前立腺がんだって。なんだよ、それ!#006
なんか気が速るね、そわそわしてフワフワしている。こういうのを「浮足立つ」って言うんだろうね。
午後の泌尿器科受付は、しんと静まり返り人の行き来もなく・・
「こんにちはぁ、お願いしまあす!」
小学校以来の元気いっぱいな呼びかけにも答える声はなく・・
おーい、
さみしいぞぉ。
ま、ちょっと早く着いちゃってるしね、ってかまだ12時半にもなってないじゃん。
これはほら、そのぉ、浮足立っちゃってるから。
待合で腰掛け、しばしニュースアプリをチェック。ふんふん、ろくなニュースもないなぁ、つまらん。
ツマランと言えば、やたら免疫upがどうだとか最新医療はこうだとか、その手の広告が画面の其処彼処(そこかしこって、こんな漢字です。ためになったねぇ〜)を占拠する。
俺が気にしてそんなことぱかり調べてるからだなぁ、実にツマラン・・
負けてる?・・気持ち。
「えーと、お待たせしました。くまさん?」
「はい」
「では、前回行ってもらった放射線科の窓口に診察券とこれを」
またも、ペラッペラのファイル・・なんのまじないだ、これ。
「・・お掛けになって、お待ち下さい」
暫くすると、屈強な青年が生理食塩水のバッグを吊った点滴スタンドとなにやら小瓶や注射器の入ったトレイを持って近づいてきた。
「こんにちは!点滴を担当します高野です。造影剤をゆっくり身体に入れていきますんで。2時間はかかりませんが、しばらくはご不自由かけます。」
しっかりした好青年だね。
俺がもう少し若くて、そのケがあったら惚れていたかもしれん。無論、そういう性向はない。
俺と点滴スタンドは生理食塩水の通るか細いチューブでひとつになった。いつも、どこへ行くのも一緒だよ、ハニー。
「このフロア内で自由にお寛ぎください。お手洗いやソファは自由にご利用いただけます。時間が迫ってきたらお名前をアナウンスしますので、この場所までお戻りください。」
爽やかな笑顔だなぁ。
俺がもう少し若く・・ごめん、くどかった。
眠ってしまったみたいだ、アナウンスで気付いたよ。 何だナンダ、結構図太く振る舞ってるじゃないか!とか、考えてしまうのがもう心弱ってる証拠じゃん。
いかんなぁ、こんなことでは・・
例のゴウンゴウンうるさい筒状の機械に、どうかな、都合15分ぐらいは入っていたね。
これで俺の下半身は完全に輪切りされた。本当の意味での素っ裸、だ、ちょっと恥ずかしい。
はい、本日はこれにて終了・・閉店ガラガラ。