僕らが踊り続けた 笑い話の夜
今日、最高の出勤と退勤をかました。
まず一個目の出勤。こっちは割と普通。じいちゃんからもらった青い軽。交通ルールをマックス遵守。だけれども、死んでもいい覚悟をほんのり胸に掲げた運転。15分ほどで、小さなオフィスにつく。
私は大学生の身分で、システムを作ったりしている。粗がたくさんあるけれど、必死こいてやっている。
そっちは三時間で終了。おじさんおばさんに身の丈に余る賛美を浴びせられて、ほくほくで青い軽。車の中では大爆音で音楽を流している。青い軽からずんずん。人の目が気になるところはさすがに音量抑えるけれど、私のお気に入りの曲たちはでっかい音のほうが楽しいからね。
いったん家に帰ってから、一時間。また出勤だ。自転車で向かってもいいのだが、最近はもっぱら歩きだ。
耳にイヤホンをして、バイト用の長ズボン。サンダル。ぽっけには靴下と財布と、キーケース。片手にスマホをぷらぷらとさせながら、歩幅はBPMに合わせて。体の上下運動が、出勤、退勤中の私のダンスだ。歩道のない道での、最大限のダンスだ。住宅街、歌うのはちょっとはばかられるから、唇で。
ちょうど坂を下りきったとき、シークバーはまたゼロに戻った。新しい音が始まる。
思い出野郎Aチーム 「笑い話の夜」
広角は吊り上がり、景色の流れるスピードが変わる。西日がオレンジなのはもちろん、隣の山も青々と。ノイズをキャンセルしているつもりなのに、大爆音で聞いているはずなのに、蝉の声とか、車のエンジンの音とかも全部一緒に体になじむ。
私はまだ、誰かと一緒にこんな夜を過ごしたことはない。
一人で画面にむさぼりついて、知識の断片を拾ったり、怠惰に過ごしたり。
お酒も飲んだこともないし、季節に気づくきっかけは、大体みんなの服装だ。
だけれど、私はこの曲を聴きながら出勤したとき、パーティーにも参加したし、踊ったし。みんなで夜を明かしたんだ。笑い話をしたんだ。
そんなことはした覚えはないけれど、ないからこそ、よりまじまじと誰かの笑い声が聞こえた気がする。
帰りにもきいた。行きのほうが楽しかった。
有難う。思い出野郎Aチーム。
きっとくる、踊り続ける夜の予行練習。