#23 まさか私が乳がん検診を受けるとは
私は、毎年乳がん検診を受けています。
それは、2019年に母が末期の乳がんで亡くなったからです。
乳がんは実の娘に遺伝する可能性のある病気と言われています。
私は、実母が死に行く姿を病室で夜通し見守り、実家で看取りました。
その恐ろしさを目の当たりにして以来、少しでも気持ちを落ち着けるために検診を受けています。
昔、私にとって「がん」はとても遠い世界の話でした。
テレビやスマホの中の、遠い世界。
「私、がんやから」
と母が亡くなる1年前に突然言いました。
ただ、母はもともと感情的に動く人だったし、本音を話すような相手でもなかったので、私は完全に聞き流しました。
それっきり母もそのことを口にすることはなかったので、「あれは何だったんだろう」くらいに思っていました。
そんな2019年4月下旬、金曜日の昼中に実家から不在着信がありました。
私はフルタイムで平日は仕事をしているので、その時間に電話を取ることはできません。
両親もそのことは重々知っているはずです。
不思議に思って折り返しをかけると、兄から
「母さんがどうなるかわからない。帰ってこれるか。」
と言われました。
「あ、本当だったんだ」
不思議と冷静に受け入れました。
詳しい病状も帰省した時は聞いていないし、聞かれもしなかったので。
(冷酷かもしれませんが、母と私は昔からうまくいっていませんでした。)
後から聞いた話ですが、父は母を何度も説得し、娘の私に告知をしようとしたそうです。
ですが、母がかたくなに拒否し続けたそうです。
乳がんという遺伝性のあるがんにかかったことを、血縁関係のある娘に言うのが嫌だったのか。
一人で頑張って働く娘に負担をかけたくなかったのか。
強い母であり続けようとしたのか。
本音を父にも話していなかったそうで、本当のところはわかりません。
ただ、配偶者を亡くした父の、棺の傍らに葬式前夜に寄り添う背中は強く目に焼き付きました。
それ以来、私は毎年乳がん検診を受けています。
毎年、自分はまだ大丈夫、言い聞かせるように。
病気や死を目の当たりにした人は、自分の人生が有限であることを認識し、自分の生き方を深く考えるようになる。
最近読んだ本に書いてありました。
私もそう思います。
乳がんによる母の死と、自分の適応障害発症を受け、私は自分の人生を、後悔のないよう生きていきたいと強く思うようになりました。
同世代よりも早い段階での決心でしたが、それが私の人生だと思い、今は前向きに考えることができています。
去年は要精密検査になりましたが、その後無事が確認されました。
今年は異常を認めない、と結果が先週届いてとても安心しています。
周りに同じ経験をしている人は少ないですが、テーマを見てnoteに書いてみることにしました。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。