お姫様ラッコ #毎週ショートショートnote
この国の王子は家来を困らせてばかり。かくれんぼしたら出てこないし、肖像画に落書きするし。だからいたずら王子と呼ばれてるって、漁師たちが言ってた。
どんな子なのかなって思ってたけど、私が見た王子は想像と違ってた。だって舟べりでそっと泣いてたから。
波間にいる私に気がついて、彼は優しく手招きしてくれた。
「ちびラッコよ聞いておくれ。父母は忙しく周囲は家来だけ。本当は寂しいんだ。おまえ友達になってくれるかい?」
それから彼が船を出すたびに私は傍で遊んだ。人間とラッコだけれど、親友になったの。
月日が経ち彼は精悍な若者になった。街の娘達はみんな彼に夢中。もちろん私も! ……でも私はラッコ。
想い募った私は、海の魔女に頼んで人間に変えてもらったの。
魔女は私に忠告した。「もしもお姫様抱っこされたら、ラッコに戻ってしまうよ」
城に勤めるとすぐ、彼は私を見初めた。「艶やかな瞳が親友に似てる」って。だって私だもの! でもそれは言えない。
私たちはあっという間に熱々の恋仲になった。だけどお姫様抱っこには注意したわ。
或る日ついに彼が求婚してくれたの! はいと頷き幸せに酔ってたら、体がふわりと浮いた。
ああなんてこと! 喜んだ彼にお姫様抱っこされてしまったのだ……!
彼の腕の上には、ラッコになった私。
彼は驚きで、私は絶望で、声も出ない。
本当の姿を見られた私は彼から逃れようとした。
でも彼は私を強く抱きしめて、こう言ってくれたの。
「君がラッコでも構わない。だって僕は、いたずラッコだから」
了
※抱っこからおりたら人間に戻ったそうですw めでたしめでたし。
毎ショ初挑戦のひと月が終了しました。
毎回すったもんだで、410字の超遠いこと(;'∀') 今回もストーリーを考えたら絶対410字では収まらないモノになり、も~途中から開き直りました。しかもこんなオチで(;'∀')
皆さんの作品を読んで、来月こそ目指せ400字台、頑張ります(=゚ω゚)ノ
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