外務大臣会見記録 2023年11月20日(月)
11時13分 於:本省会見室
冒頭発言
辻󠄀外務副大臣及び岩田経済産業副大臣のウクライナ訪問
【上川外務大臣】
私から、1件ございます。
本日、辻󠄀外務副大臣及び岩田経済産業副大臣は、日本企業関係者と共に、ウクライナを訪問しています。
我が国は、他のG7諸国と共に、ウクライナの人々に寄り添い、強力なウクライナ支援に取り組んできています。
3月の岸田総理のウクライナ訪問、9月の林前外務大臣の訪問の際、更には9月の国連総会において、私がクレーバ外相とお会いした際にも、ウクライナの復旧・復興に向けての我が国の支援について、ウクライナ側に伝えてきたところであります。
さらに、先日のG7外相会合でも、私から、クレーバ外務大臣に対しまして、直接、こうした姿勢に変わりないことや、中長期的な復旧・復興のために、官民一体となって取組を加速させていくことをお伝えいたしました。
こうした流れを受けて行われる今回の訪問は、ウクライナの復旧・復興に関心の高い複数の日本企業の参加を得た経済ミッションとして実施されるものであります。
ウクライナでは、キーウにおいて、シュミハリ首相とウクライナ政府関係者との間で、復旧・復興に関する取組を中心に意見交換を実施するほか、企業間の提携を推進すべく、ウクライナの企業関係者との間で意見交換を実施します。
来年2月19日には、東京にて、「日・ウクライナ経済復興推進会議」を開催予定です。
今回の経済ミッションを通じて、対ウクライナ支援に係る官民一体の取組を更に進め、未来の会議の成功につなげられることを期待しております。
私からは以上です。
イスラエル・パレスチナ情勢
イスラエル軍による難民キャンプ攻撃
【共同通信 桂田記者】
中東情勢について伺います。
イスラエル軍は、ガザ北部のジャバリア難民キャンプを空爆し、国連が運営する学校が被害に遭い、多数の死傷者が出ています。
他にも住民が避難する学校への攻撃が相次ぎましたが、受け止めをお聞かせください。
大臣は、これまで、軍事行動においては、民間人の被害を防ぐべく、実施可能な、あらゆる措置を講じる必要があると訴えてこられていますが、イスラエル軍は、民間人被害を最小限にする努力しているとお考えでしょうか。
【上川外務大臣】
まず、御質問の、イスラエル軍による難民キャンプにおける軍事作戦についてのお尋ねがございました。
御指摘の報道は、承知をしているところでございます。
今般の難民キャンプに対するイスラエル軍の空爆により、子供、女性、高齢者を含む多くの死傷者が発生していると承知しており、大変に心を痛めております。
本事案を含めまして、ガザ地区における人道状況の悪化を深刻に懸念している状況でございます。
また、続きまして、イスラエル軍の民間人被害を最小限にする努力についてお尋ねがございました。
個別具体的な事情を十分把握しているわけではないことから、民間人への被害を最小限にするためのイスラエル軍の取組について、日本政府として、評価を行うことは差し控えさせていただきますが、その上で、これまで繰り返し述べているとおり、全ての当事者が、国際人道法を含む国際法を遵守しなければならない。
また、実際の軍事行動において、民間人の被害を防ぐべく、実施可能なあらゆる措置を講じる必要がある。
また、学校や病院における民間人の被害を防ぐ必要があることは、当然であると考えております。
これまでも、私自身、イスラエルに対しまして、一般市民の保護の重要性、国際人道法を含む国際法に従った対応等を要請してきているところであります。
引き続き、全ての当事者に、国際人道法を含む国際法の遵守を求めつつ、関係国・関係機関との間で意思疎通を行い、先般、早急に児童を含む人道状況の、更なる悪化を防ぐため、我が国も賛成いたしました安保理決議も踏まえた上で、人道状況の改善と事態の早期沈静化等に向けた外交努力を、粘り強く積極的に続けてまいる所存でございます。
5日間の戦闘休止・人質解放
【NHK 五十嵐記者】
中東情勢の関連で伺います。
米国のメディアは、18日、イスラエルとイスラム組織ハマスが、米国の仲介による交渉で、5日間の戦闘の休止と引換えに、ガザ地区で人質となっている数十人を解放することで、暫定的に合意したと伝えました。
日本政府としての受け止めや、今後の対応について伺います。
【上川外務大臣】
御指摘の報道については承知しているところでございます。
実際に、今、人質が解放される、このことを期待しております。
一方、イスラエル軍の発表等によりますと、依然として、多くの方がハマス等によって、人質とされております。
我が国といたしましては、ハマス等によるテロ攻撃は、断固として非難しつつ、人質の即時解放と、一般市民の安全確保等を一貫して求めてまいりました。
引き続き、刻一刻と現地情勢は動いている状況でございますので、関係国・国際機関等との間で意思疎通を行い、人質の即時解放、人道状況の改善、事態の沈静化等に向けました外交努力を、粘り強く積極的に重ねてまいりたいと考えております。
日本の外交的措置
【アナドル通信社 メルジャン・フルカン記者】
イスラエルによるがガザ攻撃は、7週目に入りました。
国際社会では、ガザが、原爆ほぼ2発分に相当する空爆を受けたことが注目されています。
これらの攻撃により、1万2,000人以上の罪のない民間人が命を落としました。
国民の主張にも関わらず、日本政府は、罪のない民間人に対するイスラエルの攻撃を、強く非難することを差し控えているという観察がございます。
イスラエルは、日本を含む多くの国の、国際人道法の遵守の呼びかけを、どの程度考慮していると思いますか。
危機を解決するために、日本がとれる外交的手段はあるのでしょうか。
お願いします。
【上川外務大臣】
