久々に勤めた病院は奇妙な職場だった〜‼️院長、そんな説明じゃ納得出来ません❗️

第18話　寸志減額理由？

　次の日、私は院長に面談を申し出た。
　「寸志の事でお聞きしたいのですが」
　単刀直入に聞きたい。

　「ああ~、今回は昨年より売り上げが下がったからスタッフ全員下げたんだよ」
　澄まし顔で嘘をつく院長。
　
　？？？
　

　「お言葉ですが、五千円という気になる金額でしたので、パートの何人かに聞きましたら皆さん一万円以上頂いていることが分かりました。」
「何故私の寸志は皆より少ないのか？　理由を教えていただきたいです」

　すると院長はこう答えた。

　「今期の売上が下がったのは事実だ、それで何がいけなかったのか考えてみたら、皆のやる気が下がっているのが原因じゃないかと思った。」
　「アミコさんも含めてもっと頑張って欲しい。」
　「だから責任ある立場の人のボーナスを全員下げたんだ」
　「イケメン君なんか大幅に下げているんだよ」

　「……」
　イケメン課長のボーナスも下がったのだから私に我慢しろと？

　

　「私は責任ある立場ではないですよね？」
　「パートですし、雇用保険さえも入れていただいていない弱者です。」
　「それなのに、責任だけは大きいのですか？」

　　社員ならともかくパートの私が売上下がった責任を取らされるなんておかしな話だ！
　　しかもパートで寸志減額されたのは私とヤンキーさんだけなのだから……🤔

　　「受付はクリニックの顔だから、売上下がった責任はあると思っている」　　
　　今思いついたような言い訳をする院長。

　「……」

　「それでは同じ受付のシズカさんが一万円なのは何故ですか？」
　

　すると院長は観念したようにこう説明し始めた。

　「セッカチさんを大切にして欲しいと頼んだよね？　」
    「最初の頃は大切にして受付を盛り上げていたけれど、後半は彼女に沢山仕事を押し付けていた。」
　「その分アミコさんの仕事は減っているので仕事量が少なくなった分を下げたんだ」

　なんというこじつけなの⁉
　

　「セッカチさんだけ仕事を多くはしていませんし、私の仕事量も減っていません。」
　「最初は何も出来ない状態だったので、早く仕事を覚えてもらうために役割は与えませんでした。」
　「でもだいぶ仕事が出来るようになり、社員でもあるので、本来やるべき仕事を平等に分けただけです。」
　「それにセッカチさんを盛り上げていないとか、仕事を押し付けているとか何を見て判断されているのですか？　」

　こう言っている間にも、沸々と怒りが込み上げてくる😤

　「セッカチさんの言葉や自分の目で見て確認した部分で判断した」
　小声で答える院長。

　　セッカチさんの言葉で判断した？

　　あんなに彼女に合わせてきたのに？

　　セッカチさんにまで裏切られた気分になった。

　　私の顔がみるみる曇るのを感じたからか急に院長はこんな提案をしてきた。
　「寸志の額を決める時、アミコさんがセッカチさんばかり仕事をさせている様に見えたから五千円にしたけれど、今の話しを聞いて納得したから、一万円に戻そうか？」

　ハア〜？　😱😱😱
  一度出した寸志を戻すと？

　その後、私の寸志をどのようにしようか？考える。
　「現金で五千円渡そうか？」
　「それとも……」
　おとぼけ顔でつらつらと語る院長。

　「……」
　開いた口が塞がらないとはこういう事を言うんだな😲
　段々、五千円ポッチでこんな話し合いをしている自分が情けなくなる。

　いや金額ではない！心の問題だ！

　院長にとっては軽い事かもしれないが、真面目に働いている私にとってはあんな事を言われたら、尚更馬鹿にされているようでやりきれない。

　私の態度が問題だと思っているなら、改善すべき点を伝えて本人の自覚を促してから寸志を下げても遅くはないのでは？　

　それが、これまでクリニックのために頑張って働いて来たスタッフに対しての思いやりではないの？

　こっそり下げておいて説明を求められたら嘘つくなんて……。

　言葉にならない空しい感情がこみ上げてくる。

　暫く院長の話を聞いていたが、これ以上話を聞いていても納得のいく答えはもらえないとわかり私の心は決まった。

　「そういうお考えは、受け入れる事ができませんので、今後の事考えさせていただきます」
　辞める事を示唆して退散しようとした。

　すると院長は慌てたように立ち上がった。

　「ちょっと待って、考えるって辞めるって事？」

　「……」
　
　「確かにこちらの判断不足で嫌な思いをさせてしまったが、私は誰に対してもこういう事をする人間だから、寸志の事は深く考えないでいい」

　貴方は深く考えないで良くても、やられた方はたまったもんじゃないです。

　　どうやら、思いつきで「アミコさんは寸志五千円でいいや」と簡単に考えていたようだ。

　人の心は院長が考えるほど単純ではない。

　いくら雇われ身だからといっても理不尽な事をされては働く気がなくなる。

　その後どういう話の流れからそうなったか覚えていないが院長の口から衝撃の言葉が出てくる。

　「いつも思うのは、ここを離れた人が不幸になっているんじゃないかと心配なんだ。」
　「私は、人を幸せに出来る力を持っている。」　

　「……」

　　それはここを辞めると不幸になるという脅しですか⁈

　　今、私は全然幸せじゃないんですけど！！

　　それどころか、どんどん不幸になっている気がするのは気のせいかしら……？

　後でわかったことだが、院長の“幸せ論”は退職をほのめかす人にはしていて、ここでは有名な話だったようだ。

　
　家に帰ると、久しぶりに早帰りしていた主人が待ち構えていた。

「院長と話したの？　なんだって？」

　私は今日の面談の内容を細かく主人に話して聞かせた。
　「どう思う？」

　「……」
　「ほんとに院長がそんな事言ったの？」
　信じられないと言うように驚く彼。

　「ほんともほんと話し盛ってないわよ」
寧ろもっと変な事を言われていたように思うが、話の後半は頭に入ってこなかった。

　「それじゃ～辞めちゃいなよ」

　珍しく私の見方をしてくれた。

　よし！　

　もうこんなクリニックは辞めよう！！

独り言
院長と面談して数日経った頃、私はセッカチさんから声をかけられた。
「院長と寸志のことで話したでしょう？」
「院長はあの時急いでいたと言っていたけれど、アミコさんが気分悪くなるような変な事言わなかった？」
不安そうに私の顔を覗き込む。

「うん、言ってたかな」
呆れるほど変な言葉をね。

「院長は口下手だから誤解が生じるの。」
「だから私が従業員との橋渡しをしているのよ」
「院長に言う前に私に相談してください」

　貴方の橋渡のせいで私はこんな扱いをされていると思うんですけど？
　
　彼女は続ける
「私がアミコさんの活躍を上手く伝えられなかったからこんなことになってしまったんだと思うの」
「これからはもっとアミコさんを褒めておくわ」

　ありがとう～。
　宜しくね～。
　笑顔で答える。


　ひとこと言わせて！


　馬鹿にしているんかい💢