花火

ちょっと長いものがたりをつくっていて
「寸劇部」というものをつくり
活動する少年少女のものがたりなんだけど
これはその一部なんです。
昨日これのモデルの花火大会を見に行ったので
なんか載せたくなってしまった…

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北浜浦花火大会は毎年八月一日に開催されます。
月曜日でも水曜日でも八月一日です。
お仕事する人になって、忙しい人になったら見に行けるかしら。
ねえ、ホコラの言い伝え。知ってる?
あのバス停のそばにあるホコラの中。見たことありますか?

(母親風の女性。割烹着をハンガーにかけている。外に出る。
時間と空間が移動した様子。バス停のそばに立っている。
小さなホコラがある。
気がつけばセーラー服の少女がいる)
「お母さんも花火大会?すごい。
お父さんと?待ち合わせ?デートみたいだね。
人いっぱいだよ。会えるといいな」
(いつのまにか母親はいなくなり、少女が一人で喋っている)

(Gパン姿の女子高校生。既に砂浜にたどり着いている。
友人たちに断って、バス停のほうに戻ってきた様子。
小さなホコラがある。
気がつけばセーラー服の少女がいる)
「編美ちゃん。ねえ、花火なのにまたGパン?
うん。砂浜に座るのはわかってるけど。
今年も加賀谷くん来るんでしょ。今年こそ云おうよ。
うん。去年精一杯の来年も行こうねは覚えてるよ。
叶ってるじゃない。じゃあまた来年も行こうねって。だめだよ」
(いつのまにか女子高校生はいなくなり、少女が一人で喋っている)

(会社員風の女性。事務服をハンガーにかけている。時間を気にして慌てている。
時間と空間が移動した様子。バス停につく。花火の音は賑やか。
小さなホコラがある。
気がつけばセーラー服の少女がいる)
「雪ちゃん。お仕事終わりましたか。
六時に仕事を終えて、六時半の特急に乗って、
全部全部走って、駅で待ってた私にきいたね。
何飲む?って。雪ちゃんはいつもあったかいお茶を飲む。
でもあの花火の日には云ったね。一口ちょうだい。
ペットボトルの冷たいミルクティ。
そして云うの。ねえなんで夏にこんな甘いものを飲むの?
ねえ、夏には透き通ったものを飲もうよ。
今日雪ちゃんは、ジンジャエール選んだ。
冷たくて透き通ったものを一生懸命さがしてた」
(少女の姿が消える。
アロハシャツにダボパンで会社鞄を持った女性。
神妙な顔つきでジンジャエールを飲み干す)

北浜浦花火大会は毎年八月一日に開催されます。
この町にそんなに高いビルはないから、どこからでも見えるよ。
数歩歩けば。きっと。
でも、行かなくちゃ。近くまで行かなくちゃ。
北浜浦臨時停留所の隣にある小さなホコラ。
ううん、いつも小さなホコラの隣にバス停をつくるの。
八月一日。花火の日。
このホコラを開ければ、貴方が今一番会いたい人に会えます。
ねえ。花火の日を変えないでね。
土曜日がいいって云っても変えないでね。
だって、貴方の一番会いたい人が時間迷子になっちゃうかもしれないから。

(会社員風の女性と浴衣姿の少女)
「ああ~ユリ、遅いよ。おおっ浴衣かわいいねえ。てかワタシでよかったの。おばちゃんで」
「うん、ママが行ってきなさいって。雪ちゃんが一番安心みたい」
「友だちは?」
「編美ちゃん?今年はね。ついに一緒に行く人ができたんです。やっとだよ。二年越しの告白だよ」
「去年はユリがホームステイでいなかったから、さみしかったよ」
「でも行ったんでしょ」
「うん。会社ある日は大変だよ。都会から戻らなきゃいけないから」
「一人で行ったの?」
「いや~さすがに。高校んときの部活の後輩と行ったの。昔ね。北浜の花火行ったことがないって云ったらすご~く驚かれたの。それでね。行く人がいないときは一緒に行ったげるって前に云ってて。思い出して」
「その子のほうがよかったんじゃないの」
「ユリがいちばんですよ」
「ありがと」
「いや、それでね。その子が教えてくれたの。ホコラの言い伝え」
「ホコラの言い伝え?」
「うん」
「あ…あのホコラ開けたの?」
「開けたよ」
「ええ~」
「まあ、ありゃうかつに開けるもんじゃないな」
「ホントに見えるの?あれ、ホントなの?」
「ねえ、ユリ何が飲みたい?私はあったかい緑茶飲むけど。冷たいの一口ちょうだいね」

最後の北浜大瀑布が始まるよ。砂浜へ急げ!

(花火の音)

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去年は母にスマホでyoutubeの実況を見せてあげました。
今年は一周忌でみんな来てたから、
弟と甥っ子と見に行ったよ。
そして花火大会の日にちは
数年前に変わってしまったのでした。

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