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LoLこそが至高のeスポーツである

僕は、俗にeスポーツと呼ばれるゲームをプレイする人々の中に特定の共通認識が存在するならば、それはいかにも"クソゲー"だ、というものだと思う。

MOBAを一度でも遊んだことがある人、数回でもレート戦をしたことがある人であれば、この意見には一際強く賛同するはずだ。

自分はレーンでソロキルしたのに仲間がフィードして負けた。始まった瞬間からAFKした奴のせいで負けた。自分はレーンを優位に進めていたのに敵のJGが介入してきて負けた(味方JGは呑気にもカニを食べている!)。自分はほんの少したまたまミスをしただけ、寧ろ仲間がカバーしなかったのが悪いのに暴言を吐かれた......等々。

MOBAがいかに"クソゲー"であるかは、だいたい上の段落一つで言い表すことができる。

予め宣言しておくが、僕はMOBAほど理不尽でくそったれでストレスのたまるゲームはないと考えている。死にゲーやら覚えゲーなんて、MOBAに比べたら可愛いものだと心から思う。

でも、僕は自分がMOBAを今後一生辞めることはないと確信しているし、たとえ自分でプレイすることがなくなったとしても、プロシーンを見続けると断言できる。

つまり、MOBAとは"クソゲー"であるとともに、愛すべき"クソゲー"なのである。



巷で話題のeスポーツ、年を追うごとにその社会的地位は高まっている。これは、eスポーツを愛し地位向上に努めた多くの人々の地と涙の結晶だ。

それに伴って、eスポーツはスポーツか?という命題の存在感も、幾分か希薄になったように思う。

僕がこの場において、わざわざ改まって議論を展開する必要はないだろう。

しかし、スポーツとは何か?そこにどんな価値があるのか?という問いを立てることは、やはり忘れるべきではないと思う。

僕は、何かを愛するためには、自分の感情にどこまでも直感的になるのと同じくらい、素直に見つめなおすことも必要だと考えているからだ。


eスポーツがスポーツであるという話をするとき最も耳にするのは、元来スポーツという言葉は競技を表すものであって、肉体的な活動に依存する概念ではない、といった具合の論である。

僕はそれほど詳しい訳ではないが、まぁそうなのだろうと思う。

多くの人が薄々感づいているからこそ今ではあまり聞かなくなったが、実際、このような主張を行う必要性というのはほとんど無い。

僕たちがeスポーツを語るとき一番大事なのは、eスポーツがどうして素晴らしいのかに他ならないからだ。


さて、根も葉もないことを言うようだが、スポーツには実用的な価値というものは基本的にない。

スポーツ=競技であるのならばなおさら、それは言ってしまえば"お遊び"だ。

自分たちでルールを作って、独創性や個人性、合理性や反復性を発揮して、ルール上の勝利を求める行為。これは、余剰の世界に生まれたゆとりなるものが創造した、非常に健全極まりない"お遊び"なのである。

豊かさという概念に対して様々な意見が蔓延しているのは周知の事実だが、そこではよく物質的な豊かさと精神的な豊かさを比較するやり方が見受けられる。

今僕の話した内容もだいたいそんな感じで、謂わばスポーツとは物質的には何の価値もないはずのものに人間の精神が価値を見出した、精神的な豊かさの象徴なわけだ。


夏の甲子園や正月の駅伝を見る人は多い。

例えば野球を現在進行形でしている人が甲子園を見るのは、割と実践的に説明できる。

自分よりも技術の秀でたプレイヤーの戦う姿を見ることは自己研鑽に繋がる。憧れの舞台で白熱したゲームを観戦することは将来のモチベーションに繋がり、きっと素晴らしい試合を見た後の野球選手というのはみな、野球がしたくていてもたってもいられなくなるのだろう。

そして、陸上選手が駅伝を見ることも同様に説明を試みることができる。

でも、甲子園や駅伝を見る人全員がその競技をしている人なのかといえば、そうでないというのは自明なことだろう。

昔その競技をしていたことがあるのならば、まだ説明はできる。

優れたゲームは自身の競技理解によってより楽しく見ることができるだろうし、時に過去を思い出してノスタルジックの海へ飛び込むことだってできる。

では、その競技をしたことが無い人はどうしてスポーツを観戦するのだろう?

