見出し画像

Vol.2 上海トランジットで救世主あらわる

【フランス滞在記-出発編 Vo.2】
2019年11月14日、渡仏。

10月某日、夫は一足先にフランスへ飛び、
彼をフランスへ送り出した私と娘は、実家に身を寄せていた。


10月12・13日、日本列島を台風が直撃し、母娘二人では心もとないと松本の実家に身を寄せたまま、帰れなくなっていたのだ。
夜な夜な夫から届くフランス便りを楽しみつつ、親戚や、東京から帰ってきた弟と再会したり、時折勉強のため横浜へ出たりして(しかも特急あずさがとまっていたので鈍行で笑)、
人生最後であろう、両親との濃密な実家暮らしの日々は楽しくもあっという間に過ぎていったのでした。


そして、
いよいよ渡仏の時がやってきた。


出発の前日の11月13日の夕方。
仕事を終えた父が車を出してくれた。
当日に松本から向かうのは危ないよと、茨城の家へ前泊することにしたのだ。

「仕事で疲れているでしょう、電車で行くから大丈夫だよ」という私に、
「そんなにたくさんの荷物と小さな子供を抱えて、お前一人でどうやって行くのよ」と母。

大人しく甘えて、送ってもらい、荷物を運んでもらうことにした。
最後まで心配をかける娘である。


そして、翌14日。
心配症な父は随分早く茨城の家を出発し、随分早く成田空港へ到着した。
沢山の人が行き交う空港の中で、なんとか空いている椅子を探して、みんなで交代に座ってコーヒーを飲んで時間を潰した。あ、娘は確かリンゴジュースだった。


そして、いよいよ友人家族との待ち合わせ時間が近づいてくると、
父と母は「さて、そろそろ行きますか」とそっと席を立った。

二人して、何か言いたげな表情を浮かべつつも、心配の余韻を残さぬようにと思ったのでしょう。
眉間にシワを寄せて、「気をつけて」「無理するなよ」と手を振った。


小さくなる父と母の後ろ姿をなんとも言えない気持ちで追いながら、
「今日は一緒にご飯食べないの?」「じいちゃんとばぁちゃんはどうして飛行機乗らないの?」という状況がまだ理解できず不思議そうな表情を浮かべる娘をギュッと抱きしめて時間を過ごした。



しばらくして、友人家族と落ち合った。
いやぁ、すごく安心しましたね。
やっぱり、娘と二人じゃなくて、よかった…。



娘も同じ歳のころの友達と一緒にいるのがよほど嬉しかったのでしょう、
早速仲良くなった二人は空港内を探検して遊んでいた。




さて、今回トランジット利用した上海浦東国際空港ですが、
調べてみると動線がなんだかわかりにくいらしく、色んな人がブログでトランジット攻略法を挙げています。


日本国内のイージーな道でさえ迷宮化させる達人の私(要するに方向ド音痴)ですから、もう迷う自信は満々です(笑)。


さらに、
中国の空港内では通信規制があり、GoogleやFacebookなどいわゆる中国以外の検索エンジンが使えないようだ。
つまり、もし迷ったり困ったりしても、ググれない、ということ。


— おっと、これは難易度がめちゃ高いトランジットではないか!


ちびっこ二人がいるし、できるだけフラフラしたくはありません。
保険をかけて、3時間弱ほどトランジットの時間がある便を選択したが、
中華航空は結構遅延が多いということもあり、心配性の私はソワソワしていた。

あと、スルーチェックイン(トランジットの際、一度出国せずにそのまま荷物を航空会社の方で運んでくれること)!
日本の航空会社では当たり前かもしれませんが、中華航空の場合、これが適応される便とそうじゃない便が存在する、ということをブログに書いてくれている人がいたので、念のため中華航空の問い合わせセンターへ電話して確認をした。
私たちの乗る便はなんとかセーフであった。ふぅ、よかった。