我が国は、全ての当事者が国際法に従って行動することを一貫して求めてきており、イスラエルに対しても、これまで、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難する旨を伝えた上で、人道的休止が必要であること、国際人道法を含む国際法に従った対応等を要請してきております。
先般のG7外相会合におきましても、このガザ地区における人道危機に対処するための緊急の行動をとる必要があること、食料、水、医療、燃料、シェルター及び人道支援従事者のアクセスを含む、妨害されない人道支援を可能とすること、特に、人道支援を容易にするための人道的休止及び人道回廊を支持することなどで一致したところであります。
こうしたG7外相会合の成果について、11月14日は、出張先の米国サンフランシスコにおきまして、今般の事態への対応において重要な役割を果たしているエジプト及びヨルダンの外相と、それぞれ電話会談を行い、G7外相会合での議論を紹介しつつ、今後も連携していくことで一致をしたところであります。
先般採択されました安保理決議では、我が国は理事国の一員として、その採択に向けて、様々な外交努力を行ったところであり、本決議の採択を歓迎いたしております。
全ての当事者が、本決議に基づき、誠実に行動することを求めます。
引き続き、刻一刻と現地情勢は動いております。
G7メンバーを含む各国・国際機関等との間で、しっかりと意思疎通を行い、人道状況の改善や事態の早期沈静化等に向けた外交努力を粘り強く積極的に続けてまいる所存でございます。
日本の対応等
【ディプロマット誌 シリパラ記者】
ガザ地区の闘争についてお伺いします。
沈静化させるため、日本政府は、どのような具体的な措置を講じていますでしょうか。
【上川外務大臣】
我が国は、このハマス等によるテロ攻撃を断固として非難した上で、人質の即時解放・一般市民の安全確保、全ての当事者が国際法に従って行動すること、事態の早期沈静化、これを一貫して求めてきております。
各国とのやり取りの具体的な内容について明らかにすることは差し控えさせていただきますが、例えば、イスラエルに対しましては、私自身、先般のイスラエル訪問の機会を含めまして、一般市民の保護の重要性、国際人道法を含む国際法に従った対応等を直接要請してきているところであります。
また、先般のG7外相会合におきまして、ガザ地区における人道危機に対処するための緊急の行動をとる必要がある点も含め、今般の事態に関する一致したメッセージを文書の形でまとめ上げることができました。
この成果も踏まえ、エジプトやヨルダンといった地域諸国とも、緊密に意思疎通をし、事態の早期沈静化等に向けて連携を確認しているところでありまして、今後もこうした外交努力を積極的に行ってまいる所存でございます。
中東情勢
紅海における日本郵船運航貨物船の拿捕
【日本経済新聞 根本記者】
中東情勢でお伺いします。
紅海で日本企業が運航する貨物船が、乗っ取られる事案が発生しました。
外務省として把握している事実関係と、対応について教えてください。
また、イエメンのイスラム武装組織フーシーは、イスラエルが関係する船舶、今後も攻撃すると示唆しています。
日本企業の活動にリスクとなるわけですが、現地情勢の認識と今後の外交方針について教えてください。
【上川外務大臣】
まず、今般の事案につきまして、事実関係、邦人被害と、今後の対応についてのお尋ねがございました。
昨日19日、日本郵船が運航するバハマ籍自動車運搬船「Galaxy Leader(ギャラクシー・リーダー)」が、紅海のイエメン沖を南下中に、フーシー派の勢力に拿捕されたとの報告を受けているところであります。
船員に日本人は含まれていないとの報告を受けております。
政府としては、このような行為を断固非難するものであり、現在、国交省等の関係省庁とともに、情報収集を進めつつ、関係国と連携しながら、当該船舶及び船員の早期解放のため、取り組んでいるところでございます。
また、イスラエルとも意思疎通を図りつつ、当事者であるフーシー派への直接の働きかけに加え、サウジ・オマーン・イラン等の関係国に対して、フーシー派に対して、船舶及び船員の早期釈放を強く求めるよう働きかけを行っております。
状況の推移を踏まえながら、政府として、引き続き、関係国とも連携をしつつ、必要な対応を行っていく考えであります。
続きまして、現地情勢の認識と今後の外交方針について、ということでお尋ねがございました。外務省といたしましても、中東地域全体の情勢につきまして、緊張感をもって注視しております。
日本企業の活動や邦人保護に一層万全を期してまいりたいと考えております。
APEC首脳宣言
【読売新聞 工藤記者】
先日大臣がご出席されましたAPECに関連してお伺いたします。
APEC首脳宣言では、WTO改革へ関与していくことが盛り込まれた一方で、ウクライナやガザへの言及は見送られました。
首脳宣言の全体に対する大臣の御所感をお聞かせください。
【上川外務大臣】
APEC首脳宣言につきましては、APEC地域の持続可能で包摂的な発展、及び成長に向けて、ルールに基づく、自由で開かれた貿易投資環境の維持や、来年の第13回WTO閣僚会合に向けた建設的な取組を確認したほか、デジタル経済の促進、脱炭素化に向けたクリーンエネルギーへの移行、食料安全保障、女性の経済への包摂、データ流通促進のための協力等が盛り込まれたところであります。
これら日本が重視する事項が盛り込まれたことは、重要な成果であったと考えております。
ウクライナ情勢やガザ情勢については、米国から別途議長声明が発出されたところでありますが、これはAPECメンバーによる議論を踏まえたものであります。
一部の地域情勢について、メンバーの間に立場の違いがあることは事実でありますが、メンバーの間で一致している立場も少なくないところ、このような状況を適切に反映した議長声明が発出されたと評価しております。
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