ちひろ色のない色@安曇野ちひろ美術館
しとしと雨の降る中、わたしの聖地・安曇野へ。大好きなちひろさんにどうしても会いたくて。
コロナ後はじめての美術館。
今回の展示はこちら。
あらゆる色を自由自在に使いこなした色鮮やかな初期作品から、だんだんと使う色を減らし余白の美を追求していく後期作品へ。その変遷の中にちひろさんの人生の色そのものを感じずにはいられません。
ちひろさんが自分の画風を確立する契機となったのは「こどもの幸せ」という雑誌の表紙を担当したことだったようです。
ちひろさんはこのお仕事を「実験の場」と考えていて、ここでちひろさんはさまざまな技法を試しながら自分らしさを見つけていく。
中でも武市八十雄氏という編集者との出会いは大きく、一緒に「感じる絵本」を連続して制作する中でちひろさんの才能は瑞々しくそして軽やかに花開いていく。
ちひろさんと武市氏が追求したのは引き算の美学。
「感じる絵本」とは、説明的な要素を省いて最小限の絵と言葉で表現されている。読み手自身が主人公として絵本の中に存在できるように設計されているのです。
感じる心は全ての人が生涯持ち続ける子どもの心に根ざしている。
読み手の感じる余地を邪魔してはならない。
わたしは展示スペースにディズプレイされていた武市氏の言葉の前で思わず立ち止まってしまった。
感じる余地。かぁ。
本当に慎重に、相手と共有する場に耳を澄ませていないと見過ごしてしまうようなささやかなものだけど、本来、全ての人に等しく在るはずのものなのだ。
わたしは尊重できているだろうか。自信がないなぁ。
手で触れられる展示もおもちゃも無くなって、絵本カフェも閉じていたけれど。
ここは、変わらずいつもインスピレーションと問いかけに満ちていた。
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