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掌編小説「youth」

今日から3日間、僕たちは家には帰らない。

学校にもいかない

スマホの電源も切って

僕たちだけの世界を生きる

親たちはなんていうんだろうな、
必要以上に騒いで警察沙汰にならなければいいけど、
そのためにみんなで家に書き置きをおいて出ることにしている。

まあ、そんなことどうでもいいや

街はずれにある廃工場に僕たちは3日間だけ住む。
僕はこの3日間自分ではない自分になるんだ。
真っ白で、何者でもない自分

これをやろうと言ってくれたやつは
なんでこんなことをやろうと思ったんだろう。
聞いてみたいような、聴きたくないような、そんな気がする。

僕たちはみんな同い年で、偶然同じ学校の同じクラスで、
偶然仲良くなった。
この偶然の重なりからくる友達だからか、
僕の感じていることや悩みに共感してくれそうだし、
僕もみんなの頭の中にあるものに共感できそうな気がしている。
よくそんなことを話すわけではないけど、そんな気がする。

でも、他人だから許せないところもあるかもしれない。
それもわかってるけど僕らは心が通じ合ってる気がする。

僕が廃工場についた時、まだ誰もいなかった。
下見の時に一度きて、工場内をみて回ったが、
やっぱりもう一度見てもワクワクが止まらない。
相変わらず、部屋が多くて広い工場だ。
今はまだ日が落ちてないから大丈夫かもしれないけど、
日が落ちてから迷子になってしまったら、
明かりを持っていたとしても一人ではとてもいられないだろう。
これから僕はここで心通じ合ってる親友たちと3日間過ごすんだ。
下見の時に決めた集合場所にいき、何もない広い部屋の中央に横になった。
床のコンクリートのひんやりとした感触を感じながら
目をつぶって今からの3日間どんなことが起こるのか、
考えを巡らしていたらいつの間にか眠ってしまっていたらしい。

「おーい、起きろー おいこいつ本当に寝てるぞ」
「マジで?おーーい!起きろーーー!
「!!??!?」
「あ、起きた」
「もうみんな揃ったぞ」
「夜はまだまだこれからだぞ!」
「お前はテンション上がりすぎ」
「だって楽しみなんだもん!」
「みんなちゃんと家に置き手紙してきたな」
「警察が探し出したら大変だ」
「まあ、別にそうなったらそうなったで、ね、」
「まあね」
「なんでもいいよ」

「それじゃ、今から3日間、俺たちは家にも帰らず、学校にもいかずに受験の事とかいろんな悩みがみんなあると思うけどそれも全部忘れて、楽しもう!」

みんながそれぞれの方法で喜んでいた。
やっぱりそうだ、みんなも今あることから解放される時間が欲しかったんだな。

3日間の廃工場生活は成功し、みんながそれぞれの場所に帰って行った。
楽しかったな。
褒められたことではないけど、大切な時間になったな。
みんな帰ったらなんて言われたかな。

僕はもう少し僕のお気に入りの河川敷でゆっくりしてから帰ろ。

はぁ、帰らないとな、

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