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外務大臣会見記録 2023年11月28日(火)

17時41分 於:本省会見室

冒頭発言: 韓国・釜山での書店訪問、漢字・活字文化

【上川外務大臣】
私から一点ございます。

先日、私は、韓国・釜山で、日中韓外相会議に出席しましたが、その際に現地の書店を訪れ、書籍を購入いたしました。
外務大臣就任後、これまで6か国で、現地の書店を訪れ、文化や歴史に関する書籍を購入いたしました。

私は、これまで活字議連のメンバーとして、各地の活字文化に触れて参りましたが、こうした書店訪問を、今後の外交活動にも役立てていきたいと考えております。

特に、日中韓は、漢字文化を共有しています。
同じ漢字の読み方が、3か国で似ていたり、逆に、同じ漢字の単語でも、意味が異なっていたりすることに気付くことは、その背景にある文化や歴史に触れる良いきっかけになります。

また、日本の漫画も立派な活字文化であります。
外国訪問のたびに、日本の漫画の人気の高さに驚かされるところでありますが、特に、各国の若者たちの日本の漫画への熱意につきましては、現地に行って初めて肌で実感することができました。

ある国で、どのような本が読まれているか、これを知ることは、その国の文化や価値観を理解するきっかけになると考えております。
今後も、可能な範囲で、世界各地の書店訪問を続けたいと思います。

私からは以上です。


イスラエル・パレスチナ情勢: 戦闘休止延長

【NHK 加藤記者】
イスラエル・パレスチナ情勢について伺います。

イスラエルとイスラエル組織ハマスの仲介になっているカタール政府は、27日、パレスチナのガザ地区での戦闘休止を2日間延長することで合意したと発表しました。

新たな合意が守られれば、戦闘の休止は、少なくとも29日まで延長されることになりますが、大臣の受け止めと、今後の対応について伺います。

【上川外務大臣】
ガザ地区におきましては、これまで連日、多数の子供たち、また、女性たち、高齢者を含む死傷者が発生しておりまして、我が国といたしましては、こうした危機的な人道状況を深刻な懸念をもって注視をしているところであります。

そうした中、11月22日に発表されましたイスラエル、ハマス間の合意に基づきまして、日本時間24日から4回にわたり人質の解放が実施され、また、カタール政府による最新の発表によりますと、戦闘休止の2日間の延長がなされると承知をしており、これを歓迎をいたします。

我が国は、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難した上で、人質の即時解放・一般市民の安全確保、すべての当事者が国際法に従って行動すること、そして、事態の早期沈静化、を一貫して求めてきたところでございます。

今後の情勢の推移は、予断を許さないものではございますが、我が国といたしましては、引き続き、関係国・関係機関との間で、しっかりと意思疎通を行いつつ、全ての当事者に、国際人道法を含む国際法の遵守や、先般、我が国も賛成して採択をされました安保理決議に基づき、誠実に行動することを求めながら、人道状況の改善及びそれに資する、更に長期にわたる人道的休止の維持、事態の早期沈静化に向けた外交努力を粘り強く積極的に行ってまいります。


核兵器禁止条約締約国会合

【共同通信 桂田記者】
核兵器禁止条約第2回締約国会議について伺います。
会議が採択を目指す政治宣言の草案では、核抑止論への固執が、核軍縮の進展を阻害しているとして、脱却を呼びかける内容となっています。
日本は、米国の核の傘に依存していますが、改めて、核なき世界に向けた道筋についてのお考えをお聞かせください。

【上川外務大臣】
御指摘の核兵器禁止条約締約国会合におきまして、政治宣言案の採択が目指されているとの報道は承知しておりますが、我が国は、本件締約国会合に参加しておらず、同会合でのやり取りの逐一を承知しているものではないことから、コメントにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。

その上で、一般論として申し上げれば、現在、ロシアによる核兵器の威嚇や、北朝鮮の核・ミサイル開発などにより、我が国を取り巻く安全保障環境は、依然として厳しいものがございます。
こうした中、国民の生命・財産を守り抜くため、現実を直視し、国の安全保障を確保しつつ、同時に、現実を「核兵器のない世界」という理想に近づけていくべく取り組むことは、決して矛盾するものではないと考えております。

「核兵器のない世界」に向けまして、政府としては、引き続き、核軍縮に関するG7首脳広島ビジョンを強固なステップ台としつつ、ヒロシマ・アクション・プランの下での取組を一つ一つ実行していくことで、現実的かつ実践的な取組を継続・強化してまいりたいと考えております。


釜山での書店訪問

【読売新聞 工藤記者】
先ほど、大臣の冒頭発言でありました、書店巡りについてお伺いします。
韓国の方でも、書籍をご購入されたということですが、もし、差し支えがなければ、どういった本をご購入されたのか、また、これまで買われた本で、もし、既にお読みになったものがあれば、ご感想も合わせてお伺いできればと思います。

【上川外務大臣】
今回、釜山の書店で購入したのは、邦題で「82年生まれ、キム・ジヨン」という書籍であります。

韓国社会が大きく変動する80年代前半に生まれた女性を主人公とし、女性を取り巻く韓国社会の変遷や困難、差別を描写して、ミリオンセラーを記録した書籍であるということで、これから読むことを楽しみにしております。

