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「おふろ」 善方基晴

 

 かっこいい歌詞を見つけました。

 
想像ができる 
ひとりで居ること
2日目の湯船も透き通っているんだろう

(あいみょん ノット・オーケー)

 
 湯船にたまったお湯の透明度から、自分が「ひとり」であることを自覚してしまう情景の説得力が凄まじくかっこいい。
 
 ひとりで生活している未来を想像できてしまうことを表す言葉として、「2日目の湯船も透き通っているんだろう」という歌詞は具体的な生活感を伴いながら、そこに哀しみと諦めのような感情が入り混じっていて、胸に刺さった。
 
 
 僕は子どもの頃から、お風呂に入るのは家族の中で一番か二番で常に湯船のお湯はきれいだった。

外で遊んで帰ってきたらまず風呂に入れと言われたし、部活をやるようになってからも帰ってきたら、お風呂に直行していた。少しずつ学年が上がるにつれて、部活を引退し塾に行くようになって家に帰ってくるのが遅くなったりすると、確かに湯船は濁っていた。

 
湯船の中で、すり傷はお湯にしみることを知り、湯船の中で、屁をすると気泡が浮き上がってくることを知り、湯船の中で、自分の足がお湯に浸かると太く見えることを知った。

湯船の中に頭を全部突っ込むと周りの音がよく聞こえなくなり、水中の感覚を知ったのも家の風呂だったと思う。
 
 
そんな記憶が僕の中には確かにあって、それを引っ張り出してくれたこの歌詞が僕は好きだ。

 
 
 もし、ひとりでいることを意識させられる瞬間が湯船の透明度以外にあるとしたらどんな歌詞がいいだろう。

 
想像ができる 
ひとりで居ること
2日目のカレーも同じ味なんだろう
 
想像ができる 
ひとりで居ること
2日目のスニーカーに誰も気づいてくれないだろう
 
想像ができる 
ひとりで居ること
2日前の夕飯もまだ残っているんだろう
 
想像ができる 
ひとりで居ること
2日後の予定も透き通っているんだろう

 
 
 先ほど、お風呂で髪の毛を洗おうとしたとき、さっきも洗ったような気がしてきて不安になり、自分が頭を洗ったかどうか思い出せなくなっている自分に怖くなるという平凡な恐怖を味わいました。


善方基晴


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