「あき伽耶」とは? みなさん、はじめまして! あき伽耶(カヤ)と申します。 2022年にふと手にしたライトノベルから、大人になってすっかり疎遠になっていた読書沼が再燃。 と同時に、物語を書いてみたい! と無謀にも思うようになってしまい、WEBサイトで書き始めて今に至ります。 投稿サイトにもそれぞれカラーがあることに気がつき、noteの雰囲気もいいなぁとコチラにやってきました(^^) さっそく名刺代わりにと、短い作品を二つ投稿しました。 童話から大人向けの作品まで幅広く書い
(約2800字) 花冷えの朝。 店の窓の向こうで、満開を過ぎて散り始めた桜が、それでもなお美しい姿をとどめて風に揺れていた。 皺だらけの両手にミトンをはめて、私はオーブンを開いた。熱気の奥に並ぶパンは、今日もふっくらと焼けて美味しそうだ。若い頃は、大きな鉄板に沢山のパンを乗せて軽々と出し入れしたものだ。でも、もうそんなことはできない。広い鉄板にちんまりと乗ったパンをひとつずつ網へと移した。 三十代にして逝った夫のパン屋を残そうと、五十余年も毎日のようにパンを焼い
(約2900字) 6がつ6にち ボクのおうちにね、まっ白いベッドがやってきた。 でもボクがねるには、ちいさいなあ。 びょういんから、やっとかえってきたおかあさんが、だっこしていた赤ちゃんを白いベッドにねかせたよ。 「たっくんはね、おにいちゃんになったんだもんね」と、おかあさん。 うん。 でも、おにいちゃんて、なにするのかな。 「名前はメリちゃんだぞ。ほら、かわいいだろ?」と、おとうさん。 メリちゃん? ようちえんのおともだちと、おんなじだ。 「かわいがってあげる
(約6400字) 「よーい、ピッ!」 先生の笛の音が鳴って、ぼくたちはいっせいにかけだす。 一緒に走る友達三人の背中はどんどん小さくなっちゃって、いつものとおり、ぼくだけおいてけぼり。 毎年毎年、もうやってらんないよ、こんなこと。 ぼくのヤル気はゼロ。 本気になんかこれっぽっちもなれなくて、へろへろと走って最後にゴールしたぼくに、先生がさけぶ。 「カケル君、4位! 4位の旗に並ぶんだぞ!」 順位、わざわざ言わなくてもわかってるし! 余計なこと言わなくていいんだよ! 心