
1 未来の地球と辺境の星から 趣味のコスプレのせいで帝のお妃候補になりました。初めての恋でどうしたら良いのか分かりません!
あらすじ
恋を知らない奇妙で野暮な忍び女子#
仕事:奉行所勤めの算盤方#
今まで彼氏なし#
恋に興味なし#
家族に隠れて銭湯通い#
趣味:コスプレ#
ー時は数億年先の地球ー
そんな主人公が問題を起こし、陰謀に巻き込まれ、成り行きで帝のお妃候補になる話。
帝に愛されるも、辺境の星から、過去の地球から、あちこちから刺客が送り込まれて騒ぎになる話。
数億年前の地球の「中世ヨーロッパ」の伯爵家を起点とする秘密のゲームに参加したら、代々続く由緒正しい地主だった実家に、ある縁談が持ち込まれた。父上が私の嫁入りの話を持ってきたのだ。23歳の忍びの私は帝のお妃候補になってしまった。プテラノドン、レエリナサウラ、ミクロラプトルなどと共存する忍びの国で、二つの秘密結社の陰謀に巻き込まれることになる。最高級の財力を誇る貴和豪一門の忍びにも命を狙われ、危機に見舞われる毎日を乗り越えなければならない。
帝と力を合わせて事件を切り抜けて行くうちに、帝に愛され、私は帝にとってなくてはならない存在にー
きっかけとなる出来事
◇◆◇◆
黒のネットワークという隠語がある。とある秘密結社を指す。マブリマギアルナアブロッシュ。
1512年の秋のある日、ガッシュクロース公爵夫人は、文官に手紙を託した。黒い薔薇の刻印を押して、蝋で封をしている。それには、とある指示書に対する回答がしたためられていた。黒のネットワークの秘密要員同士でやりとりするものだ。
「黒よ。大至急、大公までお願い。」
文官は、一目見るなり、静かに頭を下げて辞した。速やかに馬を走らせて手紙を運んだ。
◇◆◇◆
No.1 なぜこんなことに
ー時は西暦2018年より数億年先の地球 忍歴2020年 帝の城ー
「沙織、今日は私のそばにいて欲しい。颯介とナディアと作戦を立てることができた。」
帝は、シュッケー杯から無事に城に戻ると、私にそう言った。
「そばにとは?」
私は戸惑ってしまった。もう夜も遅い。
「その、この城に泊まって欲しいということだ。」
私は耳を疑った。
「え?」
帝は真っ赤になった。
「だ、だからその、いつ何時敵が襲ってくるやもしれぬ。私の自室で一緒に寝て、私としばらく行動を共にして欲しいということだ。」
帝は少し、横を向いて早口で言った。
「な、な、なぜですか?」
「帝の自室?」
私はあまりのことに狼狽した。
「これは作戦のうちなのだ。これがないと作戦が成功できないのだ。」
帝はそう言った。帝の顔は赤いし、額に汗が吹き出ている。
「とんでもございません!」
私は数歩後ろに飛び去った。
「そんなことはできない認識でございます。」
私は慌てて、姉の琴乃の姿を探すように、部屋の外に視線を送った。
琴乃も一緒に城に戻って来たのだ。
牡丹でもいい。まさみさんでもいい。とにかく、誰か来て欲しい。これは颯介の時代でいう『都合の良い女』ではなかろうか。
「何もせぬ!」
帝は慌てたように、断言した。
「え?」
「私は何もせぬ。ただ、敵に勝つためには沙織がしばらく私と一緒に行動する必要があるのだ。」
帝は私に近づいてきて、真剣な顔でそう言った。
何もしない?のであれば、仕方のうございますか。
私は力なく、うなずいた。
「ありがとう、沙織!」
帝は私を抱き寄せた。
「その、何もしないということでしたよね。」
「あ、もちろんだ。」
帝はすぐに私から体を離してくれた。
「そういうわけで、私は今晩から、城の帝の自室に急に宿泊することになったのでございます。」
私が姉の琴乃にそう説明すると、姉の琴乃は、激怒のあまりに空気を震わせ、城の応接室の窓ガラス一枚にヒビを入れた。
「なんてことを!」
姉の琴乃は、帝に詰め寄った。
「帝!決して何もしないのでございますな?」
姉の口調はかなり激しかった。
「そ、そ、そうだ。誓う!断じて誓う!私は何もせぬ!」
帝はしどろもどろのご様子で、そう姉の琴乃に言った。
「約束ですよ。破ったら、どうなるかわかりますね?」
「も、もちろんだ。」
帝が姉の琴乃に壁に追い詰められ、壁ドンされて、誓わされた。
姉は怖いが、子供の頃から頼もしい存在だった。私は少しほっとした。
◇◇◇ ◇◇◇
なぜ、こんなことになったかというと、元はといえば、私の趣味のコスプレが原因でございます。
話は数週間前にさかのぼります。