「嫉妬」という感情
嫉妬という感情は厄介だ。
距離が遠ければ「あこがれ」になり、近ければ「嫉妬」になる。
「嫉妬」は自分が持っているものを奪われる不安や恐怖から生まれる。
例えば、
①自分の兄弟姉妹に、両親からの愛情を独り占めされるのではないかという不安。
②自分より魅力的な人物にパートナーを取られるのではないかという不安。
③自分より優秀な同僚に自分のポジションや狙っているポジションを取られるのではないかという不安。
俯瞰的にみると、生きのびるために必要な感情だから備わっているのだということがわかる。
野生動物で例えると、
苦労してやっと捕獲した獲物をハイエナに狙われ、「脅威」を感じている状態だろうか。
獲物を奪われないためにどのような行動を起こすべきかを考えるために必要な感情だ。
そしてその敵が身近であればあるほど、奪われる可能性が高いので嫉妬心が強くなる。
この嫉妬心は、うまくコントロールできないとエスカレートしてしまう。
自分のポジションや大切なものを奪われないために、攻撃性を発揮してまう人がいる。
陰口を言って相手の評判を落としたり、いじめ、パワハラ、モラハラなどで攻撃するのだ。
本人も自分の嫉妬心に気がつかずにやっていることがある。
そして時に事件に発展することもある。
嫉妬する側の苦しみも理解はできるが、
もしこのようなことをされた場合、嫉妬される側はたまったもんじゃない。
何も悪いことをしていないのに、攻撃を受けることになる。
ではこの厄介な「嫉妬心」をどのようにコントロールすればよいのだろうか。
ミシガン大学の精神医学教授、心理学教授、研究教授を歴任された、アリゾナ州立大学生命科学部のランドルフ・M・ネシー教授によると、
「嫉妬心」は遺伝子に利益をもたらすように形成されていると言う。
嫉妬深い人間であれば、パートナーを奪う可能性のある相手を威嚇・攻撃すすることで、浮気などをされる可能性が低くなる。つまり、自分の遺伝子をより多く残すために、「嫉妬心」が強く働いているのだそうだ。
「嫉妬」を強く感じた時、この感情を無理に消そうとすることは難しく、苦しい。
そんな時は、自分は奪われるのが怖いのだ、不安なんだと、自分の心を理解し、「遺伝子を残すという、自分の本能が働いてしまっているだけだ」と、この感情を受け入れることで、自分の中の脅威のサイレンを落ち着かせることができるのではないだろうか。
「嫉妬心」を上手にコントロールしていくことで、人生は格段に生きやすくなる。
そして、嫉妬から生まれる多くの問題を解決することができる。
また、「嫉妬心」は自分の現在の欲望を知るのにも役に立つ。
自分がどういうものや人に嫉妬するかを観察すれば、自分が今何が欲しくて、どんな人になりたいのかも見えてくる。
「嫉妬」という感情とうまく付き合い、プラスに活用していきたいものだ。