うちわのまつり
まつりって、なんか二種類あるきがする。
一つは町を挙げての大盛り上がり。商店街とか商工会とかが企画して、ちょっと大きな町だったらゲストとか珍しいで店が出たりして。みんなのちょうど盛り上がりたかったんだよーーみたいな気持ちをあおる祭り。中学生とか、高校生とかが好む祭りはこれですわね。盆踊り何てそっちのけ、あのこの頬をどう赤らめさせるかが肝なわけです。花火なんかも打ち上っちゃって。私ってば、花火を純粋に楽しめない側の人間なのさ。
花火っつーのは、祝砲なわけじゃんか。もちろんそれ単体の風景、事象としての美しさももちろんあるんだけどさ、誰かを何かを祝っているという形式もきれいだと思うんだわ。君たちの生活それぞれの祝砲としては機能するかもしれないけど、スイッチを入れて本腰で花火をありがたがっている奴なんてのは浴衣姿の中で探すのは難しいんじゃないかな。
私は一回、本当の祝砲の意味の花火を見たことがある。見ている全員が、祝いの気持ちを胸に笑って、首を少し痛めながら。終わったと思ったら終わらない爆発音に脅かされるでもなく、心地よく。
恋愛や思い出の舞台としてではなく、もっともっと可能性があるとおもうんだけどなー。花火の話はもういいや。
まあそっちの、祭りは比較的誰でも行けるわけだ。その土地にまだなじめてない人でも、よりその地域に愛着を持てるような入口のイベントなわけだもんね。気さくでグレーな暖簾を掲げた出店のおんちゃんおばちゃんとのコミュニケーションはエネルギッシュな気分になる。
そういうわけで、まちのまつりっつーのは割とおおっぴらに境界線はなくやられているわけですよ。祭りを楽しむだけの人がいても何も問題がないわけだ。
もう一つの祭りは、方部の祭りだ。方部って言い方があってるのかわからないけど、まあ言ったら住宅街の祭り。その住宅街に住んでいる人たちが企画して、街の祭りのまねごとをするわけ。プロフェッショナルはもちろんいないから、彼らは経験則だけで祭りを開く。
その祭りが緩くて、夏の臭いがむんむんしている感じがとても私は好きなんだ。
私の実家の住宅街でも、そういう祭りがあって、私は歌を歌ったり踊ったり。父ちゃんは運営をしているから、ほかの運営の人たちにもかわいがってもらえたりして。
コロナがあったから高校の時はやってなかったけど、今年は復活した。
中学生以来のちっちぇ祭り。公民館の庭は思ったよりちっちゃく見えて、なんだかおもしろかった。
私は太ってしまったので、もちろん親御様方におおいじり。今何してるんだ。大学生だよ。どこでだ?みたいな会話を大体みんなと繰り返して、隅っこのほうでやっしい焼きそばを食う。
盆踊って、やっしぃ飯食って、足を20個所くらい食われて、楽しかった。
今年の夏行った祭りはそれくらい。楽しかった。
歩いた
今住んでいるアパートがある住宅街でも、そんな感じの祭りがあった。
住宅街のいたるところに日本国旗が飾ってあって、たぶん神社由来の祭りなんだろう。
朝用事があって出かけた時に、なんだか祭りの臭いを感じて、今日の夕方に覗いてみようかなと思った。
夕方四時ごろ、バイトに向かうその足で私は祭りに顔を出しに行った。僕のアパートから少し山を登ったとこにある神社とその前の道路を封鎖して、秋の何とか祭りは開催されていた。
出店は、小学校の運動会の待機テントがそのまんま使われていて、どのテントが何の店やっているのか全く分からない。
人がたくさんいる。ビールを片手に犬の散歩をするおじさん。夕飯の買い出しを頼まれた一人でいるお姉さん。たくさんの家族連れ。
みんながその住宅街の人だ。
私もアパートではあるものの、その住宅街にきちんと住んでいる。ゴミ出しの時誰かとすれ違ったら挨拶はするし、住宅街でのルールは遵守している。
みんな楽しそうだ。
私はそのままバイトに向かった。
同じ住宅街に住んでいるバイトの先輩は祭りのことなんて知らなかった。
彼もまた、大学生だった。
日本の国旗は夜11時には取り込まれていた。