三大神経伝達物質
脳内で働く三大神経伝達物質は、ノルアドレナリン、 ドーパミン、 そしてセロトニン。
これらは 脳の重要な諸機能に深く関わっています。
【ストレス対処ホルモン・ノルアドレナリン】
特に現代生活で最も人間の精神状態に影響を与えているのは、ノルアドレナリンでしょう。 なぜなら ストレスに最も敏感に反応する 脳内物質だからです。
脳が、自分にとって 危険だとかヤバいという状態に直面すると、心身を戦闘状態にする。 緊急体制ですね。
ノルアドレナリンはアドレナリンとともに危険から身を守る緊急態勢指令物質として 働く。 だから 眠気とか 食べ物の消化とか、そういったのんびりした働きというか、 いわば不要不急の働きは一旦止めたり押さえたりしておいて、 瞬発力を発揮するための 心臓の活発な活動とか 神経の興奮とかを促して 危険に対処しようとする。
現代生活では危機的な危険は比較的少なくなってはいるかもしれませんが、 人工的な スポーツや 受験などの競争や難しい仕事にあたるに際しては、 文字通り闘争反応が起きる。
感覚が鋭くなり、 集中力が出てくる。 その一方で、 これはとても自分にはかなわないというふうな状況だと判断すれば、 そこから一目散に逃げなければいけない。 逃げる反応、つまり逃走反応が起きる。
この闘争と逃走とは紙一重、状況次第でいずれかに対応しなければならないため、まとめて「闘争/逃走反応」と呼ばれています。
ところが、ストレスの多い生活をしていると、このノルアドレナリンの分泌に異常が起きやすい。
これが過剰に分泌されると、イライラしたり、怒りっぽくなったり、あるいは血液を上昇させたり 糖尿病の原因になったりする。
逆に これが 十分に分泌されないと、 やる気がなくなったり、注意力が低下したり、 無感動・無気力になったり、抑うつ状態になったりしやすい。 そして、そこからうつ病や対人恐怖症などの精神疾患をきたしたりもする。
よくノルアドレナリンやアドレナリンは心身の 精神の働きに対する アクセル に例えられますが、ストレスフルな状況というのはそのアクセルの 働きを 狂わせやすいということですね。
【快感ホルモン・ドーパミン】
ドーパミンというのは ノルアドレナリンの前駆体、 つまりノルアドレナリンはドーパミンが生理的に変化したものですが、その働きは 微妙に違う。
ドーパミンは別名「快感ホルモン」とも呼ばれるように 人間に 欲望・欲求を持たせてくれる ホルモンです。 そして 何かを 達成した時 、快感がもたらされる。
近年このドーパミン不足が パーキンソン病の 原因になっていることが注目されていますが、 広く運動や学習 などの機能が低下する 元にもなる。
その反面、 欲求は あるのにそれが満たされないという 不満・不快感が 続いたりすると、過剰に分泌されやすい。
ギャンブルやアルコール、あるいはニコチンや違法ドラッグなどへの依存症は、 このドーパミンが過剰に分泌される神経回路が脳に定着してしまう病気です。
つまり、依存症によって得られる快感というのは、あくまでも偽物の快感なんですね。
たとえばギャンブルというのは、ごくたま~に勝つことはあっても、負けることの方が圧倒的に多いし、たとえ勝ってもそんな射幸的な快感なんてすぐに消えてしまう。
酒やタバコや違法ドラッグというのも、ほんの 短い間だけの 擬似的な快感に過ぎない。 だから、必ず 不満や不快が不快感が残る。 そうすると、欲求ホルモンとしてのドーパミンがまたドバッと出てくる。
この悪循環がどんどんどんどん膨らんで、そのもとになる刺激物がないと生理的に耐えられなくなってくる。 快楽を求めているつもりでいながら、すでに快楽そのものから見放されている状態ですね。
その意味では、いわゆる病的な依存症だけではなく、金銭欲や名誉欲なども偽物の快感しか得られないということになりがちです。 欲をかいてばかりでは、満足がないし、心身ともに疲労していく一方なので、そもそも意欲が続かない。
そこで、 あまり賢くない人々は、それこそギャンブルや性的な刺激の方に 逃げて、その虚しさをごまかそうとする。
そうすると、必要に駆られてお金を儲けなければならなくなり、詐欺などの経済的犯罪に走りやすくなる。あるいは、雇人なんかにパワハラ言動することで、無理やり自分に<私は偉いんだ!>と思い込ませて、その「名誉」を維持できているかのように自分をごまかさなければならなくなる。
ま、いずれにしても 偽物の快感であるという点では同じことですよね。
だから、たとえそういう 欲望が強くても、ある程度知恵のある人々は、普段からドーパミン系の「偽快楽スパイラル」に陥らないように気をつけている。
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