ハングルの文字の書籍でありましたので、日本語の書籍も買いたいと思っております。

今後とも、こうした書店訪問や、また、そこで出会った様々な書籍を通じまして、各国の文化や価値観への理解を深めるとともに、「女性、平和、安全保障」、いわゆるWPSを始めとする多様な外交活動に役立てていきたいと考えております。

たくさん買わせていただいて来ましたけれども、女性の活躍しているブルネイで求めました、あれは結構楽しみで、私のロール・モデルでもあるな、という思いで、いろいろな分野で活躍していらっしゃる女性たちということで、非常に、お一人お一人のパーソナリティもよく分かって、そして、大変面白く触れさせていただいております。

どの本も、大変思いを持って買わせていただきましたし、また、書店の中では、店員さんが、非常によく案内していただきまして、私のニーズに応えるべく推薦をしていただいたりしてきたものでありますので、1冊1冊を大事にしてまいりたいと思います。


ユネスコ「世界の記憶」事業登録申請

【中国新聞 樋口記者】
外務省が、先ほど、ユネスコの世界記憶遺産に、広島市や弊社など5社の報道機関が共同申請した、広島原爆の視覚的資料を推薦すると発表されました。
推薦に至った理由と、今後、正式な登録に向けてどういったことをされていくのか、あと、どういった被爆の惨状を伝える写真とか映像なんですけれども、どういった点に価値があるというふうに考えているのかというのを伺えますか。

【上川外務大臣】
本日28日でありますが、政府として2件、1件目は、まさにご紹介いただきました「広島原爆の視覚的資料-1945年の写真と映像」及び、2点目として「増上寺が所蔵する三種の仏教聖典叢書」、この2件でありますが、ユネスコ「世界の記録」事業への登録申請をすることを決定をいたしました。

このうち、ご指摘の「広島原爆の視覚的資料-1945年の写真と映像」は、1945年8月6日に、広島に原子爆弾が投下されてから、同年12月末までの間に、被災した市民や、また、報道カメラマンによって撮影された写真と映像でありまして、大変貴重な記録資料であります。

いずれの案件につきましても、「世界の記憶」に登録されるのに相応しいものであると認識しております。
外務省といたしましても、関係省庁と連携をしながら、政府一丸となって、2025年の登録に向けて、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

【中国新聞 樋口記者】
追加で1問だけ、被爆者は非常に高齢化していまして、こういった被爆直後の惨状というのを伝える資料の重要性というのは高まっていると思うんですけれども、そういった点について、何か大臣、思いがあれば、一言お願いできますでしょうか。

【上川外務大臣】
こうした広島原爆関連の資料そのものを、体系的に残していくということについては、まさに、その当時体験した方々が、様々な混乱の中で、亡くなられた方もいらっしゃる、また二世、三世の方もいらっしゃるという状況の中で、毎年記念式典も開かれながら、平和の大切さについて誓い合うと、こうしたことの大きな要素になっているところであります。

その意味で、これを「世界の記憶」として残すことについては、これは極めて重要なことだと認識しております。
こうした機会を捉えて、必死になって記録を残された方々の思いも込めて、現実を、1人でも多くの方に知っていただくべく、努力をしてまいりたいと思っております。


ウクライナ情勢

IWJ 濱本記者】
ウクライナ情勢について質問します。
岸田総理は、ゼレンスキー大統領に対し、欧米でも敗色が濃厚という見方が出ているにも関わらず、ウクライナへの揺るぎない支援を表明しています。
ですが、これは、ウクライナ人に無駄な血を流させ、日本国民の税金も無駄に投げ捨てるものではないでしょうか。
また、ウクライナが提唱する10項目の和平案も実現不可能であり、停戦する気がないことは明らかです。
いずれ、どこかで戦争は終わりますし、戦後の日露関係の再構築を考えると、ロシアに対して、我が国が我が国の「敵国」として、強く印象付けることは、得策だとは言えません。
あくまでも、中立的かつ現実的な和平案を日本自らが示し、ウクライナ、ロシア、欧米を説得すべきではないでしょうか。

【上川外務大臣】
まず、我が国の基本的立場でありますが、ロシアによるウクライナ侵略は、国際社会が長きにわたる懸命な努力と、多くの犠牲の上に築き上げてきた、国際秩序の根幹を揺るがす、暴挙であると考えております。

ウクライナ和平につきましては、ロシアは、ウクライナに対する攻撃を現在も続けております。
プーチン大統領は、併合したウクライナの一部地域は、交渉の対象ではないとの趣旨の発言を繰り返すなど、ロシアが和平に向けて、歩み寄ろうとする兆しは、一切見られません。

この状況は、当事者であるウクライナの考え方から、大きく離れたものでもございます。

このような状況におきまして、日本がまず行うべきことは、一日も早くロシアの侵略を止めるとの目標に向かって、G7をはじめ、国際社会と、緊密に連携をしながら、対露制裁とウクライナ支援を強力に推進していくことであると考えております。

この点、8日のG7外相会合におきまして、議長の私といたしましては、中東情勢の緊張度が増す中にありましても、対ウクライナ支援において、G7は、引き続き、結束すべき旨を訴えました。
その結果、G7として、厳しい対露制裁や、また強力なウクライナ支援に取り組む姿勢は不変、との認識で一致することができました。
引き続き、ウクライナに公正かつ永続的な平和を実現すべく、G7議長国として、リーダーシップを発揮してまいりたいと考えております。

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