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天球の音楽を聴くからだ|MatsubaLab.芸術と身体知研究会
わたしは、夫と娘と家族三人で作る場をMatsubaLab.(マツバラボ)とよんでいる。探求することが大好きなわたしたちの日々の暮らしはまるで実験室のようだからです。
MatsubaLab.の活動として、夫と「芸術と身体知研究会」という研究会を立ち上げました。先日、慶應義塾大学の文化人類学者の井本由紀さん、シアターワークを提唱するアーティストで俳優の小木戸利光さんとはじめての研究会を開催しました。
第一回目の今回はわたしが話題提供者となり、「天球の音楽をきく」というテーマで講義・ワークを行いました。生活観や人生観をベースに、これまで様々な活動の中で培ってきたわたしなりの身体観をお伝えしてみました。
古代ローマの哲学者ボエティウスは、音楽には三つの種類があるといいました。
天球の音楽(ムジカ・ムンダーナ):
宇宙や世界を調律する理を知る、最上位の音楽。人間の耳には聴こえないが、数字や哲学として表現される。
人間の音楽(ムジカ・フマーナ):
宇宙の秩序はそのまま人間のからだにも表現されている。人間の心身をつかさどる音楽で、こちらも耳では聴こえないが、この調律が狂うと病気になり、性格がゆがむ。
楽器の音楽(ムジカ・インストゥルメンターリス):
わたし達に馴染みのある楽器や声などを通した実際に耳に聴こえる音を発する音楽。最下位の音楽とも言える。
天と地との間にある私たちの身体。
実際の耳で聴くことのできない天球の音楽を地上で表現として他者と共有するには身体があってこそ。
そんなことを体験できるようなワークをデザインしてみました。
宇宙は自分の心の現れ
古代の人は空を見上げる時、無限に広がる星々に自分の心を見たといいます。
それは、宇宙が外側に自分とは関係なく広がる無機質な空間ではなく、自分の内側に広がりゆく深い心の世界とつながった現れである、と捉える豊かな感性を持っていたからなのでしょう。
天球の音楽に対し、いつでも耳を傾け、心を開いていたのだと思います。
今回は太陽のワークを中心にやってみようと思い、普段から石を使ったワークや芸術表現をされている小木戸さんに「この日の太陽にぴったりな石があったらお持ちいただけますか?」とお願いしたところ、たくさんの石たちを持ってきてくださいました。
どれも個性に溢れて綺麗。
せっかくなので自分の太陽を感じる石をそれぞれ選び、その石から受ける印象を入り口に、心理学的な手法をつかって自分の中に存在する太陽や星々の神話の世界へと降りていきます。そして、そこから生じる感覚を丁寧に拾っていきます。
そして最後は、ロールプレイング形式でそれぞれの世界観を一つの作品として結んでいきました。
太陽に照らされている地球としての自分。
放った光を照らし返してもらえる太陽としての自分。
どちらも自分の現れです。
それぞれの立場に身を置いた時、何を感じ、何を体験したのかがとても大切です。
与える愛情は受けとってくれる人がいるから成り立つし、受け取る愛情は与えてくれる人がいるから成り立つもの。
愛情の交流をたっぷりと味わったら太陽に背をむけ、外の世界へと歩みを進めます。
土星の外に待っているキロンという小惑星。
ここから先は太陽の光が届かない世界です。自らの光を灯火として歩みを進めます。
冥王星のゲートを出て、太陽系の外へ。
自然と湧き上がってくる動きの中にすべての答えがあります。
天球の音楽に触れているその人の一挙手一投足はとても美しい。
目の前にありありと現れてくる世界はまるで神話のようで、心が震えました。
わたしは幼い頃から民話や神話が好きでした。
まだ科学技術が発達していなくて、あらゆる学問領域が専門性で隔てられていない古代の学問の世界に強い憧れがありました。
その憧れは、わたしの興味をさまざまな方向へ向かわせました。
理学療法(医学)に音楽療法、バレエのピアノ伴奏、芸術療法、色彩理論、哲学、心理学、デザイン、天文学、二十四節気、占星術、その他もろもろ。
わたしの興味は昔から多方向へ散り散りバラバラで、何か一つのことを究めることができない自分の置き所にずいぶん悩み苦しみました。
しかし、この日のワークの中に、わたしが学んできたあらゆることのエッセンスが活きているのがわかりました。
散り散りバラバラで、定まらなくて、柔らかいものを柔らかいものとしか扱えなかった自分の在り方にもちゃんと意味があったのかもしれない。
みなさんの美しい姿、舞はそうわたしに感じさせ、そしてわたしの過去を丸ごと肯定してくれるような温かい空気をまとっていました。
そして、お互いに深く降りていった場所で伸ばした手と手が命を紡ぎあう。
それが本当の意味で多様性を認め合うということなのだと強く感じました。
天球の音楽はそれぞれに違った個性を持つ身体を通して表現される。
内側から溢れてくる表現と実際に表現されるもの。
その間に摩擦が少なければ少ないほど、その人らしい表現として立ち現れてくる。
誰しもがそういう表現をしている世界を見てみたい。
それはきっと、多様性にあふれ、とても優しい世界なのだと確信しています。
*
井本由紀さんと小木戸利光さんのご活動Contemplative Theaterのワークショップが8月に熊野で開催されます。現地参加枠は埋まってしまいましたが、8月6日のプレイベント、8日研究会はオンライン参加可能のようです。
わたしは8日の研究会に夫と共にMatsubaLab.として話題提供者でオンラインで登壇します。今回の研究会のことについて発表予定です。ご興味ある方はぜひご一緒しましょう!
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![まつばらあや|リビングアトリエ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/88974072/profile_e292d1911e132c9f7849c74c41494485.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)