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132.マダムはいつだって、目を見て話を聞いてくれた。

bonjour!🇫🇷 毎週金曜日更新のフランス滞在記をお届けします。
このフランス滞在記にたびたび登場するフランス人夫妻が、いよいよフランスへ帰国することになりました。今号は、夫妻とお別れをした時のお話。


2023年6月24日。
この日は、お世話になったフランス人ご夫婦のfarewell party。
数週間前、メールボックスを開くとマダムから「Farewell invitation」というお知らせが届いた。Farewellって何だろう?と思い、ネットでググると「お別れ・送別」と出た。あぁ、そうか。7月に入ったらすぐにフランスへ戻ってしまうと言っていったけと思い出して寂しくなった。

メールには、マダムが作った招待状が添付されていて、そこには幸せそうに微笑むマダムとムッシュのお写真が添えられていた。

桐箱に日本画で筑波山を描き(前々回の記事)中には苦労して探した長さが同じ夫婦箸を入れた(前回の記事)。朝からお隣の市にある老舗の和菓子屋さんで、いろとりどりの美しい練り切りを買って、「よし、これで準備万端」と自転車にまたがる。

パーティの会場はキッチン付きの広々とした気持ちの良い空間で、わたしと娘が到着したときにはすでに早めについたゲストたちが楽しそうに前菜や飲み物の用意をしていた。ドアを開けると、浴衣をきたご夫婦が笑顔で迎えてくれた。マダムの耳には和紙で作った小さな折り鶴のついたピアスがゆらゆらと揺れていた。ロシア人の友人も浴衣で参加していて、「今日のドレスコードは日本」と言っていた。しまった!普通にエスニック調のラフなワンピースで来てしまった・・と思ったけれど、袖をふらしながらニコニコとパーティの準備を進める彼女たちの姿から日本へのリスペクトを感じてとても嬉しくなった。

次から次へと、ゲストが到着して、テーブルの上があっという間でご馳走でいっぱいになった。そして、浴衣ではないゲストも結構いて、ちょっと安心した。

美味しそうなご馳走でいっぱい!

みんな寛ぎながら、他愛のない会話を盛り上がっていた。わたしもすっかり楽しんでいて、ふと我に帰ったときにそんな自分にびっくりした。英語で交わされる会話の内容の全部を理解はできないけれど、自分が伝えようとしたことが伝わったことが楽しくて、相手が何か伝えようとしてくれるのが嬉しくて。

気がついたら拙いつたない言葉でも、相手の懐に入って、自分が持てる語彙を総動員して、身振り手振りも交えて、何とか伝えようと必死になっていた。まるで幼い子供のように。そこには恥とか恐れとかもなく、ただ楽しんでいる自分がいることにびっくりした。

あぁ、これってマダムがわたしにくれた最大のギフトなんじゃないだろうか。

マダムはいつも、オープンハートだった。
わたしの目をしっかりと見て、話を聞いてくれた。
わたしが言葉を紡ぎ出すのを待って、けっして遮ることなく、言葉の一つ一つにうなづいていた。心から共感を示しながら聞いてくれているのがわかった。

あぁ、話を聞いてもらうって、受け入れてもらえるって、こんなに愛情深い行為だったのですね。こんなに深い安心と勇気をくれるのですね。

ありがとう、マダム。
大きな愛情と風のような知性で包んでくれるマダムが大好きでした。
次は、フランスで会いましょう。
その時までには、少しでもマダムのような素敵な大人に近づけていたら嬉しいです。

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