政権の支持率について
岸田首相が退陣を表明されました。約1000日間の政権運営の間、総理大臣としての責務を果たすのは大変だったと思います。お疲れ様でした。今般の退陣表明は、政権への支持率が低下し、国民からの支持と信頼を失ったことを受けてだろうと解釈しています。
政権の支持率とは、マスコミが実施しているアンケート調査のことだと思うのですが、政権への支持や信頼とは、行政機関としての岸田内閣に対するものでしょうか、それとも、自民党に対する支持や信頼なのでしょうか?
最近の支持率低下の原因は、政治と金をめぐる自民党議員の政治手法への批判がメインではないか、と感じています。政治献金の不透明な取り扱い、情報開示の不十分さなどへの非難が強く影響しているのだと思います。
ただ、この問題は今に始まったことではなく、自民党は何十年もの間、ずっと継続、繰り返したきたことです。したがって、岸田首相の責任というより、自民党という政党が抱えている問題です。岸田総裁だけでなく、菅さんや安倍さんが総裁をしていた頃から、あるいはもっと前から実施されていたことです。前からわかっていた、あるいは知られていたことなのに、それが何故、突然注目されたのか、理解に苦しんでいるところです。
理由は不明ながら、国民は自民党の抱える政治と金をめぐる問題に怒りを覚え、それが支持と信頼の低下につながったようです。つまり、岸田内閣への不信というより、自民党政治への信頼低下、ということでしょう。
それでは、岸田首相が実施してきた政策についての支持率、国民の評価はどうなのでしょうか?これが今ひとつはっきりしません。岸田さんは自民党の総裁という立場と内閣総理大臣という2つの立場を持っています。同一人物が行政のトップと与党政党のトップを兼任しています。このため、岸田さんへの批判には、行政に対する政策の批判と与党政党(自民党)への批判が混在します。テレビのニュースで取り上げられる国会討論を見ていても、野党が指摘する批判には、政策への批判と自民党への批判が混ざっているように思えます。このことが政治の理解を難しくしています。国会の討論が、政策論争の場なのか、政党同士の足の引っ張り合いなのか、よくわかりません。
日本の政治システムが、与党の総裁=内閣総理大臣という構造になっているから生じるのかもしれませんが、本来、内閣の政策への評価(行政の評価)と、国会議員の活動への評価(立法の評価)及び与党(自民党)の運営のあり方への評価は分けて考えるべきだと思います。2つの異なる問題を混在させて議論すると、何を批判しているのかわからなくなります。その意味で、政権支持率のアンケート調査結果はどのような評価(批判)を反映しているのか、わかりにくいと感じます。
これから自民党総裁選びが始まります。ここで、自民党が国民に人気のある総裁を選んで、国民受けする政策を発表したとします。そのようにして刷新感を出した後、新内閣のアンケート調査をすると、期待感から、何となく政権への不満が解消され、支持率が上がるのではないでしょうか。それを受けて、新しい自民党総裁が衆議院を解散して衆議院選挙を実施します。きっと自民党が勝利するでしょう。
政権へのアンケート調査が行政の政策に対する評価なのか与党政治(議員活動)への評価なのか、はっきりしないので、首相が交代して内閣が刷新されると、与党政治の(政治と金をめぐる不透明な)手法が何ら変化せずとも、政権の支持率が上がる可能性は高いです。それにより、自民党は従来通りの手法を継続し、政治と金をめぐる不透明さは何ら解決されません。
国民の側としては、不透明なアンケート調査結果に惑わされることなく、行政の政策への評価と議員活動への評価を切り分けて検討する必要があります。近い将来実施されるであろう、衆議院選挙の投票時には、新内閣の目新しさに惑わされないようにしましょう。また、総裁選の結果や衆議院選挙の結果がどうであれ、今後も各議員が金の問題も含め、どのような政治活動をしているのか、その点を注視していくことが重要です。そうしなければ、自民党の体質(あるいは政治家の体質)は永遠に変わらないでしょう。