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057. 世界一温かい「you have to!」
bonjour!🇫🇷 毎週金曜日更新のフランス滞在記をお届けします。
2020年2月某日、夫の配属先の上司が何かものすごい賞を取ったということで、職場で祝賀パーティが開かれた。
夫の上司はその世界では第一人者と言われるかっこいいキャリアウーマン。
わたしは彼女が好きで、そして憧れの存在であった。
彼女はなんというか爽やかでパワフル。いかにもできる女!という雰囲気だが、目がとても優しかった。あまり言葉でのやりとりはできなかったのだけれど、一緒の空間にいるだけで元気になれて、フランスにいる間、目一杯ここでの生活を楽しむようにとたくさんのアドバイスをしてくれた。
(フランス語習わないとダメよ!と言われたけれど結局なんのアクションも起こさなかったことが悔やまれるが・・)
娘もすっかり大好きになっていた。
そんな彼女の祝賀会に急遽お呼ばれして、何を持っていこうか二人で話し合い、「そうだ、花束を持っていこう!」ということになった。
はじめは近所のお花屋さんで可愛いブーケでも作ってもらおうかと思ったのだが、時間がない。
さて、どうしよう。
そうだ、と会場に着くまでの道端に咲いていた小さな花を二人で摘んで、娘のビーズネックレスを作るようにと持ち歩いていた凧糸でさっとしばってブーケにした。
喜んでくれるだろうか。
会場について、娘の小さな手に収まった目一杯の花たちが、上司の大きな手に包み込まれるように渡された。彼女は目をキラキラとさせて、ものすごく喜んでくれた。職場のデスクに飾られた花束はなんとも立派に見えた。
よく、フランスに着いたばかりの頃彼女に言われた「you have to!」という言葉を思い出す。
あれは確か、仕事終わりに地元グルノーブルのクリスマスマルシェを案内してくれた時のこと。「ストラスブールのクリスマスマルシェはいいよ!」という話題になって、遠いし、ストライキはあるし、子連れだし・・と躊躇していた私たちに彼女が放った言葉が「you have to!」だった。
彼女の「you have to」には、人生楽しまなくっちゃ、という颯爽とした知性を覚えて、こんなに温かい「you have to!」があるんだ・・と不思議な気持ちになった。
その言葉は苦しい強制力をまとうことなく、毎日疲労困憊で辛かった当時のわたしの背中を押してくれていた。
今でも、へこたれて、元気が出ない時。
彼女のキラキラとした瞳と寒空の下咲いた小さな花束たちの残像と共に、あの時の「you have to!」を思い出すのだ。
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