怪鳥音

元 映画 助監督・AP・監督助手 現在 某ストリップ劇場で投光

怪鳥音

元 映画 助監督・AP・監督助手 現在 某ストリップ劇場で投光

最近の記事

隔靴掻痒

何歳だったか思い出せない。生活の中で自分の年齢を意識するに至っていなかったか、或いは日常の出来事を暦と紐付けることを知らなかった頃の他のほとんど全ての記憶と同様に前後の計算が出来ない。父親と2人で風呂に入っていた時に、どういった流れだったのか、陰茎の包皮を唐突に剥かれた。現れた亀頭の表面は青色のガーゼのようなものに覆われているように見えた。肌が異常を来して爛れているようにも見えたし、時がくれば脱皮するように剥けてしまう外皮にも見えた。いずれにせよ自分の身体の奥底から突然現れた

    • 後期クソガキ

      ある日、いつものように近所の市立図書館で本を読んでいると、近くに座っていた高校生に見える私服男子のもとに恐らく同級生が急いで駆け寄ってきて「めっちゃ迷ったぜ」と口を尖らせて言い訳していた。とにかく私は安心した。彼らがぺちゃくちゃ話し始めるのを薄ぼんやり聞きながら最寄りのトイレに体を向けた。一寸の迷いなく。その図書館を利用し始めてかなり時間がたった最近ではそんなことはもうないが、通い始めた当初はとにかく迷った。本棚の背が低いためどこにいても隅々まで館内を見渡すことができるが、自

      • ボヴァリー夫人マシーンNo.2

        『ボヴァリー夫人マシーンNo.2』というのは、以前一度書こうとしたけれど長らく中絶してそのまま反故同然となっていた『ボヴァリー夫人マシーン』というエッセイがあって、書き足そうという気はもうなくなってしまったのだが、そのタイトルが気に入っていたので、漠然と書こうとしていたことを一から書いてみることにしたけれど、同じタイトルは嫌だ、マシーンというからには2号機のような扱いで良いだろうということでそのようにした。 ギュスターヴ・フローベールの長編小説『ボヴァリー夫人』とハイナー・

        • 光はどこから来るか

          確か柿落としで組んだゴダール特集がそのまま追悼特集になってしまったはずだから昨年の9月から10月ごろだったと思う。東京は菊川に出来たばかりの映画館、ゴダール特集の次はクローネンバーグ、ドン・シーゲルなんかも予定されていたからミニシアターの中でも比較的シネフィル色の強い映画館で、お気に入りの80年代以降ゴダール、つまりスイスのレマン湖に居を移してから撮った「勝手に逃げろ(人生)」以降の作品の中で数少ない未見作品の一つ「右側に気をつけろ」を観た。わざわざシネフィル色が強いなどとい

          ニュルンベルクの漏斗

          ニュルンベルクの漏斗という言葉があります。機械的で安易な詰め込み教育を、漏斗に注ぎ込む様に例えて言うそうです。ベルトルト・ブレヒトの「ガリレイの生涯」の注釈で知りました。ドイツ語での発音はさっぱり分かりませんが(NÜRNBERGER TRICHTER)、日本語の場合一定のリズムでラ行の音が入るので口に出した時の響き方が心地よいのでしょうか、印象に残りました(ドイツ語でもRが一定の間隔で入ってくるので気持ち良い響きなのかもしれません)。知ったのは2,3年前のことですが、本を読ん

          ニュルンベルクの漏斗