『夏への扉』は映画もよいの

☆記憶でかいているので、随所随所の引用がニュアンスです。ご了承ください。

 『夏への扉』(ロバート・A・ハインライン)を初めて読んだ時のことは、その時の自分を外側から見るように覚えている。

 仕事帰り、名古屋の近鉄百貨店、星野書店の明るい店内、平積みにされた文庫本の猫の後ろ姿の表紙、裏返すと「もしもあなたが全てを失ったら…恋人も…友人も…仕事も…」と紹介文、拾い上げてそのままレジに持って行った。家に帰って本を開いて「あれ、SFじゃん」と思った。いや、ハヤカワSF文庫だよ。そのことが当時自分がどれだけ疲弊していたのかと否が応でも思い起こさせる。

 しかしながら読み始めると、相棒「護民官ペトロニウス」が雪に覆われた家屋で夏への扉を探しているというリリカルな導入、そこからのカタルシス満載の展開。SFを短編以外読んだことがなかった私は、初めてでこんなおもしろいSF長編を見つけられるなんて…と悦に入った。しかしその後、早川SFハンドブックのオールタイムベスト長編一位『夏への扉』を見て、私が知らなかっただけなのねと一人で反省。

 早川SFハンドブックにはこうあった。
「もしもあなたが(少し)こどもが好きで、(とても)猫が好きなら、この本を読まない手はない。日本では福島正実の名訳で読むことができる」

 その後、NHKのボアンカレ予想を扱った番組で、初めて福島正実(写真立ての中)を拝み、ほわ~っとなり(勝手に大御所のご年配の方をイメージしていた)、『未踏の時代』を買いました。SFマガジンの追悼号も探して入手…

 『夏への扉』が日本で映画化と。
 公開された予告映像を見て、「ちが~う!」となる。
 多くの原作ファンがそうだったであろうように。
 でも、原作愛、猫愛、そして藤木直人愛。で、初日に見に行きました。
 そして始まって数分でわかった。「これ、夏への扉じゃん」

 以下、初見時の感想、箇条書きです。

・主人公とヒロインは愛くるしく、藤木ピートはくすりともほろりともさせ、もふ猫ピートもあり!(原作ファンの脳内にはスレンダーなキジトラピートがすりこまれているよね)
・他の配役も悪役含めキュート。
・日本語の名前設定楽しかった。ベル→りんがツボ。
・原田さんと高梨さん、最初親子だと思ってたの。ここの年齢差設定って原作へのオマージュかと思ったり。ヒロインの年齢設定が原作との違いの最たるとこだろうけど、(主人公はたぶん原作に近い)そこがいいんだ~
・1995-2025という少しだけスライドされた時代設定に、脳内が小首をかしげるように傾いて(なんだか不思議な感覚)、いろんなことを受け入れられるの。※公開当時2021年
・慣れ親しんだ福島正実訳のフレーズが随所でナレーションに使われるの、クラッとくる。
・2025年の図書館で、宗一郎のおとなりで、ガラスの仮面をテキストに感情表現を勉強する藤木ピートかわいい。 
・タイムマシンのくだりは原作と真逆のアプローチ。宗一郎いいやつなの。この映画、改変が逆にいろいろよい感じにしてくる。
・そして結末が!原作を踏襲しながら似て非なるもの。素敵なの。ごめんなさい。原作より好き…

☆リコちゃんの好きなミスチルが三十年後も第一線なのが一番のサプライズよ。
(主題歌踏まえました)
 

 
 我が家には夏への扉の文庫本が三冊あります。最初に買ったもの。ピートのモデル、ピクシー亡き後の黒枠で囲まれた新装版。イラスト表紙版(やはりピートはスレンダーなキジトラ)。こちらは山崎賢人くん、清原果耶ちゃん、藤木直人さん、ピート(パスタ?ベーコン?しかしベーコンよく見かけるよね)の映画帯がかかっていて、くう~ってなります。
 円盤も買いました。映画もう一度見たかったのにすぐ終わっちゃったから…私の持っている唯一の映画の円盤です。


☆円盤についている冊子。よき。



☆我が家のピート。女の子。


  気がつけば映画の未来の2025年がすぐそこ。
  「護民官ちびたん」そばにいてね。

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