〘創作大賞感想〙頂き怪盗とカモられ探偵を読んで
休日、暇なので、ダラダラとnoteを閲覧。
ふと創作大賞2024のタグが目につき、人気の欄を見る。すると、頂き怪盗とカモられ探偵なるミステリー作品を発見した。
まず、サムネイルが綺麗。
その絵に触れたくて、思わずワンタップ。
読みやすそうな目次が置かれていて、あらすじだけでも読むかと294文字を黙読する。
ふーん、どうやら怪盗アウトリュコスの被害者が犯人を捕まえようとする作品らしい。そこで、驚きの言葉が現れる。
狂言窃盗!
見たことない単語に目を離せない。
てか、ミステリーって殺人事件を探偵が解決するやつじゃないの?
そんな疑問から、とりあえず最初の小見出しにジャンプした。
予告状から、バーーーーと場面設定やキャラの説明、宝石絵画の描写が行われる。読みやすい。
その後、トラップを抽象的に説明するのではなく、ヒロインが引っかかるというイベントにしていた。書き慣れている。
そんな感想を抱いていると、狂言窃盗が始まる。
驚いたのは、わずか数千文字なのだけど、作品のコンセプトが分かりやすく伝わってくること。
こうやって2人で盗むんだよ。
こんな目的があるんだよ。
そういった作品の全体像をコンパクトにまとめているのである。
じゃあ、次も読もうかなってなる。
でも、疲れたから、少し休む。お茶でも淹れてから、読書を再会しようと考えた。
ここで目次が役立つ。ある程度まで読んだら、一度、読むのを辞めてもよい。後日、その小見出しから読めばよい。そんな気配りもある。
で、次の見出しにジャンプ。
すると、今度はサアラとヘルメスが会議を始める。何気なく次のターゲットを決めていくのだが、そこで警備システムを見せる。
それを見ていると、どうやって盗むの?
そんな疑問が浮かぶ。でも、そこを説明しない。盗み方を読者に考えさせようとしているのだと悟る。
その提示の仕方を見て、これは映画『オーシャンズ』シリーズに似ていると思った。あれも窃盗犯が計画を立てて、華麗に盗む物語だから。
このミステリーは犯人ではなくて、方法を考えさせるタイプの作品なのだ。それってミステリーなのか、そう思ったけど、noteのイベントで「ミステリーとは良質な謎があること」って誰かが言っていた。だとすれば、どう盗むのかは、広義の意味ではミステリーなのかも。
そこに気づいたものの、『マーメイド・ラヴ』なる宝石絵画の盗み方が分からない。
となると、次の小見出しに飛ぶしかない。
ここでビックリしたのが、視点変更。
上記はサアラ視点で描かれているのだが、まさかのヘルメス視点に変えてくる。
巧妙の一言。
あえて作戦を立てたサアラではなく、作戦を知らないヘルメスにすることで、読者を同じ目線にして、没入感を上げてくるのだ。
最初から思ったが、本当に書き方が上手いと感じた。かなり計算されている。また、テンポよくハプニングや笑いどころが置かれている。
そんな事を思っている間に、狂言窃盗のパートは進む。まぁ、当たり前なのだが、窃盗は成功する。別に、結論は書いてもいいだろう。
というのも、この作品は古畑任三郎と同じで、How toが主題だから。
もし気になるなら、難攻不落の金庫から『マーメイド・ラヴ』を盗む所を読んで貰いたい。
さて、物語は終わりと思いきや、最後の見出し『3枚目の予告状、誰が出したの?』が始まる。
最後に、3枚目の予告状が出され、怪盗アウトリュコスが動き出す。
しかし、物語は終わる。
いや、続きないのかってなる。
ここから面白くなりそうなのに、短編で終わらせてくることに驚いた。一方で、続きが読みたいと感じるのは名作なのでは……とも思った。
しかも、本作には謎が多い。たとえば、テミス警部補の言動とか、宝石絵画の秘密とか、怪盗アウトリュコスの正体とか、単純に狂言窃盗と書いてあるが、実は、細部に仕掛けがあるように思えてならない。
だから、他の人も読んで、そこら辺の疑問を共有できたら嬉しい。そんな気持ちで感想を書いた。
さて、まとめに入ろう。
狂言窃盗は犯罪なのだけど、その計画の裏に、ヘルメスとサアラの目的が見え隠れしている。サアラは父親の復讐を誓い、ヘルメスは祖母の作品を守ろうとする。そこに家族愛があり、これも主題の1つのように感じられた。
また、ミステリー部門には、何かの事件と探偵と推理パートみたいなものが多い。そんな中で、怪盗ものを出す勇気と目新しさがある。ずっと探偵が事件を解く作品ばかりでは飽きてくる。そこに犯人を誘き出すために、探偵が狂言窃盗をしちゃえってパターンがあれば、味変で読まれやすくなる。
これこそが本作の人気のポイントなのだろう。
気になる人は、下記のURLから飛べるよ。
頂き怪盗とカモられ探偵