」とコメントしている。
市議会の決定を受けて、Lime、Dott、Tierの3社は、20日以内に控訴を申し立てることが可能だが、控訴をしなければ10月にライセンスが取り消される。また現時点でマドリード市は新たなライセンス付与は考えていない。マドリード市の電動キックボードのシェアサービスの禁止は、パリとメルボルンに次いで、世界の主要都市で3例目となる。
マドリード市は、2023年5月に新たな規制を導入して、入札によって3社を選び、各社に2,000台ずつの車両配備を許可していた。それ以前は18事業者がサービスを提供していたため、それを整理し3社へライセンスの付与を行っていた。入札においては最高水準の安全性と秩序の確保が求められていた。契約においても、各社のデータに市がアクセスできることを義務付け、指定区画にしか駐車できなくし、歩行者専用道などの指定エリアでは借りることができないような技術を導入することが命じられていた。
しかし、市の技術者が確認したところによると、契約で命じられた技術が導入された形跡はなく、禁止されたエリアでの利用や駐車が常態的に行われていた。入札以降、全体の問題は減っているが、事故は依然として発生してる状況だった。
Lime社は、今回の決定に対して、「事前の通告や協議がなく決定され、事業会社のビジョンや既存ユーザーを考慮していないことを遺憾に思う。」とコメントしている。
insight|知見
世界の各地で電動キックボードの安全性の問題が課題になっているようです。今回のマドリードの決定では、民間事業者が契約事項を遵守していないことが問題視されており、企業倫理が問われています。
翻って日本の状況はどうでしょうか。キックボードの事故や危険な利用については定期的にニュースになっているので安全性が必ずしも確保されているとは言えないように思います。
一方で、日本の場合は、基礎自治体が導入を許可しているわけではなく、純粋に民間事業として行われているため、安全性の確保や違反の取り締まりを市町村がコントロールすることができず、民間事業者の努力次第となっています。欧米に比べて道路空間の制約が強い日本だからこそ、ルールや規制の策定は、民間任せにせずに行政がイニシアティブをとるべきではないかと思います。