谷川俊太郎さんがなくなった 高校のとき 図書館で『二十億光年の孤独』をノートに書き写した 「えへん私は歩いている」 だ バレンタイン 友人に『手紙』とガーナの板チョコを 本屋さんの袋にいれてプレゼントした 『手紙』が好きなのだ 初夏には「あなた」の冒頭の 「あなたは私の好きなひと あなたの着るものが変って いつか夏の来ているのを知った」 を思い出す 毎年だ 不謹慎で申し訳ないけれど 詩人で唯一訃報が一面に載る人だと思っていた 辻征夫さんがなくなったとき 朝日新聞一段で
cater HEARTBREAKER Daydreambeliever Catcherintherye 能動でも受動でも、 erで何かになることができるのなら、 私は猫したい。猫する人になる。 チャコールの、もけもけの、ターコイズの瞳のキミの母は、 私のママが奮闘した桜猫化作戦から逃げ果せ、 桜耳の母親、妹、キミと再会した後、 忽然といなくなった。 キジトラ界のナンバーワン美女のキミの祖母は、 紫陽花の葉陰でこときれているのを私に見つけられ、 今はころころと実の落ちる
ちょっと長いものがたりをつくっていて 「寸劇部」というものをつくり 活動する少年少女のものがたりなんだけど これはその一部なんです。 昨日これのモデルの花火大会を見に行ったので なんか載せたくなってしまった… ----------------------------------------------------------------------------------- 北浜浦花火大会は毎年八月一日に開催されます。 月曜日でも水曜日でも八月一日です。 お仕事する人にな
オレンジ、(了)です。 傍らでちまちまと描いたらくがきたち (ほやほやもいつ描いたかわかんないのも) …と、いろいろです。 オレンジ オレンジ ①トモコ ②ミフユ やさしいくま ①やさしいくま ④プリンか何か
オレンジネムリヒメ ③アマガエル トランプを広げた様ならせんを描く鉄製の階段をカンカンと響かせてガレージに降りると、会社と公道の境界線に放物線の天辺の様につま先をあてて少女がしゃがんでいた。コーデュロイの、モスグリーンの、ハイウエストのワンピース。「すごいね」彼女は云った。「ああこれ」水上バイクか。小さな頭を包み込むようなショートヘア。見上げる瞳は黒目がちだが、白目の部分は青く透き通るようだ。なんだろう。アマガエルの精かな。 「動かないんだ」 「動かないの」 「うん。廃
オレンジネムリヒメ ③teenageeve 病室の壁に寄せられた四本足の丸椅子を体全部を使って抱えて、理比ちゃんの眠る枕元まで運ぶ。どの足も引きずらずに浮かせて、静かに着地させる。そうして浅く腰かけて、線や管にひっかからないように気をつけながら、屈伸運動をするみたいに両手を広げて理比ちゃんの胸元にほっぺたを沈める。シーツの上にはピーナツのタオルケットが広げられている。ライナスヴァンペルトのブランケットの裾野に顎をのせてスヌーピーが平たく眠っている。私はスヌーピーに頬ずり
オレンジネムリヒメ ①夢の会社 会社は水辺にあって水かさが増すとそこへは行けない。 雨の日は大丈夫なのに雨の次の日は埋もれた石畳の前で立ちつくす。 物心ついた時には優等生でずっとそのままの悲しい女の子が一人で事務を引き受けている。 ボタンダウンのシャツを着た細い手首の男の子が作業の息抜きにおいしいコーヒーを点ててくれる。 そうして僕の仕事が夢の少女や記憶の庭を捜す、そんなだったらいいのだけど、販売したり点検したりする普通の会社なのだ。 ただ、会社は水辺に建ってい
☆記憶でかいているので、随所随所の引用がニュアンスです。ご了承ください。 『夏への扉』(ロバート・A・ハインライン)を初めて読んだ時のことは、その時の自分を外側から見るように覚えている。 仕事帰り、名古屋の近鉄百貨店、星野書店の明るい店内、平積みにされた文庫本の猫の後ろ姿の表紙、裏返すと「もしもあなたが全てを失ったら…恋人も…友人も…仕事も…」と紹介文、拾い上げてそのままレジに持って行った。家に帰って本を開いて「あれ、SFじゃん」と思った。いや、ハヤカワSF文庫だよ。
