シラーと黒コショウについて【ソムリエ・ワインエキスパート試験】
シラーの黒コショウの香りが分からないという相談を受けることがしばしばあるのでまとめてみます。
一言で分からないといっても原因はいくつかあるので問題を細分化しましょう。大きく分けて以下の4つに分類できると思います。
ロタンドンを知覚できない
黒コショウの香りが少ないワインを飲んでいる
果実香など他の香りに邪魔される
スパイシーと黒コショウを混同している
1.ロタンドンを知覚できない
そもそもシラーの黒コショウの香りはロタンドンという化学物質によるもので、他の品種だとグリューナー・ヴェルトリーナー等に多く含まれています。
そして約20%の人がこのロタンドンを感知できないとされています。
そういった体質の方は仕方ないです。シラーのワイナリーや優秀なソムリエにも感じ取れない人はいますし、黒コショウが取れなくてもシラーを判別することは可能です。
逆に言えば約8割の人はロタンドンを感知できるはずなので、体質的に取れないのかそれとも他に理由があるのかはよく考える必要があります。
たまに黒コショウそのものを嗅いで香りが分かるから私はロタンドンが分かるはずと言う人がいますが、黒コショウにはワインに含まれるロタンドンの1万倍のロタンドンが含まれているため、あまり関係ないと思います。
また閾値は人によって異なり、Aというワインでは黒コショウが取れるけどBのワインでは取れないということもあるでしょう。
2.黒コショウの香りが少ないワインを飲んでいる
2と3の理由は近いのですが、そもそも黒コショウの香りが少ないワインで必死に黒コショウを探しても中々難しいです。
ロタンドンは冷涼な地域のシラーで増えることが知られています。
つまりオーストラリアの15%を超えるようなシラーズでは黒コショウの香りは少ないことが多いです。(無いわけではないです)
勉強用としてはまずローヌのシラーを飲みましょう。
ここで重要なのは、黒コショウの勉強だけなら、サン・ジョゼフなどの安価なシラーの方が分かりやすいということです。
よく試験で出るワインは3000円~5000円と言われますが、そのレベルだとそれなりに果実の凝縮感があり、花などの香りがする場合もあります。そういったワインは複雑で単に黒コショウの香りを取ることが難しくなります。もっとシンプルなワインで良いです。
3.果実香など他の香りに邪魔される
これは前述したことに近いです。
クオリティの高いシラーでは果実香など他の香りも強いため、黒コショウが取りにくいことがあります。
対策として、シンプルなワインで勉強することとテイスティングフォームを固めることが大事ですね。私は果物、花、植物、スパイス、その他のような順番で香りを探しています。結構後の方に感じる、見つかるイメージです。
4.スパイシーと黒コショウを混同している
黒コショウやナツメグ、クローブ、コリアンダーなどを全てスパイス、スパイシーと一括りにまとめてしまう人は意外と見かけます。
特にシラーとカベルネを間違えている人はこの可能性があるのではないでしょうか。
試験で出るレベルのローヌのシラーは新樽の比率が低いことが多く、樽香は分かりにくいです。一方、カベルネには分かりやすい樽香が存在することがほとんどです。
スパイスっぽい香りがシラーの品種特性(黒コショウ)なのか、カベルネの樽香(ナツメグ、クローブ)なのかしっかり区別できるようにしたいですね。
そのためにスパイスをそれぞれ購入して嗅ぎましょう。どれもスーパーで買えるはずです。黒コショウは挽いてあるものではなくホールの方が、ワインにおける黒コショウの香りに近いです。結構印象が変わると思います。
どの香りにも言えますが、名前を聞いて香りをイメージできるようにしましょう。誰でもレモンの香りや桃の香り、コーヒーの香りはイメージできると思います。ではカシスの香り、スミレの香り、クローブの香りはどうですか?
発音できない英単語が聞き取れないのと同じように、知らない香りは感じ取れません。
闇雲にたくさんのワインを飲むより、表現に使う香りを理解することに重きを置いた方が効率が良いと思います。
それではまた。
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