Vol.32 スポーツショップDECATHLONと手料理する友人の姿から気がついたこの気持ちはなんだろう。
bonjour!🇫🇷 毎週金曜日更新のフランス滞在記をお届けします。
正月早々、夫の大学の先輩を訪ねてドイツのデュッセルドルフへ。
一杯のラーメンで異国の地の生活で失いかけていた日本人としてのアイデンティティを取り戻す、という体験から一夜明け、今度はオランダのナイメーヘンへ車を走らせた。
ナイメーヘンには夫の研究者仲間(日本人女性)がオランダ人の旦那さまと暮らしている。ここをはじめて訪れたのは2015年の夏のこと。
当時、ワーカホリック真っ只中だった私は、オランダの人々の寛ぐことにオープンな部分にちょっとした感動を覚え、自分の人生を考え直そう・・と思うきっかけとなった。思えば、あれから私の生活の断捨離祭りが始まったんだっけ。
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4年ぶりの友人宅へ到着。
この4年間で当時とだいぶライフスタイルが変わった。何より大きいのは私も彼女も出産を経てそれぞれお母さんになったこと。家の中には可愛らしい男の子がいた。4年前と変わらず家の中はスッキリと片付いて無駄なものがなく、まるでモデルルームのように綺麗なのだけど、ところどころに子供との生活を感じさせる物たちが登場していた。
彼女は産休後研究職へ復帰し、子育てとのバランスをとりながら生活を作り替えている。一方、私は出産にあたって仕事をやめ、家で専業子育て中。今後のキャリアについて考え始めている。
数年前には予想もしなかった生活の変容ぶりに改めてびっくりしてしまった。
到着してからおにぎりランチをいただいて、子供たちを遊ばせるために近くの小学校へ。そこの校庭は小学校の子供たちが使っていないときは、市民にもオープンになっていて使っていいようだ。このあたりのおおらかさがいい。写真は載せませんが、木で手作りした可愛らしい遊具に子どもを見守る温かい目を感じた。
そうそう。オランダの冬は寒いので友人から防寒着を借りたのだけど、それがとても可愛くってどこで買ったか聞いてみた。すると、DECATHLON(デカトロン)というスポーツメーカーのものらしい。
値段も手頃でデザインも可愛いものが多いというので、お昼寝タイムを挟んでから街のショッピングセンターに入ってるDECATHLONへ行ってみようということに。
なんでもフランスのスポーツメーカーらしく、フランスの滞在先の家の近くのショッピングセンター内に入っていたのに完全に見落としていた・・!帰ったら行ってみよう。
(※) ちなみにこのDECATHLON、昨年日本進出して、千葉幕張と神戸にショップをオープン。幕張店へ行ってみましたが、懐かしさから散財してしまうので我が家にとっては危険です(笑)。
DECATHLONの中をぶらぶらとみて回りながら、本当に久々に触れるスポーツショップの空気に胸の中がザワザワしてくる。中高と運動部だったので、スポーツショップの活気に満ちたデザインとか、蛍光灯の眩しさとか、いかにも週末走ってそう〜打ってそう〜!な店員さんの雰囲気が懐かしい。そして、今私が着ている「子供に合わせた運動量の範囲内でとりあえず動きやすい」というチョイスの服にギラギラと蛍光灯があたってまるで宇宙服を着ているような感覚を覚えた。
なんだろう。
この気持ちはなんだろう。
ついついヨガウェアとか大人用のランニングシューズコーナーに目がいってしまうが、そうだ今日は子供のものを見に来たんだと思い出して、子供用のシューズコーナーへ。良さそうなトレッキングシューズを買って、この日はDECATHLONを後にすることに。
この気持ちはなんだろう。
と思いながら。
家に帰ると、料理好きな彼女はささっともてなし料理を作ってくれた。
これがまたすごく美味しかったのだ。単なる、日本人魂を思い出すラーメン的なものではなく、なんというかもっと深いところで美味しいと感じたのだった。
彼女と旦那さんはささっと協力して息子さんをお風呂に入れて寝かせると、彼女はキッチンに立って、レシピメモを片手に明日の仕込みをし始めた。この時間が今唯一の至福のひとときなんだと話していた。スッキリと整理された本棚の中のレシピ本をパラパラとめくりながら彼女が料理をする姿を追う。
そしてまた押し寄せる。この気持ちはなんだろう。
ここ最近、食べることに対してほとんど興味を失っていた私だったが、そういえば一年前は今の彼女のように料理が好きで、毎日キッチンで新しいメニューを作ることを楽しんでいて、そのまた一年前はクッキーやらケーキやら焼いて、同じように「この時間が唯一の私にとっての・・」と言っていた。
言って、いた。
のに、はて、あの時間は、モチベーションは、いったいどこへ消えていったのだろう?
パラパラとめくるレシピ本の軽い音が宙を舞った。
次の日、ある出来事をきっかけに、
私は「この気持ちは何だろう」の正体に気がつくのだった。
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