オレンジおやすみばく ⑤みかん 我家はとても慎ましく暮らしていたので果物というのは贅沢品でした。実際にはいつも夕食後にデザートがあったので、果物を「贅沢だね」と笑い乍ら食すのが習慣だったのです。好きな果物はたくさんあります。無花果。昔住んでいた家のそばに沼地があって無花果の大木が横たわるように生えていました。小学生だった私と弟は長袖のジャージで武装して、ビニール袋を片手に無花果を摘みに行きました。今でも無花果をみると弟は子どもにその話をします。最近は八つに切ってガラスの
オレンジおやすみばく ④ひなげし クレバヤシが髪を切った。 セーラー服の襟の水平のライン。天使の羽が隠れる長さ。そうしていつも小豆色のシュシュを何重にもして固く一つに絞っていた。納豆の藁苞みたいだ。発酵するような形容を発酵物でブレンドしたかったけれど、上手くいかず水時計のように分離している。一度だけクレバヤシが髪をほどいたのを見たことがある。秋の球技大会。声援とスパイクの摩擦音が反響する体育館。バスケットボールに参加していた女子のポニーテールを結んでいたゴムがぷつんと
オレンジおやすみばく ③ぎんなんと目白 その日はイチコの父親の命日で母親がお供えに炊き込みご飯を作った。差し出された夕ご飯の茶碗の上にはぎんなんがたくさんのっかっていた。 見ているととても幸せな気持になった。 イチコの父親が亡くなったのは三年前の真冬で、前日がバレンタインデーで、看護師さんがイチコの掌に小さなチョコレートを載せてくれた。その頃には母親が病院に泊まり込むことが多く、いつも胃がキュッと締め付けられるような感覚でいて、学校から病院を経由して家に帰り洗濯物
オレンジおやすみばく ②三十一(さんじゅういち) 『ケータイのあわきひかりにちかづけど またされびとはおもてをあげず』 「これ、本当はちょっと違うんだ」 「ああ、スマホですか?字足らずになっちゃいますね」 「うん。それもあるけど」 村松三十一(みそか)は笑った。 町村冬星(とうせい)が学校から帰ると、彼の部屋で姉の夏月(かづき)が共用のノートパソコンを触っていた。 「遅かったね」 「うん。学祭近いから」 冬星は生徒会の役員をしている。一年生なので何かと雑用が多い
オレンジおやすみばく ①おやすみばく 「間に合わないかもしれない。シマちゃん。もう間に合わないよ」 改札が近づくとシマちゃんはぐっと加速して、私をおいてけぼりにして駅の階段を昇っていく。私は息を切らしながらやっとプラットホームにたどり着いた。 「クルミ、クルミ」 シマちゃんが赤い電車から首を出している。足も出している。 けたたましい駅員さんの警笛の音。 電車が動き出して、膝を曲げてハアハア云っている私にシマちゃんは云った。 「クルミが遅れたら、いつだって私が足出し
☆一話ずつ投稿していた物語を一つにまとめて再投稿したものです☆ キミが笑えば 目次 キミが笑えば 一、雨の月曜ジョッキー 二、トーベくん、走る。 三、ミューズの加護 ※ 登場人物 三上雨(みかみあめ) 北橋中学二年 藤部礼(とうべれい) 向北中学二年 石川賢人(いしかわけんと) 北橋中学二年 古崎和歌(ふるさきわか) 北橋中学二年 町田周子(まちだしゅうこ) 北橋
オレンジやさしいくま 目が覚めて カーテンを開ける 春なのに雪が降っている 夜なのに明るい 三月だから 外へ出る 雪だと思ったのは白い帷子だ 繊細な織物のようで 半透明のポリ袋のようで 手を差し伸べて 開く くぐる 外へ出るのか 中に入るのか 公園のジャングルジム 赤と青と黄色 隣りあわない同じ色 中ほどで君が得意気に半身を出す ゆっくりとのぼって ゆっくりと降りて 私はベンチで待っているから もどってきたらとっておきのクイズをだそう 見上げて問題を考える 思いつかな
オレンジやさしいくま ゆるす/すくう シカちゃんはサクの自家製の友人である。サーモンピンクのソフトボールと水色の木馬が遊びに来たときのお気に入りだが、五歳を過ぎてからはサクにとって最も跳ね返りのいい話し相手でもある。 今日サクは自分の部屋で、小さい頃から大切にしている童話をシカちゃんに読んであげた。かつて追われた村に復讐に現れた魔物が一人の少女のやさしさに触れ、結果的に村の救世主となる物語である。 ゆるす/すくう… 「しりとりみたいだね」シカちゃんが云う。 「何が