本当、みんなの旅の経験がブログで見ることができて、ありがたいかぎり。
なんていい時代に生まれたのだ。




–– どうか、うまくいきますように…。



そう願いながら、頭の中で先のこと(主に上海トランジット)をあれこれとシュミレーションしつつ飛行機へ乗り込むと、始まってしまいました。



娘の背中痒い痒いコール…。



そうです、アトピーのある娘は、疲れたり、眠くなったり、身体が温まると、
背中が猛烈に痒くなるのです。
そうだ、これが一番大変だったわ。


「かゆい!かゆい!」
「せなかがかゆい!!」
「せなかがかゆーい!!!」


身をよじらせ、ボリボリと背中を猛烈にかきむしりながら、わめく娘。


「・・・あぁ、これはもう、完全にキャパオーバーだ・・・」



と思った、その時。




素晴らしい救世主が現れたのです。




わめく娘をなだめながら、とりあえず周りの人に一言伝えておこう、と
お隣の座席に座っていたフランス人男性に、拙い英語で話しかけた。


「子供がご迷惑おかけするかもしれません。ごめんなさい」。


すると彼は、「No problem! だいじょうぶ!」と笑ってくれた。



–– に、にほん語!?



どうやら日本好きな彼は、数ヶ月間の日本への短期語学留学を終え、
その日は帰り道だったようだ。

特に日本のアニメが好きらしく、お土産に買った姪っ子さんが好きなアニメキャラクターの人形を大事そうに抱えて飛行機に乗っていた。

銀魂にワンピースにキャプテン翼。
いろんな話をしてくれて、漫画・アニメにあまり詳しくない私にとっては、
日本文化逆輸入、のような不思議で面白い時間となったのでした。



さらに、
彼自身も敏感な人で、アトピーに小さい頃から悩んでいたらしく、
「わかるよ、僕も大変なんだよ」(たぶん)と写真を見せてくれたり、
小さい頃の思い出話を語ってくれたり(たぶん)、
「かわいいねかわいいね」と(これはわかった)娘の遊び相手になってくれた。



飛行機の騒音と照明の明るさに苦しんでいた彼に、
(わかるわ、眩しいよね…)と思いながら、飛行機のアメニティの中になかった時のためにと持参してきた耳栓を渡してみたり、
これ気持ちいいですよ、とこれまた日本から持参した使い捨てのホットアイマスク(ゆずの香り)をすすめてみたりした。



そうこうしているうちに、私たちは打ち解けていった。



偶然にも、彼も私たちと同じく上海浦東国際空港でトランジットして、私たちと同じ便でパリに飛ぶということがわかって、しかも、この経路は何度も使って慣れているとのこと。


そこで、「子どもがいるしトランジットの仕方もよくわからないし、不安なんですよね」と相談すると、なんと、彼が私たちを案内してくれることになった。




奇跡だ!
またしても後光がさしました。(二回目)。


救世主、あらわる。


結果、あんなに不安だったトランジットは驚くほどスムーズに済んで、乗り継ぎの飛行機への搭乗時間までゆっくりくつろぐことができた。
なんだか夢みたい。



ところで、あれだけお世話になったブログも、トランジット経路に関しては全く役に立ちませんでした。それだけ上海浦東空港が迷宮なのでしょう…どおりでみんな書いてあること違うわけだ(笑)。



最後はやっぱり目の前の人との関わりが大事なんだなと思った。



こうして、
なんとか難関・上海トランジットをクリアし、パリのシャルル・ド・ゴール空港行きの飛行機に乗り込んだ私たちであった。


が……。

パリについてからまたしても一難。
再び、フランス紳士のお世話になるのでした。


あぁ、中々目的地につかない(笑)。
でもまぁこれも旅の醍醐味ということで。



写真はおちびさん2人、上海浦東国際空港で飛行機を眺めるの図。
かわいい背中が2つ。


・・・つづく。

生きていく場、暮らしの場、すべてがアトリエになりますように。いただいたサポートはアトリエ運営費として大事に活用させていただきます!