【ホテルレビュー】アートビオトープスイートヴィラ③/那須塩原/水庭と静寂を楽しむ/【水庭編】
こちらは建築家の石上純也さんが移植した318本の樹木と人工的につくった160の池で、幻想的なボタニカルガーデン〈アート・ビオトープ那須 水庭〉を作った時に出てきた石を上手に利用して坂茂さんが設計した全室別棟のヴィラです。
今回はこの施設の大きな特徴である「水庭」についてご紹介します
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水庭とは
もともと牧草地であった敷地は、それ以前は、水田であった。 もっと前は、周辺と同じ雑木林。
この場所の環境的なポテンシャルを最大限呼び起こし、それらを自然界には存在しないような密度と関係性で、 複層的に重ね合わせ、新たな風景を出現させる。
具体的には、新しいホテル棟の計画地である隣地の雑木林の樹木をそのままこの場所に移動させる。 新築工事で伐採される樹木をなんとかこの場所に留まらせる手段である。 また、昔、水田であった時に川から水を引き込むために利用していた枡を使って、 美しい水の流れを再び敷地内に呼び込むことを試みる。 さらに、周囲の森に自生する絨毯のように広がる苔を移植しこの場所に敷き詰める。
樹木、水、苔。 これらの既存の3つの要素が重ね合わされ新しい景色として姿を現す。
既存の林の中で、パズルのピースが組み合わされるように、まるで肩を寄せあうようにひしめき合っていた 樹木の群れを、一つ一つ、その種類と形状を調査し、それぞれのピースがあえて組み合わされないように、 この敷地内に注意深く再配置していく。
そのようにできた各ピース(各樹木)の間に生まれる隙間(余白)に、無数の池(ビオトープ)を計画し、 樹木の間から引き込まれるように注がれる太陽光をそれらの水面に反射させる。 また、それら敷地内に満たされる樹木と池との間を埋めるようにして、青々とした苔を敷き詰めてゆく。
こうして出来上がる新しい風景は、この場所にかつて存在していた環境であるとともに、 未だかつて、出会うことのなかったそれぞれの要素が重ね合わせられることによって生まれる新しい自然である。
人間では、決してつくりだすことのできない自然の中で育まれつくり上げられた要素を、 人間の手によって、自然界には存在することのない関係性で再構成し、新たな自然を生み出す。