CURLY FLATS FARMの黒豚はじめ
はじめての黒豚
CURLY FLATS FARMの動物たちを語るときには欠かせない、誇り高き黒豚、バークシャー。
その肉質・脂質の良さで有名なこの黒豚は、縁あって由緒正しい黒豚生産農場からここにやってきた4頭の種豚からなる一族です。
もっと細かくいうと、かつて北海道内の数件の黒豚生産農場が共同でバークシャー本場のイギリスから種豚を輸入したことがありました。
わたしたちの黒豚はその流れ、ブリティッシュ・バークシャーの血筋です。
この4頭の黒豚がはじめてここ日高のCURLY FLATS FARMにやってきたのが2018年の春のことです。
由緒正しい黒豚生産農場は、もう齢90を迎えた老夫婦によって長年丁寧に運営されており、4頭の黒豚は引退を決心したご主人から譲り受けた、それはそれは貴重な豚です。
彼らは慣行方式で畜舎の中でそれぞれ数頭にわかれて生活しておりました。1頭の雄と3頭の姉妹豚は別々の房に暮らしていましたが、幸い檻の格子ごしに互いを見ていたためか、CURLY FLATS FARMに到着後もお互い声を掛け合うなど仲の良い様子でした。
新しい世界
4頭の黒豚は大きな放牧地に面した部屋にそれぞれ雄・雌わかれて住むことになりました。
わたしたちも大きな黒豚が始めは怖く、まだ彼らのことを理解していなかったので、世話も参考書やネットを見ながら日々手探りではじまったのです。
そして数週間後、ある晴れた日に彼らはついに放牧地へ解放となりました。
畜舎の中で生きてきたこの豚たちにとって、どこへ行っても良いということは驚くべき事態だったと思います。
怖がりの末妹Roku chanは、姉たち(Nana chan と Doesn't chan)が出ていくまでなかなか出る勇気がありませんでした。
彼女たちは、風の音、鳩、目に入るもの全てに飛び上がり、走り回り、匂いを嗅いで調べて、草を食べ、とにかく好奇心と嬉しさを全身で目いっぱい表して初日の数時間はあっという間に過ぎました。
彼女たちの夫となるPig Sushiは、扉越しに女の子たちがどんな経験をしたのかすでに知っていたのでしょう。
翌日、自ら扉を開けて外に出てきました。
(扉は実は外から鍵が開けられていました。おそらく、メスたちが鼻で開けたのだと思います。)
Sushi は、広い放牧地を隅々まで調べて一周し、オーナーのMr Pajamaのもとに戻ってくると、興奮気味に鼻をならし、唇をとがらせてしきりに訴えかけてきました。
まるで、彼がいま体験した世界をオーナーに全て話して聞かせているようでした。
これが、このファームでの黒豚の始まりです。
そして、この彼らのこの上ない喜び、これが私たちがここの豚たちに経験して欲しいと願っていることです。(たとえその先に待っている運命をわかっていたとしても)
Pig Sushi と3姉妹はこのあと、ファームのペット豚であるScar chan 始め多くの立派な子供たち誕生させてくれました。
豚は鼻であちこちを掘り返し、泥浴びをし、よく食べてぐっすり眠ります。
コンクリートの床や金属製のスノコの上ではできないことをここではいくらかでもできるようにしたいと思っています。
とはいえ、何事もそう簡単には行きません。
その話はまた別の機会に。