「ポケット」 モサク
夜中、僕は公園でダンスをしている。
最近できた芝生がとても綺麗で、様々な体力向上器具が設置してある公園ではなく、砂場全面にネットが貼られ、変なイラストの注意書きがたくさん貼られている誰もこない公園でダンスをしている。
はじめて人に言った。僕が夜中の公園でダンスしていることを。はずかしい。
ダンスといっても区民センターの壁ガラスに向かって、爆音でスピーカーから音楽を流し、体全身を使って、警備員が注意できないダンスではない。
僕のダンスは限りなく上半身の力を抜いて、腕をぶらぶらさせる。その状態でイヤホンから中島みゆきや小田和正のバラードを爆音で流す。
その音に合わせて、浮遊するのだ。これがすごい気持ちいい。
はじめて人に言った。はずかしい。
その際にポケットがあってよかったといつも思う。僕は携帯とタバコを常に持ち歩いているのだが、かばんを背負っている僕はきっとダンスをしない。
ポケットがあるから、身軽になれるし、安心感もあるし、すべてを直感的に感じることができる。
これからはそんなポケットにもっとなんでも詰め込んでしまおうと思っちゃってる。
だるいこととか放り投げたいこととかぐちゃぐちゃにしたいこととか。
そして、今よりも身軽になって、上半身ぶらぶらでダンスしよう。そうすればもっと浮遊できる。
夜中、また僕は誰もいない公園でダンスをしていた。中島みゆきから小田和正に曲を変えようとしたその一瞬の無音のときに茂みの音がガサガサと鳴った。
ぱっと振り返るとそこにはハクビシンがいた。
僕は追いかけたのだが、ハクビシンは塀を軽々しく乗り越えていった。
飛びたい!
1000タコ モサク
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