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045. 夕方のミシンカフェで絵を描くのが好きだった。


bonjour!🇫🇷 毎週金曜日更新のフランス滞在記をお届けします。

わたしが住んでいたグルノーブルという都市には、ギャラリーや美術館が立ち並ぶエリアがあって、そこをお散歩すると創作意欲を刺激された。


その界隈に大好きなカフェがあって、お散歩に疲れた時、雨降りな時、美術館の帰り道、よく立ち寄っていた。

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早い時間には誰もいないけれど、色とりどりのフェルトや布、糸や毛糸。黄色いスタンドの下に並ぶミシンたちが窓から入ってくるお昼の光に照らされて楽しそうにしている。

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ランチメニューは豆や野菜中心。フランスに来てから肉やチーズが続き、お腹が疲れることが多かったので、このカフェはそんな時の駆け込み寺的な場所になっていた。何より小さな子どもと一緒に食べやすいのが助かった。

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片隅にはおままごとキッチンがあってよく見ると、お店で使わなくなったボウルや泡立て器や、このカフェで作られたであろう手作りのフェルトのおもちゃがひっそりと紛れている。こういう感じが好きだなぁと思った。子どもの領域と大人の領域がなんとなく接している、この感じ。

「子どもってこういうのが楽しいと思うはず、可愛いと思うはず」というのは往々にして大人側のエゴだったりする。子どもって、子ども用に作られたものよりじつは大人が使っているものをおもちゃにしたい生き物なんじゃないかと娘を育てて思った。そういえば、自分も子どもの頃いつも子供騙しではなく大人のものが欲しいと思っていた気がする。

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朝は誰もいなかったカフェも、だいたい16時以降になると仕事を終えた人が一人二人と増えてきて、めいめい自分が作りたいものを作り出す。その横でおやつを食べながら絵を描いている時間が好きだった。

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娘はキッチンと机を往復しながら何やら練っている。隣ではさっきまで難しい顔をしてパソコン仕事をしていたサラリーマンが編み物を始めている。あぁ、癒される。

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あ、書けたかい?

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同じ目標に向かってみんなで力を合わせて何かを作りましょう、というのが物心ついた頃からめっぽう苦手なのですが、めいめい、自分のペースで没頭している熱量がなんとなく接し合っている、みたいな空間が大好き。空気で接しているというのでしょうかね。タスクでなく。

今でも自宅のリビングで絵を描いていると、あの時の空気を思い出して、あぁ、あの空間を自分の家にも作りたいと思ってしまうのです。



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