先ほどから甲子園や駅伝を例に挙げているが、もちろんそれにとどまった話ではない。4年に一度しか行われないワールドカップやオリンピックの熱狂は目を瞠るものがある。近年ではラグビーの盛り上がりが非常に高まったが、その実熱狂していたほとんどの人はラグビーをしていなかったはずである。


きっとスポーツは、人間の中に宿る獣の心を呼び覚ます。

それは熱狂となり、自分でも上手く説明のできない興奮はなんだか心地のよい、まさしく豊かさをもたらしてくれる。

だから僕たちはスポーツを愛するし、それはスポーツという非物質的なものを維持するために何よりも大切なことなのだ。



この文章を読んでくださったほとんどの方が、なぜ僕が今この時に筆を執ったのか、容易に理解できるだろう。

そう、"MSI2021"である。

League of Legendsの歴史は長い。それはゲーム自体の歴史も、eスポーツとしての歴史も、両面において深い史を持つ。

僕はその遥かなる歴史の中で言えば、かなりの新参者である。初めて見たのはWorlds2017、Fakerの敗北した年だ。

LoLの世界大会を一言で表すならば、「多くの人がイメージするeスポーツ」だと思う。

ステージの規模、演出の派手さ、選手たちの雰囲気や視聴者の量。

全てが、圧倒的"eスポーツ"である。

LoLをまったく知らない人は、きっと世界大会の試合を見ても何がすごいのか分からない。でも、世界大会の様子、実況や観客の熱狂、選手の様相をみればすぐにでも、それが"スポーツ"であると悟るだろう。

そして、そこに至るための熾烈な争いとゲームの絶望的な難易度、そしてその舞台を取り巻く市場の規模を知ればすぐにでも、プロプレイヤーとして戦う選手たちがどれほど凄いのかを理解するはずである。


さて、この文章が昨日のMSIでのある試合をきっかけに、衝動的に書かれたものであるのは間違いない。

しかし、僕はその試合がどうしてそれほどに素晴らしい試合であったのかをここで語りはしない。

それは、僕の仕事ではないと思うからだ。

じゃあいったいこの文章は何を目的に書かれているのか?

タイトルの通りだ。LoLこそが至高のeスポーツである、そのわけを書き殴るためである。


そのために、まずは僕とMOBAの関係と、ある友人の話をしたい。

僕がMOBAを初めて知ったのは高1の頃。eスポーツというのをやってみたくて、LoLをインストールした。

まったくルールも操作も分からなくて、すぐに飽きた。

でもやっぱりMOBAというジャンルをやってみたくて仕方なくって、もっと手軽に遊べはしないものかとスマホゲームを探してみた。

そうして、"Vainglory"というゲームに出会った。

僕はすぐにMOBAの面白さを知った。工夫と知識、そして努力にのみ依存して上達できるゲームであることをすぐに理解して、夢中になった。

しかし冒頭述べたように、MOBAはあくまで"クソゲー"である。

うまくいかない時のほうがずっと多いし、負けているときには、この世にこれほどくだらないゲームが存在してもいいのかと本気で思う。

それでも義務のように何戦も何戦もやり続けて、依存とは斯く恐ろしいものであると分かった。7bあたりで明らかに煽りが増えて、ストレスが楽しさを大きく上回ったのを感じて、一度辞めた。

そしてある夜更け、ふと、YouTubeで検索をかけてみた。

そして出会ったのが、この動画だった。

あまりにも時間が無くて一晩では見れなくて、毎夜毎夜翌日の学校のことなど知らんとばかりに夜中まで、ずっと見ていた。

僕のやっていたゲームとは、違うゲームをしているみたいだった。

なまじそれなりに努力をしたつもりだったこともあって、その異次元さは一周回って理解不能に思えた。

僕は決勝戦まですべて見終えた後、すぐにVaingloryを再開した。世界大会で圧倒的な強さを誇ったPHOENIX ARMADAのWillyに憧れ、以来今に至るまで、サポートメインとなった。

今僕の尊敬する人物はWillyとCoreJJである。

でも、いくらあの世界大会に興奮したとは言っても、そのモチベーションは長くは続かなかった。

だから高校の友人を誘って一緒にプレイし始めた。彼に様々なことを教えながら自分自身も成長していく感じが、ゲームがただの娯楽以上のものであるのだという意識を高めていった。

