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東洋医学で「神」とは何か
神とは
東洋医学で言う「神」とは、広義では生命活動の総称であり、狭義では精神・意識・思惟活動を意味します。
さらに解説します。生命活動の総称とは、臓腑や生理物質、精神活動の機能が合わさり一つの情報として体に現れることを意味します。顔色や熱、痛みや気分などのことだとイメージしてください。
狭義の精神・意思・思惟活動は五臓六腑の心の機能に該当します。驚いた時や好きな人に出会った時に心臓がドキドキしたり、怒りで動悸がしたり、喜びで胸が膨らむような感覚を得るのは心の作用だとイメージしてください。
神は五神と五志に分けてて考える
神の機能は五神(魂・神・意・魄・志)と五志(怒・喜・思・憂・恐)に大別されます。五神は精神活動を表し、五志は外部からの刺激に対する情動反応を表します。それでは、それぞれの機能を解説します。
五神の魂(こん)
魂は評価・判断などの精神活動を示します。学習することで発展し強化されます。魂は五臓六腑の肝と密接な関係にあります。
五神の神
神は身体活動と精神活動を統率・制御する機能のことです。神は身体の内部環境の調節と、外部環境に対する適応を図ります。神は血と密接な関係にあります。
五神の意
意は思考・推測・注意力・記憶などの精神活動のことです。この機能は脳が気と血によって滋養されることで維持されます。そのため、気と血を作る源である五臓の脾と密接な関係にあります。
五神の魄(はく)
魄は感覚・運動・情志などの精神活動のことです。見る・聞く・嗅ぐ・感じるは魄の機能です。魄の機能は気が全身を巡っていることが不可欠です。そのため気を作り全身を巡らせる肺と密接な関係にあります。
五神の志
志は記憶を維持する精神活動のことです。志は脳と関係があります。また脳は精によって滋養されます。精は腎に貯蔵されます。よって志は腎と密接な関係にあります。
五志の怒(ど)
怒り=怒(ど)は気を上昇させます。五臓の肝は気の影響を受けやすいです。また肝は気を上へ上げる作用があります。肝の機能が過剰になると怒りやすくなったり、せっかちだったり、慌ただしくなったりします。
五志の喜
喜は喜ぶという情動のことです。これは気を緩ませる働きがあります。また、臓腑が失調し気が緩むと喜が出やすくなります。臓腑の中で心は常に動き続けて血を全身に送り出しています。そのため心は適度に緩んでいる状態が良いのです。しかし、喜びすぎると気が緩みすぎ血をうまく送り出せなくなります。その結果、神が滋養されず精神のコントロールができなくなります。
五志の思
思は、思う・考えるという情動です。思は気を鬱結させる働きがあります。また、臓腑が失調すると気が鬱結し、思がでやすくなります。五臓六腑の脾は中に固めるという気を持っています。そのため思慮過度になると脾が失調し食欲不振などが起こります。また脾が失調すると些細なことで考え込むなどの症状が現れます。
五志の憂
憂は憂う・心配する・不安になるという情動です。これも気を鬱滞させます。過度の憂は肝・心・肺に影響を与えます。特に肺は気が鬱しやすいです。
五志(七情)の悲
悲は悲しむという情動です。悲しむと気を消耗します。悲は憂いや思慮過度を伴うことが多いです。悲は肺に影響を与えます。泣いた時にヒックヒックとしゃくるような呼吸になるのはそのためです。また、肺が失調すると憂いや悲しみといった情動が出やすくなります。
五志の恐
恐は恐れるという情動です。恐は気を降下させます。恐は五臓六腑の腎に影響を与えます。強い恐怖を感じて腰が抜けてしまうのは、恐によって腎が不調になったからです。腎は腰部に位置し、腎の気が降下しすぎて腰に力が入らなくなるためです。また腎が失調すると些細なことを恐れたり、オドオドしたりします。
五志(七情)の驚
驚(きょう)は驚くという情動です。驚は気を乱します。驚くと腎に影響します。驚くと失禁してしまうのはこのためです。また、五臓では肝・心・胆と関連があり、これらの臓器は腎から十分な気を得ることによって機能を発揮できます。驚により腎からの気が不十分になると動悸、失禁、ひきつけなどが起こります。
神と気・血・津液・精の関係
神は気・血・津液と密接な関係にあります。気は神の統率・制御を受けて正常に機能します。神の機能は脳が機能することで発揮できます。脳に血が不足すると神の失調が起こります。津液も血と同様です。精は脳を満たすことで神の機能を維持します。
このように神は気・血・津液・精と密接な関係があります。
神が失調するとどうなる
神が失調すると意識の混濁、行動や情動に異常が現れます。著しい場合は暴力的な衝動に駆られたり行動の一貫性を失ったりします。あるいは、ぼんやりする状態になります。
五志の魂・魄が失調するとどうなる
魂の失調はイライラする、怒りっぽくなる、思い悩む、オドオドする、びくびくするなどが現れます。
魄の失調は視覚障害、難聴、味覚が鈍くなる、皮膚感覚が鈍くなるなどが起こります。また、幻覚、幻聴も魄の失調で起こります。
五志の意・志が失調するとどうなる
意の失調は思考がまとまらない、順序立てて話ができないなどが起こります。
志の失調は物忘れ、物事をやり遂げられない、目的を持った行動が取れないなどが起こります。
この章のまとめ(ここを読めばだいたい解る)
・神は広義の神と狭義の神がある。広義の神は人体の臓腑・生理物質・精神活動が統合された情報として表面に現れたもの。これは鍼灸師が患者の病態を把握する時に役立つ。狭義の神は五臓の心に属しており、臓腑や生理物質に直接影響を与えます。
・神の機能は五神(魂・神・意・魄・志)と五志(怒・喜・思・憂・恐)に分けられる
・魂は肝、神は心、意は脾、魄は肺、志は腎と関係がある
・怒は肝、喜は心、思は脾、憂は肺、恐は腎と関係がある
・神は生理物質と密接な関係がある
・神が失調すると心身の統率・制御ができなくなったり、情動や感覚の異常が起こったりする
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