四台のチェロ
<四台のチェロ>
四台のチェロの合奏が響く
いくつもの言葉が溢れてきそうなのに
私はその音に名前を付けることができない
細く高い音がゆっくりたなびき
太く温かい音が地を刻んで進む
ピチカートに乗って唸るような旋律が流れて
ほら、ここにある
あなたはどう受け取ってくれるのかと鳴り響く
なのに私は溢れる心を抱えて
ひとつの言葉にもたどり着けない
風か雨か山か川か
そこにあるのは祈りなのか
こんなに激しく攻め寄せてくる音なのに
それは祈りなのか
四つのチェロの弦が鳴って
今にも言葉が溢れてきそうなのに
私はその音楽に名前を付けることができない
何か形になりたがっているものが私の中でうごめく
何者にならずともよい
そのまま
祈りの形で問い続けよ
四つのチェロはそう告げている
<Nothing Else Matters by Serioso Celliを聴いて>