【書評】プロフェッショナルマネージャー
タイトル:プロフェッショナルマネージャー 58四半期連続増益の男
著者:ハロルド・ジェニーン
(元ITT最高経営責任者)
出版社:プレジデント社
出版年:2004年第一刷、2012年第二十七刷
ページ数:339ページ
プロフェッショナルマネージャーという本を読みました。1960年代、アメリカのITTという会社の社長であったハロルド・ジェニーン氏の話です。ITTは通信会社であり、M&Aを通じて世界的なコングロマリット企業へと成長しました。副タイトルにもあるように58四半期=14〜15年間増益を達成した男です。
ファーストリテイリングの柳井さんが本書の附録および前書きを寄稿しています。柳井さんはこの本を読んで「自身の経営について改めさせられた」とおっしゃっています。当時の柳井さんはすでにユニクロを数店舗経営しており、それなりに成功されていました。ですが、この本を読んで、自身の経営はぜんぜん甘かったのだと気づかされたようです。
この本を読んで、世界一の企業になるという目標を立て、経営に一層のスイッチが入ったそうです。
本書ではハロルド・ジェニーン氏の生い立ち含め、経営に関する事柄を語っています。
時代は1960年代でありますので、現代とは感覚が違うことも多々あるかと思いました。現在はが残業規制や働き方改革の影響で、激しく働くということにだいぶ制限がかかっています。その点は差し引きながら読み進めるべきかと思います。
例えば、経営者やマネージャーは業績を出すために何でもやれ(=長時間労働も厭わない、休みもない)くらいのことを書いていますが、今ではなかなか難しいのではないでしょうか。特にマネージャークラスは、部下の休みも考えながら仕事をしなければなりません。
机に関しても、今はフリーアドレスの導入や情報セキュリティの観点からペーパーレスやクリーンデスクが浸透しています。ジェニーン氏によると、机の上は必要な情報をすぐ取り出せるように散らかっているのが当たり前だと。
時代の違いを多少は感じますが、それでも経営に関する本質は変わりません。
各章のタイトルがほぼジェニーン氏の伝えたいことになっています。
第一章:経営に関するセオリーG
第二章:経営の秘訣
第三章:経験と金銭的報酬
第四章:二つの組織
第五章:経営者の条件
第六章:リーダーシップ
第七章:エグゼクティブの机
第八章:最悪の病 ーエゴチズム
第九章:数字が意味するもの
第十章:買収と成長
第十一章:企業家精神
第十二章:取締役会
この長い文章に対して、柳井さんがとても分かりやすく後書きを書いてくださっています。
柳井さんの後書きのタイトルです。
「創意」と「結果」7つの法則
一、経営の秘訣
まず目標を設定し「逆算」せよ
二、部下の報告
「5つの事実」をどう見分けるか
三、リーダーシップ
現場と「緊張感のある対等関係」をつくれ
四、意思決定
ロジカルシンキングの限界を知れ
五、部下指導法
「オレオレ社員」の台頭を許すな
六、数字把握力
データの背後にあるものを読み解け
七、後継ぎ育成法
「社員FC制度」が究極の形だ
最後の社員FC制度のみ実現していないような感じがしますが、他は実践されているのだろうと思います。
柳井さんはまとめ方が分かりやすくて、面白いですね。「オレオレ社員」の台頭を許すなって、キャッチーな言葉ですよね。
私が印象に残った3点をまとめると下記です。
・経営者もマネージャーも結果を出すためにハードワークをする。経営者は部下任せにしないで、ものごとの詳細まで把握する。
(第七章:エグゼクティブの机)
マネージャーは、担当者と比較すると詳細を把握することが難しい立場にあります。それでもヒアリングを通して詳細まで把握しようとする姿勢が大切です。
・自己中心的な考えに陥らない、自己中心的な振る舞いや行動はつつしむ。アルコール依存症よりもひどい病である。
(第八章:最悪の病 エゴチズム)
経営者やマネージャーだと大きな権力を持つので、自分の意見を通したり、自身がしたいことをしたりと、やりたい放題できてしまう場合があります。それは慎まないと会社や事業の衰退を招いてしまいます。
・経営はサッカーに例えることができる。監督は、戦術やポジショニング、セオリーや技術を選手に教えることができる。しかし、ひとたび試合が始まると、個別具体のアクションに対しては指示することができない。例えば、「シュートしろ」などという指示は、その場で選手が判断することである。経営も同じく、各マネージャーの一挙手一投足を経営者が指示することができない。マネージャーの判断力、マネジメント力を元に、各自がその場で最適な判断をすることが大切である。
なるほどー、さすが柳井さんの例えがうまいと思いました。うまくいく組織って柳井さんのおっしゃるような組織だと思います。
翻訳が読みにくく、話も冗長なので挫折しそうになりますが、普遍的な経営の本質を学びたい方はご一読ください。