「サプライズ」 善方基晴
一時期、フラッシュモブの動画を見ることに没頭していた。
フラッシュモブのようなものはテレビなどで見たことがあったが、何かのネタにされているだけで実際にそれを見ることはなかなかできない。
本当にこれを本気でやっている人たちがいるのか、いるとしたらどのような雰囲気で行われているか、本物のフラッシュモブはどのようなものか見てみたくなり見始めてみると、続々と多様な形態のフラッシュモブの動画を見る羽目になってしまった。
まず実際に、動画の中でフラッシュモブを本気でやっている人がたくさんいた。動画の画質なども含めて平成の催し物といった雰囲気が醸し出されている。
フラッシュモブを仕掛ける人は男性が多く、最後にプロポーズするのがお決まりの流れで、中にはフラッシュモブに協力するだけだと思っていた女性が実はプロポーズを受ける側の人だったというサプライズ、つまりフラッシュモブをフリにしたフラッシュモブというものもあった。
広めのカフェやお祭りの会場で突如として良い感じの洋楽が流れる。
店員を装っていた人が物を置いてターゲットの前で踊り始め、徐々に周囲のそれまで全く関係の無さそうにしていた清掃員やサラリーマン、子どもまでもが一斉にダンスの輪に加わる。
そしてターゲットの前に座っていた人も踊りだし、最後に指輪を差し出す。受ける側の人は最初驚きつつも、段々と涙をこぼし始める。
フラッシュモブを受ける人は、自分一人のために十数人が踊っている時間が苦痛に感じる瞬間はないのだろうか。
もし自分だったらと思うと、いくら自分の好きな人が踊っているからといって自分だけに向けられるその時間は苦痛極まりないはずだ。
そもそも自分の好きな人が全力で踊っているところは見たくない人が多いと思う。自分の好きな子が体育の授業で足が速すぎても、遅くてもどちらもなんとなく嫌だった自分の身勝手すぎるあの感覚を思い出してしまいそうになる。
そして、フラッシュモブは意外と長い。
サプライズが行われていると気づいてから、プロポーズに至るまで一体いくつの表情を準備しなければいけないのか、受ける側の負担もかなり大きいはずだ。
そんなことを言いながらも、YouTubeのおすすめ欄がフラッシュモブの動画で埋め尽くされている僕はいつまでも見てしまう。
おそらくこの世界のサプライズの中で異質でありかつ、自分から最も遠い種類のサプライズだろうと思いながら。
善方基晴