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モントリオールの公共空間にある「敵対的建築物」
case | 記事
2024年12月、モントリオール市は2024-2030年の「モントリオール市ユニバーサル・アクセシビリティ計画」を発表した。同市の公共空間や公園へのアクセシビリティを向上させることを目的に策定された計画であるが、こうしたデザイン介入と公共部門が重点的に取り組むことによって、公共空間が画一的に構造化され、特定の利用者にとっては「敵対的」になる危険性があると指摘する専門家がいる。「敵対的建築(hostile architecture)」や「防御的デザイン(defensive design)」という用語は、公共空間における特定の行動を制限することを意図した都市設計を指す。防御的デザインが「敵対的」と見なされるかどうかは個々の認識に依存するもので、例えば、ベンチに手すりがあるのを見て何とも思わない人もいれば、ベンチに障害物があるとそれを敵対的と見なす人もいる。2021年にボストン地下鉄の交通当局が、アクセシビリティに関する推奨事項に従って、高齢者や障害者の利用を助けるためにベンチに手すりを設置したが、ホームレスの人々に対する影響も無視できないほど指摘を受けた事例がある。
コンコルディア大の教授によると、公共空間の建築物は、その建築物に関わる人々の行動が、設計プロセス中で積極的に選択されるか消極的に選択されるかによって縛られていると解説している。例えば、公共の広場での公平性を重んじて、ベンチに座る時間を制限する標識が設置されることで、長時間休憩が必要な人にとっては敵対的だと認識される。また、公園の木製のプランターに金属の隆起を設けることでプランターの耐久性を高めようとしたとしても、横たわることが難しい、といった行動の制限が出現することに対する非難が現れる。
敵対的建築は、インフラデザインだけでなく、セキュリティ対策や警察の存在が暗黙の脅威として現れる場合もある。2022年に、モントリオール市警は複数の公共空間に新しい監視カメラを設置する提案を行った。監視のインフラは、警察が特定の空間で特定の人々を排除することを容易にするように、ベンチの物理的障壁と同様に、公共空間での行動を制御する手段として機能する。しかし敵対的建築は、人々が空間を利用するのを本当に阻止するわけではなく、ただ空間を居心地の悪いものにしている可能性がある。
insight | 知見
去年新宿の「意地悪ベンチ」がネットで盛り上がっていましたが、どの都市にも同じような事例がありそうですね。敵対的なのかどうかは記事にも書いてあるように主観的なものなので、地域住民と利用者それぞれが敵対的と感じないような工夫やそれを緩和する別の(公共空間以外の)方策が必要だと思います。
高齢者や子ども、身体障がい者に優しいまちづくりの一環として、ユニバーサルデザインのガイドラインに沿った取り組みが、特定の人々にとっては敵対的だと感じることがあるのであれば、ユニバーサルデザインもまだまだ進化していく必要がありそうですね。