そして見たWorldsは、LoLをまったく知らない僕が心から興奮する大会だった。

再びLoLをしたい。そう思って数戦やって、やっぱりまた辞めた。

スマホのほうが自分には向いていると思って、それからはずっとスマホMOBAばかりやり続けている。

Vainglory

Arena of valor 

mobile legend

marvel super war

wild lift

このあたりが僕の本格的にプレイしたMOBAである。warsongと非人類学園もちょっと手を出したことがある。

どのゲームもやっぱり"クソゲー"で、でも辞められない、辞めたくない、そう思ったのは自分よりも上手い人が世界にはたくさんいて、少しでもその人たちに追いつきたいと思っていたからだった。


さて、今ここで話したいある友人とは、先述した高校の友人ではなく、ゲーム好きの幼馴染である。

彼はFPS、TPS、格ゲーの好きな人間で、僕とは少し違うeスポーツの沼に嵌っている奴だった。

そんな彼を僕はMOBAに誘い、あわよくば自分と同じ沼に嵌りはしないかと期待をした。

一時は彼のセンスと僕の経験、それからお互い暇な大学生という身分も相まって、随分高いところまで上り詰めた。

しかし彼はその後MOBAを辞めてしまった。MOBAのあまりの"クソゲー"っぷりに嫌気がさすのは、仕方がないことだと僕も思う。


僕らは幼馴染で、ゲームを通さずとも普通にコミュニケーションを取っていた。

そんなある日彼と話していたら、最近LoLの大会を見始めたと教えてくれた。

彼は大会を見るのは凄く面白いと言って、始めは過去のWorldsを漁りだし、ついにはljlを毎週見るようになっていた。

僕はあまりljlを見ていなかったので、彼はいつの間にか僕にljlの状況を伝えるてくれるようになった。

そして、彼がLoLの大会を見るようになって初めての世界大会、MSI2021が先日開催した。

僕と彼はともにDFMを応援し、彼らの勝利を願った。C9を下した瞬間の感動はあまりにも形容しがたいものであった。

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僕たちは興奮し、DFMの熱狂を受け取った。

そして、僕がこの文章を書くきっかけとなった、DFM対DKの一戦が始まる。

ここで、ほんの少しだけこの戦いの事前情報を書いておく。

DFMは日本のチームであり、国内では最強であるが未だ国際線において煌びやかな成績を収めてはいないチーム。

かたやDKは昨年の世界王者、今年も韓国リーグを席巻した絶対的存在である。

今年のMSIは誰がDKを破るのか?が話題となり、MSIはメジャーリージョンがワイルドカードをボコるだけで面白くないなどともいわれている。

つまり、誰もDFMに期待などしていない戦いだったのである。

そして、幕は開く。

ここからは僕の文章での説明ではなく、リアルタイムの僕らのやり取りのスクショを貼ることにする。

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一部不適切な表現があるかもしれないが、友達同士のじゃれあいということを念頭に置いてもらいたい。


さて、このスクショから、いかに僕たちがこの試合を楽しんでいたかが伝わると思う。

僕たちの共通認識として、LoL及びMOBAとは"クソゲー"である。プレイする身としてはこれほど酷いゲームはない。

しかし。

だからこそ、LoLとは至高のeスポーツなのである。

すなわち、見るだけで面白いゲームこそ、真にeスポーツなのだ。

ゲームとは、本来であれば遊ぶためのもので、自分の体験を楽しむはずのものだ。

でも、自分がプレイをしなくたってこれほど楽しめるのだ。

心が熱くなって、ドキドキして、思わず声が出て、涙が出そうになって、画面を見られず悶えてしまう。

そう、これこそが。

これこそが、"eスポーツ"なのである。



今この文章を読んでいて、まだMSIを見ていない人がいたならば、僕はそのすべての人にこの大会を見てほしい。今日、11日の23時から夜中にかけて、DFMは予選突破を賭けた三戦を行う。

絶対に、絶対に、見るべきだ。

LoLを知らなくたっていい。DFMや対戦相手のことを何も知らなくたっていい。

ただ実況解説と選手たちの熱狂を受け取れば、次第に自分自身の中に眠る獣がその目を覚ますはずである。

そしてその試合が終わった後誰もが、MOBAをしたくてたまらなくなってしまうはずである。

そうして最後に、きっと理解する。

LoLは最高に"クソゲー"で、でも愛すべき"クソゲー"で、至高の"eスポーツ"であるのだと。

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Ryuhi
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