還暦すぎて関取花にはまるの怪
自分でも不思議なんですよね。なぜ最近こんなに関取花にハマっているのかが、自分で自分に説明できない自分がいるのですよ。
このアルバム、2022年の3月時点で一番新しいアルバムなんですけどね。
そもそも、わたしは中学時代から一貫してほとんど洋楽しか聞いていなかった人間です。洋楽はビートルズから入門しましたが、その後日本ではあまり人気のないプログレバンドとかにハマリ倒して「変態」と陰口たたかれるくらい偏った音楽遍歴をもちます。青春と言われる時代は、オフコースや松任谷由実の全盛期。そのちょっと前は吉田拓郎、井上陽水、かぐや姫、チューリップなどの時代だったわけですが、その時代に一切はやりの邦楽ミュージシャンを聞いてなかったのでした。そんな中で1978年にデビューしたサザンだけは別格で、桑田佳祐によって初めて邦楽ミュージシャンを聴くようになったわけですが、それでもその後ミスチルにハマったかと言ったら、そういうこともなく、相変わらず、9:1くらいで洋楽しか聞かない人だったわけなのです。
そんな自分がどうしても、最近関取花のこのアルバムが、妙に耳について離れないのですよ。
関取花というミュージシャンを最初に知ったのは、数年前、ドライブしてた時に流れていたJ-WAVEのラジオ番組でした。そこにゲストとして出演していたのが彼女だったんです。なんか、珍しい苗字だし、その時のトークがけっこう面白かったので何となく印象に残ったんですね。
そして何かのときにどこかで聞いてへーと思ったのがこの曲。
まだ独身の若い20代の女性ミュージシャンが、こんな歌詞を書くって、いやー、すごいなあと単純にびっくりしたのですよね。
でもこのときは、それ以上彼女の曲を聴くことはなかったのでした。というのも、やっぱり弾き語り系のフォークソングは、けっこう苦手科目なのですよ。自分の人生を通じて聞いてきた曲のほとんど全てがバンド形式のロックミュージックだったので、1曲聴いて「ほう」と思っても、結局自分の好きなカテゴリのミュージシャンだとは思えなかったのですね。藤井風は、初めて聞いた時からかなりぶっ飛んで、「これは天才だ!」と、なって、自分のなかでまさにパラダイムシフトが起きたような衝撃だったのですけど、関取花は、もともと自分の好きなタイプのミュージシャンではないって感じてたわけなんです。
ところが、その後、「新しい花」というアルバムがリリースされて、それをAppleMusicで何の気なしに聞いて、ちょっと震えたのでした。
何より、この1曲目「新しい花」で、完全に心掴まれました。これまでとは違うバンド形式ということでしたが、このバンドサウンドがなかなか心地よいのですよ。これぞバンド。特に自分には、このベーシストがとんでもなく好みで、グッときたのでした。やっぱり、ベースのいいバンドは締まるのですよね。
とにかくアルバムを通して聴いて、すっかり気に入ってしまい、その後ヘビロテとなるのでした。しかし、なぜ自分がこれほどこのアルバムにハマるのかがちょっと自分でもどうにも説明できないのですよ。
歌詞聞いても、基本は若い女性への恋愛応援歌みたいなのが多いわけで、還暦過ぎてこういう歌聞いてると、「パパ活でもやってんじゃないの?」とか、あらぬ誤解を受けそうな気がしたりするわけなんですけど、でもね、イイものはイイ。それに、長年洋楽で鍛えたために、歌詞の意味を全く気にせず歌を聞くことができるのです(笑)。ということは、歌詞以外に、わたしが関取花にハマる理由があるはずだということで考えてみたのですが...
・歌声が森山良子にちょっと似てる
「新しい花」の冒頭、最初に聞いた時、本当に「あれ、森山良子?」と思ったのは事実です。でも、アルバム聴いていくと、彼女は結構いろんな声を持ってるんですよね。それに、昔から森山良子のファンだったということはなくて、森山良子に似てるからハマるということはないんですよね。カレン・カーペンターにちょっと似てる声のイギリス人女性ボーカルにハマったことはあるんですが、森山良子はないんだよなあ(笑)
・バンドがいい
これは間違い無いです。さっきも書きましたが、何よりベースの人がすばらしくいい。とにかく、ベースがいいバンドって、ビートルズじゃないですけど、絶対安心なのですよ。名バンドには名ベーシストあり。このバンドのベースの方、佐久間正英のバンドにいた方のようですが、さすが力ありますねえ。すばらしいです。でも、だからといって、ベースがいいだけで普通こんなにハマらないんですよね。ジャコ・パストリアスはとんでもなくすごいベーシストなんですが、私は苦手だったりします...
・アルバム構成がいいー洋楽みたい??
これも、実はかなり感じてるんですが、関取花って、洋楽をけっこう聴いてる人ではないかと思うのですよ。さらにアルバムの構成と細かい音作りがなんか洋楽の名アルバムのように結構うまく作られてるような感じがするんですよね。これは以前のアルバムでは全く感じなかったSomethingなのですね。このアルバムのプロデューサーとかの仕業のような気もするんですがね。
曲の流れもすごくいいと思うんです。冒頭の「新しい花」から続く「はなればなれ」「恋の穴」という3曲の流れが、なんかすごく気に入ってます。その後、アナログ版だったらきっと「太陽の君に」からがB面ですよね、そこからエンディングに向かっていく「今をください」「スローモーション」「美しい人」あたりの流れもけっこうグッときます。アルバムですから、その間にちょっとそれほど好きじゃない曲が混じっていても、アルバムとはそういうものなんです。それも含めてアルバムの流れなのです。で、このアルバムの流れは、本当によく考えられているというか、作られてると思うんですよね。最近はストリーミング全盛なので、アルバムという形式にこだわらない人も多いのかもしれないのですが、昔ながらのアルバムをきちんと作ってるような印象を受けるのですよね。
でも、こういう理屈をこねても、なぜ自分がこんなにも関取花にというか「新しい花」というアルバムがこんなに深く心に刺さったことに対する、自分を納得させられる適切な理由が見つからないのですよね。ホント。
ということで、なんか訳がわからないのですが、これほど洋楽ばっかり聴きまくってきたジジイをすっかりメロメロにしてしまった関取花さん、とんでもないミュージシャンじゃないかと思うのですよ。ぜひこれからの活躍も期待しています。
まあ、藤井風のときにも思ったのですが、こういう若くて才能のあるミュージシャンに出会ったとき、最近必ず思うのが、彼ら、彼女らが歳を重ねた歌を聴いてみたいということなんですよね。20代でこんな歌詞を書く人が、40になったら、50になったら、60になったら、それまでの人生を重ねたどんな言葉を紡いでくれるのか、どんな曲に乗せてそれを歌ってくれるのかが楽しみなのですよ。
関取花が50歳になると、わたしは81歳かあ...。まあそれくらいまではこの世にしがみついていたいなと思う今日この頃なのであります。