都市の変革の役割を果たす公共空間―バルセロナ・モデル
case | 事例
都市は、自然の土壌に効率的に舗装が施された、密集した建築空間である。バルセロナのような都市では、土地の75%近くが舗装され、防水・排水機能が施されている。気候変動の影響が深刻化している現在、都市は自然とのつながりを取り戻さなければならない。バルセロナは優れた都市化の一方で広場、公園といった緑や自然の土壌は都市に場所を持ち続けてきたが、現代の公共空間には、その形態とデザインの両面において、新たな定義が必要であろう。広場、通り、公園といった旧来のカテゴリではなく、新しい用途や生活様式を定義する都市ネットワークの一部を構成する、形のない場所が現れてきているだ。都市の変革は、小規模な公共の場の変容、職住近接、ネットワークの再構築などからもたらされるように、都市は公共空間での経験から変革が進むものであり、公共空間を変化させられる都市は、積極的に変化する都市であると言える。
バルセロナ都市部の緑地面積は住民あたり約7.5平米で、WHOの要求水準を満たしているものの、住居地域に不均等に分布しており、都市として最も整備されている歴史的な街区では、住民あたり2平米にも達していない。気候変動の時代においては、都市を自然化する努力が必要であるため、バルセロナでは2030年までに住民1人当たり1平米の緑地を増やすこと、つまり市全体で170万平米の新しい自然化された公共空間を作り出すことを目指している。コンパクトな都市でこの目標を達成するために、計画では自然化可能な場所の多様性を定めており、それは「広場」「公園」「通り」といった定義のものではなく、高齢者や子どもたちの居場所、遊び場なども含む、より親しみやすく、透水性に優れ、より多くの日陰を持つ、複合的な都市の機会空間と解釈される。
バルセロナは都市の発展に従い、ビル群に中庭が密集させられ、また私有化されてきた。バルセロナ市は各街区の状況を把握し、小さな都市計画を提案し、緑と公共設備のあるパティオ、プライベートガーデンのあるパティオ、産業や駐車場と一緒に建てられたパティオなど公共庭園として再生させる計画を立ててきた。費用がかかり、時間のかかる仕事だが、社会的には非常に有益なものである。公共施設を伴う多様な公共空間プロジェクトは、小さな都市の中心性を生み出す、都市の現状に適応させる重要な例である。バルセロナという都市の進化は、1980年代から今日に至るまで長年にわたって公共空間をデザインすることで都市を再生させ、公共空間を民主的な性格を持つ都市の新しい場所に変えてきた、継続性と多様性を必要とするモデルでもある。
insight | 知見
記事は都市計画の専門家であるJaume Barnada氏の論考でありますが、バルセロナという都市の成長・進化は公共空間の変容が起点になっており、今現在は気候変動対策にあわせて公共空間の再定義と機能の強化が進んでいる、といった主旨の記事です。最近ではスーパーブロックが話題によくあがりますが、1980年代以降バルセロナがどのような段階的な変化を遂げてきたのかちゃんと勉強しようと思いました。
バルセロナ市が市内の小さな街区ごとの計画にも手を貸して、市や街区のニーズに合った公共空間を作り出す努力をしていることは参考になります。公開空地を持つオーナー事業者や、エリアで公開空地をマネジメントするまちづくり協議会などがデザインする公共空間は、どうしても集客や賑わいづくりの目線になるので、公平性・多様性や気候変動の視点を含めた設計を自治体が主体的に行うのは、記事が指摘している通り社会的に有益だと思います。