100.太陽を求めて、はしご芝生
bonjour!🇫🇷 毎週金曜日更新のフランス滞在記をお届けします。お休みを挟みながら、2020年5月から毎週書き続けてきたフランス滞在記も今号で100話目!自分でもびっくりしています・・。さて、今日はロックダウン直前のある平和な昼下がりについて。太陽を求めて芝生の上に集まる人の中に、あの日わたしたちもいた。
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2020年3月12日。
3月10日にマクロン大統領より、ひとまず16日まで保育園や学校などの教育機関を閉鎖することが発表され、フランスの多くの親が仕事との両立に頭を悩ませていた、そんな頃。わたしも、3月に入ってからは徐々にStay Homeモードになっていたけれど、さすがに3歳の子供を毎日家の中に閉じ込めてばかりはいられない。というわけで、天気の良い日には美術館や公園など人があまり集まらないところへお出かけするようにしていました。この日は、家からほど遠くないMuseum d'Histoire Naturelle(自然史博物館)へ。
今でこそキラキラしたものや鉱物が好きな娘も、当時はそれよりも太陽の下で駆け回る方が好き。興味は持ってくれるものの、早くお外に出て遊びたい様子だったので、素敵・・と思った鉱物などをさっと写真におさめて、博物館をあとにする。(もっとじっくりみたかったよぅ・・)。
博物館の前は広場になっており、ちょっとした遊具なんかもあったので、それを見つけた娘は一目散にかけ出す。ちょうど登りやすい形の木がたくさんあったので、木登りをしている子供たちの姿や、お昼の時間が近かったのでシートを広げてランチをとっている人たちもいた。
「あれあれ?」娘がいないぞ?と思ったら、木の割れ目にはまって気持ちよさそうにしていた。木肌に背を委ね、すやすやと目を瞑る娘の姿に、ここのところ抱えていた不安やモヤモヤが吹き飛ばされるようだった。
気がつくと時は正午を回っていて、さすがにお腹が空いたね、ということで近くのベーカリーへ行って、簡単にお昼ご飯を済ませた。この日の太陽があまりにも気持ち良いので、このまま家に帰るのが惜しく「じゃあ、もう一つ芝生のあるところへ出かけてみようか」と、太陽を求めてはしご芝生。
続いて向かった先は、グルノーブルアルプ大学。わたしはここの芝生が、ここで寛ぐ人たちに混じる時間が、とても好きだった。大学は閉鎖になっているから、今日は閑散としているのかな?と思ったけれど・・
みんないつもと変わらず、思い思いに芝生の上で過ごしていた。フランスに来て、何気に一番驚いたのが、人がみんなくつろいでいるように見えることだった。ヨーロッパの冬は厳しく、曇っている日が多い。だから太陽が出ると、街のテラスにも広場にも、そしてこういう芝生にも、たくさんの人が集まって、太陽の日差しを目一杯浴びて、そのひとときを満喫していた。
初めは、人前でくつろぐということがちょっと恥ずかしく思えた。けれど、思い切って現地の人に混じって芝生にゴロンとしてみると、そのあまりの気持ちよさに心も体も解けていった。目線を横に向けると、同じようにゴロンとしているどこの誰かも知らない人と目があって、思わずにこりと笑ってしまうこともあった。
くつろぐって、いいなぁ。
そう思いながら、お天気が良い日には、わたしは娘とお気に入りの芝生スポットに繰り出してゴロンと背中を委ねてみた。
この日は、ガールズトークを繰り広げていると思しき、賑やかな女子大生たちに囲まれながらノートを広げて絵を描いた。束の間の、ユートピアのような時間だった。